サラリーマンでもスーパーカーを買えた時代があった
比較的シンプルな構造といえるミッドシップ後輪駆動モデルの「ランボルギーニ・ウラカン エボRWD」でも、新車販売価格は2653万9635円。そしてV型6気筒エンジンを搭載している「フェラーリ296GTB」が3678万円でデリバリーされている現在は、すっかり「スーパーカー=お金持ちの乗り物」となっているが、以前は少しだけ状況が違った。
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ここで言う「以前」がいつごろなのかというと、それは10~15年ぐらい前のことだ。そのころといえば、「フェラーリ308」、「328」、「348」、「355」のユーズドカーが現在よりも安価で流通しており、「308」は450万円も払えば極上物をゲットでき、「355」も良質車を800万円ちょっとぐらいで購入できた。「ランボルギーニ・ガヤルド」最初期モデルの中古車も、900万円前後で売っていたと記憶している。そう、サラリーマンも頑張って仕事をすればスーパーカーオーナーになれたのだ。
※写真はすべてイメージです。
フェラーリ貯金をして「F355」のオーナーに
そんな夢のような状況下において、低コストで実際に1995年式「フェラーリF355ベルリネッタ」を購入できた会社員オーナーを取材したことがあった。3年間のスーパーカー貯金を経て、自分の分身だと思える最愛のフェラーリをゲットしたSさん(現在48歳)は、若いころにS13型日産シルビア、FD3S型マツダRX-7、そして、ビッグタービンを投入し670ps仕様にしたA80型トヨタ・スープラなどに乗っていた。
しかし、いつしかハイパワー車に乗る生活に疲れ、30歳ぐらいでワンボックスカーを購入。大人しく暮らしていたが、やはりそう簡単に自動車趣味生活をやめられるはずがなく、ふたたびハイパワー車に戻ることを決意した。とはいえ、30歳オーバーで国産のヤンチャなクルマに乗るのはもうやめようと思い、964型のポルシェ911ターボや996型ポルシェ911などの購入を考えたという。
ドイツ車でもよかったが、「う~ん、イタリアン・スーパーカーのほうがいいかも……」という心のなかのモヤモヤした気持ちを払拭できなかったSさんは、35歳のときにフェラーリを買おうと決心。一念発起して貯金を始め、3年後に晴れて「F355」のオーナーとなった。サラリーマン・オーナーの強い味方である良心的なスーパーカー専門店で人生初のフェラーリを購入したが、その後は大きなトラブルもなく、少ない維持費で充実したスーパーカーライフを満喫できた。
「欲しい気持ちがあれば迷わず突き進もう」とは、取材時に語ってくれたSさんの言葉で、人生、為せば成る、というか、人生、頑張れば誰でもスーパーカーオーナーになれるタイミングが確実にあったのだ。人によってはアパート暮らしでカップラーメン生活を強いられたケースもあったと思うが、いやはや、良い時代であった。
スーパーカーへの憧れが凝縮された「ミウラ」
Sさんのように大人になってからフェラーリの購入を決意する人がいる一方で、子どものころに巻き起こった「スーパーカーブーム」に感化され、いつの日にかオーナーになるぞ! と思いながら成長し、本当に買ってしまった人もたくさん存在している。
1968年式の「ランボルギーニ・ミウラP400」を愛用している闘牛さん(仮名/現在54歳)は、26歳のときに人生初のフェラーリとして「F355」を購入した。やがて後継モデルの「360モデナ」がリリースされ、買い換えを考えたが、このタイミングで闘牛さんはその後のスーパーカーライフを大きく左右する決断をした。速さだけを追い求めるのは、もうやめようと思ったのだ。
「子どものころに抱いていたスーパーカーへの憧れを追いかけようと思い、すでに“カウンタックLP400S”を所有していましたが、たまたま出てきた“ミウラ”を購入しました。いまよりもミウラの価格が落ち着いていたので、F355の下取り価格と同程度でした」とは闘牛さんのコメント。いまも仕事が休みの日に、気が置けない仲間たちと完調なミウラでのツーリングを楽しんでいる。
20年以上も大事に乗っている「512BB」
1980年式の「フェラーリ512BB」をパートナーとしてスーパーカーライフを満喫しているNさん(現在56歳)が愛車を購入した経緯はこうだ。「スーパーカーブームのときに“512BB”がパリ・サロンに展示されたという記事が載っている自動車雑誌を買いに行ったんです。当時11歳でした。現在愛用している512BBを買うまで、ずっと愛読していました。ノンレストア車なので、すべてのパーツがマッチングしています。マフラーもホイールも純正品。ホイールのスピンナーは、イベント時などに3本爪のモノに交換しています」
笑顔でそう語ってくれたNさんは、34歳のときに「512BB」を現金一括で購入した。12年前に「フェラーリ・クラシケ」(公式の鑑定書)を取るタイミングで、一年間かけてオールペイントした愛車への思い入れの強さはハンパなものではなく、毎年きっちり整備し、いつでも、どこにでも出かけられるようにしている。
「サーキットの狼」ファンが手に入れた「ディーノ」
1971年式の「ディーノ246GT Mタイプ」を愛用しているAさん(現在50代)は、フェラーリ308GTBと308GTS QVを愛用しつつ、ディーノを増車した。「知り合いの仲介でディーノを見に行き、その場で買おうと思いました。ディーノはスーパーカーブームのときに一番好きなクルマだったんです。当時愛読していた漫画“サーキットの狼”の世界でもディーノRSはとくに印象的な存在でした。実際に購入してみてわかったのですが、ディーノというクルマは、よく走って、意外に速い、ひと通りの整備をきちんとすれば簡単には壊れないスーパーカーでした」とは、Aさんの言葉だ。
30代の半ばごろにポルシェ930ターボを購入し、いまから14年ほど前にディーノを購入。「1960~70年代に生産された魅力的なスーパーカーを揃え、それらをガレージ内に並べられたら最高ですね。“930ターボ”、“カウンタック”、“512BB”、“ミウラ”などを揃えたいです」とも語ってくれたAさんは、人生を楽しむ術を知っている好事家である。
投機目的で高騰しているのも悪いことばかりではない
思い焦がれてフェラーリやランボルギーニなどを買う人がいる一方で、余ったお金を使い、投機目的でスーパーカーを購入する人たちがいることも忘れてはならない。富裕層である彼らは資産運用のひとつとしてスーパーカーを買うので、実際に乗ることはなく、数年後に値上がりしたときを見極めて売却する。
クルマというよりも美術品と同じような感覚でサクッとゲットしているので、そういう扱いになってしまうのだが、われわれのようなクルマ好きが彼らの手に渡ったスーパーカーを拝見できないのは悲しいことだ。世界的なオークションハウスとして知られる「サザビーズ」におけるスーパーカーの落札金額をチェックすると、以前よりも落ち着いてきたように思える。だが、いまだに高価で流通しているモデルがたくさんあるので、まだまだ投機目的での購入も盛んに行われるはずだ。
レアなスーパーカーが投機目的で買われたとしても、次のオーナーのもとで世に出てくることになれば万事OKではある。なので、貴重なモデルを日本でキープできるように富裕層の方々に今後も頑張ってもらおう。
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みんなのコメント
フツーのサラリーマンには無理よ。