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埼玉スタバを巡る反対運動! 地元議員「なにも説明されていなかった」と吐露、年間18万人集客のはずが…市長の手続き拙速すぎたのか?

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埼玉スタバを巡る反対運動! 地元議員「なにも説明されていなかった」と吐露、年間18万人集客のはずが…市長の手続き拙速すぎたのか?

水城公園にスタバ進出、18万人来店予測

埼玉県北部に位置する行田市で、大手コーヒーチェーンのスターバックスが出店計画を巡り騒動が起きている。報道によれば、スターバックスは2024年12月に市内の水城公園駐車場に初の店舗をオープンする予定だったが、これに対して反対の声が上がり、同社は出店計画の見直しを市に通達した。一方で、出店賛成の署名も多く集まっているという。

【画像】マジ!? これが行田市の「水城公園」です! 画像を見る!(17枚)

このような事態がなぜ起こったのか、まずは出店までの経緯を振り返ることが重要だ。行田市は2024年に水城公園内で飲食施設の事業者を募集した。その理由について、市議会は次のように説明している。

「昨年10月に企業誘致課が新設され、すぐにできる取組として、市の所有する土地に市民の皆様が喜んでいただけるような企業や店舗を誘致できないかを検討してまいりました。そうした中で、以前から市民意識調査やウェブアンケートなどで、水城公園の一角に憩いの場、いわゆるカフェのような飲食店があればとの要望が多くあり、本市の中心市街地や水城公園の今以上の魅力創出につながるものと捉え、出店者の募集に至ったものでございます」(令和6年9月 定例会 09月05日-05号 高橋栄一都市整備部長)

この時点で、公民館などの駐車場利用に影響するのではという懸念が質問されているが、行田市は2024年4月11日(平日)と13日(土曜日)に調査を実施し

「全ての駐車台数のうち、公園利用者及び公民館利用者などの利用は、おおむね半分程度であるのかなと想定している」(高橋栄一都市整備部長)

と回答している。この公募には、スターバックスのみが手を挙げ、2024年10月に行田市は同社と基本協定書を締結している。これを報じた『朝日新聞』2024年10月31日付朝刊によれば店舗の規模は

「店内に45席、テラスに10席前後、さらにドライブスルーを設け、年間18万人の来店を見込む」

としている。なお契約は10年間で建物等はスターバックスが設置、建物設置前の作業や区画線などは市の負担。契約満了後は更地にして返還する契約となっている(行田市令和6年12月定例会 11月29日-02号 高橋栄一都市整備部長)。

駐車場問題が焦点、行田の街づくりの行方

ところが、2024年12月の市議会定例会では一部市議から計画に疑問を呈する声が上がり、市民による反対運動も勃発した。

この経緯は『埼玉新聞』2025年2月20日付で詳述されている。記事によれば、出店により忍・行田公民館の駐車場が縮小されることに反対する団体がスターバックスに建設中止を求める要望書を提出。

行田市は公民館北側に新たな駐車場を整備することを決定したが、そのほかにも再検討を求める要望書や中止を要求する匿名の手紙が寄せられた。そのため、同社は一部の反対意見でも経営理念の実現が難しく、現状での出店は困難だと行田市に通告した。

記事では、行田市に出店を求める2082筆の署名が添えられた嘆願書も届いているが、契約には至っていないと報じている。

さらに『東京新聞』2025年3月1日付朝刊によれば、行田市長の行田(こうだ)邦子が反対署名を集めた団体の発起人宅を職員とともに訪問したことも伝えられ、事態はさらに混迷を深めている。

水城公園カフェ市場に生まれる競争構造

これらの情報を総合すると、問題は次の二点に集約される。

ひとつは、水城公園内の忍・行田公民館駐車場の縮小問題だ。行田市は新たな駐車場の整備を予定しているが、利便性が低下するとの批判が出ている。もうひとつは、すでにカフェが営業している水城公園内に、新たな店舗を出店する必要があるのかという疑問だ。

現在、公園内では旧忍町信用組合の建物を活用した「ヴェールカフェ」が営業している。このカフェは2018年に建物を移築し、当初は任意団体が週4日程度営業していたが、2024年3月にリニューアルオープンし、週6日営業へと拡大した。

運営を担うのは行田おもてなし観光局。2021年に観光協会に代わり設立された組織で、市や市内の商工団体、企業関係者が名を連ねている。その目的は「近場の観光地」として行田市の魅力を発信することにある(『埼玉新聞』2021年2月18日付)。

つまり、市内の経済界が関与するカフェがすでに営業している場所に、新たな競合が生まれることになる。

訪問率7%の現実、水城公園の低迷

この問題を考える上で、まず出店予定地である水城公園の役割と特徴を整理する必要がある。この公園は、1964(昭和39)年に忍城の外堀を利用して整備された都市型公園である。模擬天守や博物館がある忍城本丸跡(忍公園)とは数百m離れている。

では、この公園はこれまでどのように利用されてきたのか。行田市の公式ウェブサイトには少し古いが、2014(平成26)年に行田市観光案内所が実施したアンケート結果が掲載されている。このアンケートでは、回答者58人のうち水城公園を訪れると答えたのはわずか

「4人(約7%)」

に過ぎなかった。

・古代蓮の里(32人、55%)
・さきたま古墳公園(18人、31%)
・忍城址・郷土博物館(15人、26%)

と比べても、極めて少ない数字である。さらに、水城公園を訪問予定だった4人はいずれも埼玉県外からの観光客で、地元住民や近隣市町村からの利用はほとんど見られなかった。公園の利用状況を分析するには、他の観光施設との比較が不可欠だ。しかし、このアンケート以外に公園利用者数を示すデータはなく、推測するしかない。

限られた情報から読み取れるのは、水城公園は観光客にとっても地元住民にとっても

「訪問頻度が低い施設」

であるということだ。忍城址・郷土博物館を訪れた人々の多くも、水城公園には足を運んでいない。このことからも、公園の集客力の弱さが浮き彫りになる。

この課題に対し、レトロな建物を移築してカフェをオープンさせた施策には一定の合理性がある。加えて、ブランド力の高いスターバックスの誘致も、公園の集客力向上を狙ったものだろう。しかし、

・都市計画
・地域性

の観点から見ると、なぜ全国チェーンのスターバックスが選ばれたのかという疑問は残る。

日本遺産の街と外資系カフェの相克

現在、全国の公園ではスターバックスやブルーボトルコーヒーをはじめ、さまざまな飲食店の出店が一般的になっている。しかし、公園のような

「公共空間」

に特定企業の商業施設を設けることの是非は依然として議論の余地がある。ただ、今回の行田市のケースは、それ以前の問題といえる。前述のように、市が水城公園内への飲食店誘致を決めた理由は、「すぐにできる取り組み」だったからだ。

行田市の強みは、埼玉の地名の由来となった埼玉(さきたま)古墳群や忍城など、歴史的な観光資源にある。現在、公園内にあるヴェールカフェも、建物の持ち味を生かし、レトロな雰囲気を演出して集客を図っている。

また、行田市は埼玉県で唯一、「日本遺産を巡り、歴史と出会うウォーカブルなまち」として日本遺産に認定されている。市は「市内中心部の景観も歴史を感じられるものとなっており、まち歩きもできる」としており、レトロ建築を生かした回遊性の向上が課題となっている。こうした背景を踏まえると、都会的な雰囲気の強いスターバックスが

「歴史的景観と調和するかどうか」

は慎重に考えるべき点だ。スターバックスそのものが問題なのではなく、重要なのは地域特性との調和である。例えば、京都市内にあるスターバックスは、町家建築に合わせたデザインを採用し、景観に溶け込む工夫を施している。行田市においても、単なる誘致ではなく、地域の特性を生かした店舗設計が求められるだろう。

スターバックス誘致の是非

こうした背景を踏まえると、行田市の騒動の本質的な原因はどこにあるのか。この点について、ようだひでお行田市議(日本維新の会)に話を聞いたところ、次のような内部事情を明かしてくれた。

「私が議員説明会で飲食店の出店について報告を受けたのは、2024年8月のことです。それまで、出店誘致に関する進行状況を含め、何も説明がされていませんでした。公民館の館長も、決まった後に初めてそのことを聞いたそうです」

筆者の取材によると、一部の議員が『埼玉新聞』でも報じられた駐車場縮小の問題について懸念を示していた。しかし、市が公民館北側に新たな駐車場を整備する方針を決定したことで、議会全体としては賛成多数で可決に至った。懸念事項には一応の解決策が示されたものの、行政が事前に十分な説明や関係者との調整を行わずに計画を進めたことへの不満は解消されず、対立が続いているようだ。

では、市民はこの対立をどう受け止めているのか。ようだ市議はこう続ける。

「私の聞いた限りですが、ほとんどの市民は歓迎しています。「羽生には3店舗もあるスターバックスがなぜ、行田には、ひとつもないのか」と思っていた人も多かったんでしょう」

出店予定地の駐車場は、国道17号に接続し、市役所や病院などへのアクセスも良好な南大通り沿い。スターバックスにとっても、市民にとっても、好条件の立地といえる。

拙速な手続きが招いた混乱

行田市の政治状況も、今回の騒動に影響を与えている。

行田邦子市長は2023年4月の市長選で、現職を含む5人による激戦を制し、石井直彦前市長に僅か1106票差で勝利した。こうした僅差での当選という事情もあり、現市政は市民の支持を固めるため、3歳未満児の保育料無償化など、目に見える施策を次々と打ち出している。スターバックスの誘致も、こうした施策の一環として進められてきた。

しかし、「いよいよ行田にもスターバックスが」と歓迎されるはずが、

「手続きの拙速さ」

が原因で思わぬ混乱を招いた。今後、行田市が取り組むべきは、情報共有の不足を反省し、市民にとって有益な誘致であることを丁寧に説明することではないか。

※2025年3月17日、「ある行田市議」を「ようだひでお行田市議(日本維新の会)」に変更いたしました。

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