長期テストでしか分からないことがある
この1年間で、AUTOCAR英国編集部は20台以上のクルマで長期間のロードテストを実施してきた。
【画像】英国記者に「引っ張りだこ」だったイタリアン・スーパーカー【マセラティMC20を写真で見る】 全27枚
車種はクルーザー、フラッグシップスポーツカー、そしてミニバンなど多種多様で、厳冬から夏の照りつける太陽の下まで、さまざまな条件下を走り続けた。
その中で、特に優れた性能を発揮したのはどのモデルなのか。そして、テストを終えて手放すときに惜しく思えたのはどのクルマだったのか。今回は、英国編集部の2024年の長期テストで最も優れていたクルマを8台、各記者の推薦文とともに紹介したい。
マセラティMC20
マセラティの “パーティー” に参加することができたのは、ほんの数人だった。
MC20は、オフィスの駐車場に10分も停めているうちに、編集部員の誰かが「今夜どうしても必要なんだ」という “適当な理由” を見つけて乗ろうとするクルマだった。「ブレコン・ビーコンズ国立公園の向こう側で急用ができた」とか、「ステルヴィオ峠の先に財布を忘れてきた」などと言う。
不運なことに、何人かはオフィスに取り残されることになった。
レイチェル・バージェス記者は、ISOFIXマウントがなかったためにイタリアンスーパーカーを思う存分走らせることができなかった。「3歳児がチャイルドシートにシートベルトで固定されているのは法律上問題があるため、不可能だった」
ジャック・ウォリック記者にはそのような道徳的な問題はなかったが、チャンスに恵まれなかった。「ツインターボV6エンジン搭載のスーパーカーがあるのは珍しいことだ。僕が試乗したいと思っても、いつも誰かが乗っていた」
マット・プライヤー記者は、MC20だけでなく、その最も近いライバルであるマクラーレン・アルトゥーラに乗る機会も逃したことで、世界で最も運のない男であることを証明した。幸いにも、フェラーリ12チリンドリを運転したのが編集部員の中で彼だけだったことは、いくばくかの慰めになるだろう。
英国編集部のスタッフは皆、スーパーカーに乗りたいと、まるで小学生のように言い争っていた。その傍らで、真面目なジェームズ・アトウッド記者は1人、改良型のポールスター2が本当に前モデルよりも良くなっているのかを確かめることができず、苛立ちを感じていた。
「マイナーチェンジ前のバージョンを運転したので、改良がどれほど徹底的に行われたのか、日常的に使える最高のEVの1台がどれほど良くなったのかを確かめたかった」と彼は嘆いた。他の皆は最高速度320km/h、ミドエンジンの2台のモンスターと過ごした日々を写真で振り返り、感嘆の声を上げた。ふん、アトウッド君は先生のお気に入りか。
BMW M2 & ボルボV90
数か月間クルマを所有していると、隠れたボタンや収納スペースなど、1回の試乗ではすぐに気づかない特徴を発見することができる。YouTuberなら、驚いた顔の絵文字を付けて「この機能マジでヤバい」とラベル付けするようなものだ。
例えば、ボルボV90に「警報抑制モード」機能が搭載されていることを知って嬉しくなった。防犯センサーの感度を低くして、フェリーに乗っているときなどにけたたましく警報を鳴らさないようにする機能だ。
BMW M2にも、秘密の機能がある。ジョナサン・ブライス記者は、ドリフトモードについて「クルマには必要のない奇妙な機能であり、おそらく使うことはないだろう」としながらも、「それでも、この機能があるのは嬉しい」と語った。
そして、アトウッド記者は照れながらオプションの8速ATを推し、「本当に良かった。必要なら僕の社員証を取り消してくれ」と述べた。
プライヤー記者はランドローバー・ディフェンダー130に「すべての警報を消す素晴らしい方法」があることを称賛し、2024年には非常に望まれる機能となるだろうと述べた。
また、ウィル・リメル記者はスコダ・カミックの経済性の高さに感嘆し、 「非電動の1.5Lガソリンエンジンは、高速道路での長距離走行で、驚くべきことに25.5km/Lの燃費を実現できる。本当にお金の節約になる」と熱弁した。リメル君、クールなトリックだが、パーティーで自慢するのはやめておいた方がいいかも。
フォルクスワーゲンID.Buzz
ID.Buzzは間違いなくこれまでで最も陽気で自由奔放なクルマである。伝説のタイプ2バスの伝統を正しく継承したという確信をフォルクスワーゲンが欲しているなら、大丈夫、問題ない。
「我々は長い間、EVとスケートボード構造で独創的なデザインが生まれると聞いてきたが、ID.Buzzはそれが事実であることを示す初めてのクルマだ」とマーク・ティショー記者は言う。
チャーリー・マーティン記者も同意し、「欠点が多いと非難することもできるが」と前置きした上で、「今年運転したクルマの中で、これほど喜びにあふれたクルマは少ない。このようなハッピーなクルマをもっと必要としている」と説明した。
また、ジャック・ウォリック記者は「その満面の笑みは、通り過ぎる全員を笑顔にする」と喜んでいた。
320km以上の実航続距離、バンタイプでありながら普通の乗用車と変わらない乗り心地、そして広々とした車内空間を持つID.Buzzは、EVでも生活を送ることができ、愛せるのだということを筆者に確信させた。
また、EVとしてアバルト500eも評価すべきだとプライヤー記者は言う。「大きな欠点はあるが、少なくともEVを楽しいものにしようとしていることが分かる」からだ。さらに、クプラ・ボーンは、イリヤ・バプラート記者に「普通のEVでも楽しい」と言わしめた。
フォルクスワーゲン・トゥアレグ
記者の推薦はいらない。AUTOCAR英国編集部が使い倒していたからだ。
誰も驚かなかったことだが、今年最も頻繁に駆り出されたのは、巨大なディーゼル車のフォルクスワーゲン・トゥアレグだった。遠く離れた新車発表会への出席や、「ベルギー」や「グラスゴー」といった聞いたこともないような場所にいる家族を訪問したり、家族を騒がしい英国の高速道路網で移動させたりするために使われた。
モンゴルまで運転するのに最適なクルマがなぜこれなのか、筆者はバプラート記者に尋ねた。すると彼はこう答えた。「実際に運転したからだよ。正確にはモンゴルではないが、欧州を3000km以上運転した。VWには不満もあるが、信頼性が高く、快適で、それなりに経済的だった」
マレー・スカリオン記者も同様に賞賛したが、ただし「燃料代を誰かが払ってくれる場合」に限るとの条件付きだ。(英国の軽油価格はガソリンに比べて、日本のように安くない)
意外な推薦を受けたのは、ルノー・クリオEテック・ハイブリッドだ。推薦したブライス記者は、大型車並みの洗練性と経済性を兼ね備え、「スーパミニ(Bセグ車)が単なるビスケット缶にヘッドライトを付けただけのものではないことを証明している」と語った。
クリス・カルマー記者は、ランドローバー・ディフェンダー130のツーリング性能に想定外の感銘を受け、「この本格的なオフロード車が、実際には高級セダンのように感じられることに、いまだに驚いている」と話した。もちろん、彼はこのクルマを立体駐車場に入れたことはない。
マセラティMC20も、リメル記者から意外な推薦を受けた。リメル記者は、MC20は驚くほど快適だが燃料タンクが小さいと指摘しつつ、「自分の膀胱は、たぶんもっと小さい」と述べた。
アルファ・ロメオ・ジュリアQV
客観性なんて知ったこっちゃない。クルマが引き取られていくのは、ほとんどの場合悲しい出来事だ。数か月間ハンドルを握っていれば、クルマとの間に信頼関係を築くことができる。今年も残念ながらいくつもの名車の鍵を渋々返さなければならなかった。
アルファ・ロメオのジュリア・クアドリフォリオはまだ英国編集部の手元にあるが、スタッフらに与えた印象があまりにも強烈だったため、すでに別れの日が怖くなっている。
「永遠に運転していられそうなクルマだ」とマット・プライヤー記者は語り、ヘッドフォンを装着して、V6エンジンのうなるような音を何度も聞き続けた。
管理担当のスカリオン記者にとって、最も恋しいのは「滑らかな走りとパワフルなエンジン」であり、見た目に多少の注文があっても、別れを惜しむ気持ちが和らぐことはないという。
一方、アトウッド記者は、ポルシェに「自分」のタイカンが奪われることを嘆いたが(残念)、「それで良かったと思う。走行距離を重ねるごとに、その価値が下がる一方で、僕はますますこれを購入すべきだと確信するようになったからだ。絶対に買う余裕はないのに。なぜ今年もまた浴室の修理を頼んだんだろう?」と認めた。
アバルト500e
スマート#1は、あの手この手で注目を集めようとしていたことは間違いない。実際、ティショー記者はそのことをひしひしと感じていた。具体的には、「タッチスクリーンの隅で、あの小さなキツネのようなものがずっと踊っているのはなぜだ?」と。
しかし、ご近所の注目を集めたのは、アバルト500eのド派手な塗装と合成された排気音だった。「誰もがその派手な色を見て指をさしたり、コメントしたりしていた。そして僕が偽物のエンジン音を鳴らした時には皆が笑った」とカルマー氏は言う。
レトロな高性能EVのハンドルを握って数日後、アトウッド記者も同意した。「とにかく黄色くて、多くの点で素晴らしいのだが、後はまったく馬鹿げている」
500eの管理担当として、筆者は上記のすべてを心から保証できる。昔の同級生から同窓会の誘いのメールを受け取ったとき、筆者はすぐに編集部のテスト車両の予約表を開き、他に何が使えるか確認したほどだ。
BMW M2の鼻孔も同様に恥ずかしいものだったが、ブライス記者はあまり気にしていなかった。「オフィスでは、この話題で持ち切りだった。多くの人が嫌っているが、自分は大好きだ」
そして、プライヤー記者は友人をディフェンダー130に乗せて走った際に、SUVに対する嫌悪感を間近に見たという。「このクルマには乗らないと断言した知り合いがいたが、僕にはぴったりだった」
ジープ・アベンジャー・エレクトリック
アバルト500eは記者の票を集めたが、アシッドグリーンの紙吹雪が底をつきそうなので、推薦文を簡単にまとめておく。「あまりにも楽しすぎて、舗装道路にいるよりも長い時間、砂利敷の広場にいることになる」とウォリック記者は語った。しかし、彼は37.3kWhのバッテリーと最大充電速度80kWにすぐに飽きてしまった。
ブライス記者も同様に、500eに対して複雑な思いを抱いていた。「回生ブレーキのせいで、スムーズな運転ができない。しかし、まるでテニスボールのようなクルマだ。小さくて、素早く、機敏に動く」
プライヤー氏は500eを推薦しながらも、「しかし、『愛している』というのは言い過ぎかもしれない」とした。代わりに、今、ステージに上がってもらいたいのは、ジープ・アベンジャー・エレクトリックだ。
ポーランド産米国車の小型SUVであるアベンジャーは前途有望に見えた。デザインも良く、価格も魅力的で、欧州カー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた。しかし、長期的には、不作法によりその蜜月はあっけなく終わってしまった。「基本的なソフトウェアに不具合があり、このクルマへの信頼を失ってしまった」とティショー記者は言う。
「しかし、そこを直せば、ジープの大型モデルのスタイリングをうまく縮小した良い小型車になる」
バプラート記者はもっと辛口で、「欧州カー・オブ・ザ・イヤー受賞車としてスタートし、ロードテストでは3.5つ星の評価を得たが、高速道路でスクリーンがシャットダウンしたことで、完全に信頼を失った。しばらく運転していたが、このプラットフォームのどのクルマも同じだが、ドライビング・ポジションがひどすぎる。まさに『チープ・アベンジャー』だ」と述べた。
一方、リメル記者はプジョーe-208を気に入っていたが、iコクピットにはどうしても馴染めなかった。「欠点だらけで、今でも採用されたことが信じ難い」という。
また、スカリオン記者は、ジュリアQVは完璧ではないかもしれないと静かに認めた。「全体的には素晴らしいが、どうやら警告灯を点滅させたり、バッテリーを消耗させたりするのが大好きなようだ」
ステランティスは全体的に、改善すべき点が多いようだ。
慰労賞
お借りしたクルマを手ぶらで帰すことがないよう、独自の賞を設けた。文尾のアルファベットは推薦記者のイニシャル。
ホンダe:Ny1
「ホンダeが大好きなので、e:Ny1も好きになりたかったが、運転してみると、ごく普通のクルマだった。残念だ。それでも、同僚に乗せてもらったときには、後部座席が驚くほど広かったので、『ビーツ・ウォーキング賞』を贈りたい」 – MT
日産アリア
「この電動SUVは、必要な装備がすべて整っているという点で『チェック・ザ・スペック賞』にふさわしい。コンフィギュレーターをうまく使えば、素敵なインテリアと実用的なデザイン、そして十分な航続距離を組み合わせることができる」 – MS
スバル・クロストレック
「スバルのインフォテインメント・システムは、誕生日や記念日をリマインドするようにプログラムできる。わたしの友人はこの機能を悪用して、わたしが朝出勤するときにかなりきわどいメッセージを表示して驚かせた。そこで、『ノット・セーフ・フォー・ワーク(NSFW)賞』を授与する」 – KC
ダチア・サンデロ・ステップウェイ
「わたしはほぼ毎日、8時間も画面上のマガジンを見つめているので、必要なものはすべて揃い、不要なものは何もないこのクルマは、わたしの目と脳を休ませてくれるという点で『デジタル・デトックス賞』に値する」 – KC
スコダ・カミック
「壁に塗る無難なオフホワイトのような、目立たないがしっかりとした存在感を示すスコダの最小クロスオーバーに、今年の『デラックス・マグノリア賞』を贈る」 – JA
シトロエンC4 X
「僕は2024年の『コンフォート・フード賞』を、あまり評価されていないが、すんなりと生活に溶け込むC4 Xに贈りたい。シトロエンらしく、予想通りに凸凹を吸収し、長い一日の終わりにリラックスできる仲間となってくれる」 – JB
ポールスター2
「ハンサムで、インテリアは美しくミニマルかつ実用的。ドライビング・ポジションも良く、価格も手頃で運転も楽しい。さらに航続距離も長い。だからポールスター2は、『イッツ・エレクトリック賞』にふさわしい」 – WR
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みんなのコメント
所有者は理解出来ると思いますがエアインテークがドア横にある為アクセル操作で
吸入の音が間近で感じられ生き物に乗ってるようです。
新型のV12は来年納車ですが、これ以降自然吸気V型多気筒MRは非常に貴重な存在になるでしょうね。乗った者だけが分かります。
中身がトヨタのしょぼい車種ベースだからね