目立たないけど重要なシート技術
自動車の技術というものを考えるとき、車内のシートを最初に思い浮かべることはあまりないだろう。しかし、居間のソファとは異なり、自動車用シートは非常に高度な技術を要する機器である。
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1960年代から1970年代にかけて、サーブやボルボなど一部の自動車メーカーがシートに劇的な改良を加えるまでは、そのようなことはなかった。スカンジナビアの凍てつくような冬を乗り越えるべく、両社はシートの快適性と、それがドライバーの健康に与える影響に注目するようになった。
シート設計には整形外科の専門家も参加。シートヒーターは、乗員の背中を温めることで疲労を軽減できるという理由から追加された。当時は先進的な考え方だったが、その後、どのように進化したのだろうか。
最近では、耐衝突性能、シートベルトテンショナー、エアバッグ、ハイテクの中間層や表皮材、インフォテインメント・スクリーンとの接続など、技術革新が目白押しである。
「最上級」のシートは、当然のことながら、高級車のリアに見ることができる。新型ベントレー・ベンテイガEWBのエアラインシート仕様がその一例だ。手縫いの美しいルックスも見どころだが、シート内部はカイロプラクターの診察室と気候実験室が混在したような空間になっている。
シートには「オートクライメート・システム」が内蔵され、乗員の接触面の温度と湿度を25ミリ秒ごとに0.1度の精度で測定するセンサー群を搭載している。この温度と湿度は7段階の設定から調整できる。そのうちの1つはニュートラルで、さまざまな乗員とのテストで得られたプリセット・アルゴリズムが適用される。ベントレーによれば、設定後は自動的に調整されるという。
ヒーター技術は以前のものと変わらないが、新型の冷却ファンは従来よりも約80%多くの空気を動かすことができる。
マッサージ機能付きのシートを装備したクルマもあるが、ベンテイガEWBにはない。その代わりに、疲労を抑えることを主な目的とした「ポスチュラル・アジャストメント(姿勢調整)」と呼ばれるものが搭載されている。このシステムは6つのゾーンから成り、身体とシートの間の接触圧力を空気圧で調整するという。各ゾーンにかかる圧力は、177段階で変化させることができる。
ベントレーは、自動車や航空機といった輸送機器向けのシートを開発するコンフォート・モーション・グローバル社とともに独自のアルゴリズムを開発し、科学的根拠に基づく試験で同システムを発展させた。
研究の結果、体重を流動的に支え、一人ひとりの体重や体型に合わせて変形することで、ベントレーの言う「集中力の欠如」につながる緊張を緩和できることがわかった。
1970年代の初期のパイオニアたちは、時代のはるか先を進んでいた。シート技術が長旅の幸福感を向上させることの重要性を、彼らは理解していたのである。
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