■スーパーSUV「ウルス」を一般道で試乗する
ランボルギーニが好調だ。
【画像】ランボルギーニ「ウルス」と「ウラカンEVOスパイダー」をチェック(15枚)
新型コロナウイルス感染拡大による景気後退のなか、2020年の輸入車ブランドは軒並み販売実績を落としている。日本自動車輸入組合(JAIA)の統計によると、2020年1月から7月までの外国メーカーの新規登録台数は、前年同期比で77.5%となっている。
そんななか、ランボルギーニは前年同期比96.9%の431台と、緊急事態宣言による外出自粛の影響をほとんど感じさせない数字を叩き出している。
ほかにもフェラーリやポルシェも好調だという事実だけを見れば、スポーツカーブランドは不況に強い、と断言してしまいがちだが、大幅に数字を下げているプレミアムブランドもあるため、単純にその理由だけではないはずだ。つまりランボルギーニには、他ブランドにはない魅力があるからこそ人々に選ばれるのだろう。
ランボルギーニの唯一無二の魅力とはなんだろうか。
静岡県御殿場市にある、リストランテ桜鏡をベースに、ランボルギーニ・ドライビングエクスペリエンスは開催された。
まずハンドルを握ったのは、スーパーSUV「ウルス」。ウルスはフロントに650hp・850Nmを発生する4リッターV型8気筒ツインターボエンジンを搭載。トランスミッションは8速ATを組み合わせ、0-100km/h加速は3.6秒、最高速度は305km/hと、市販されているSUVのなかで最速を誇るモデルだ。
ウルスは世界中で大ヒットモデルとなり、市場導入からわずか2年の2020年7月21日には生産台数が1万台を突破。日本でも2018年2月に登場して以来好調なセールスで、「ウルスではじめてランボルギーニブランドを体験するというお客さまが増えました(アウトモビリ・ランボルギーニ・ジャパンPR担当者)」という。女性ユーザーも多いモデルとのことだ。
ベースの車両価格は2607万5736円(消費税抜き、以下同)。試乗車はこれに加え、23インチアルミホイールやバング&オルフセン3Dプレミアムサウンドシステム、さまざまなアシスタントパッケージが装着され、トータル3162万9089円となっていた。
インテリアは直線基調のデザインでまとめられ、まさにランボルギーニの他スポーツモデルと共通の雰囲気をまとう。他と違うのは、バックミラーに映るリアシートと、ドライバーズシートから見える外の風景だ。
赤いカバーを上げ、スタートボタンを押しエンジン始動。このあたりもランボルギーニの流儀だ。4リッターV8ツインターボが目を覚ますが、その音色はいたってジェントルだ。
パドルシフトを引いてスタート。インストラクターを先頭に、4台のウルスが国道138号線を箱根・仙石原方面に走っていく。さまざまなボディカラーのウルスが連なるその光景に、スマホで写真を撮るツーリストの姿もあった。
コロナ禍が続いているとはいえ、試乗会当日は8月の夏休み期間。観光地である仙石原までの道は通行量も多く、流れは法定速度以下。「一般道では、市販SUV最速の称号を持つウルスの魅力が伝わってこないのではないか?」という思いは杞憂に終わる。
SUVとしては低めのアイポイントながら見切りがよく、23インチ・35扁平のオプションタイヤでも路面からのアタリはクリアにいなす。全長5112mm×全幅2016mm×全高1638mmという大きさとは思えないほど、運転はしやすくボディサイズに気を遣うことがない。NVHを考えれば、ラグジュアリーSUVとしてもウルスは最高レベルだろう。
先頭車のインストラクターから無線で、「それではドライブモードを変えてください」と指示が入る。豊かな時間を楽しむことができた。ウルスにはTamburoと呼ばれるドライブモードセレクターがあり、ドライバーの好みに応じてドライビングダイナミクスを変えることが可能だ。
STRADAからSPORTへと、そしてCORSAへと変えてみると、ギアは高回転まで引っ張ってからシフトアップ、さらにV8エンジン音も変化していく。乙女峠のトンネルのなかでは、官能的なサウンドを響かせたウルス。極上の時間を味わった。
■ウラカンEVO RWDスパイダーを新東名高速で試乗する
続いて試乗したのはウラカンEVO RWDスパイダーだ。
これは2020年5月7日に発表され、日本へのデリバリーも始まったばかりの最新モデルで、610hp・560Nmを発生する5.2リッターV10自然吸気エンジンを搭載。後輪駆動モデルで、0-100km/h加速は3.5秒、最高速度は324km/hというパフォーマンスを発揮する。走行中でも50km/h以下なら17秒以内でオープンにできるソフトトップルーフを持つのが特徴だ。
車両価格はウラカンEVO RWDの2412万6941円に対し、ウラカンEVO RWDスパイダーは2653万9635円となる。試乗車はさまざまなオプションが装備され、トータル3380万9235円となっていた。
そんなウラカンEVO RWDスパイダーに乗りこむ。地面に直接座っているような低いこのアイポイントは、まさしくランボルギーニだ。そしてこの直線基調のインテリアデザイン。ハイテクイメージのなかにどこかクラシカルな香りが漂う室内は、先ほど乗ったウルスと共通の雰囲気を醸し出している。
ウラカンEVO RWDスパイダーの試乗コースは、御殿場インターから高速に乗り、新東名の駿河湾沼津SAまでの往復を体験する。
インストラクターが操縦するウラカンEVOを先頭に、3台のウラカンが御殿場インターから東名、そして新東名に入る。ステアリング上にあるウインカーに手こずりながらも進路を変える。
自然吸気のV10はとにかくアクセル操作に対して淀みなく反応するのが気持ち良い。屋根のないスパイダーだから、官能的なV10サウンドが直接耳に届いてくる。
トランスミッションは7速DCT。前を行くトラックに追いつくとパドルシフトでシフトダウン、ボボッという排気音とともに3速まで下げれば7000rpm、カーンという甲高いエンジン音が身体の芯の部分を揺り動かす。至福の時間。
トンネルのなかでの走行は、3台のウラカンのエンジン音が混ざり合い、まるで有名どころの交響楽団のクラシックを聞いているような気分になってくる。ウラカンEVO RWDスパイダーは空気を切り裂くように進み、加速・制動をおこなっても4輪ともに接地感が変わることがない。
またオープンルーフなのに髪の毛は柔らかくなびく程度。助手席に彼女を乗せたとしても、これならば満足してもらえるだろう。
一般道なので当然、法定速度内での試乗となるわけだが、それでも官能的なV10サウンドであったり、打てば響くレスポンスの良さだったり、ウラカンEVOの魅力は十分に体感できる。
同じ100km/hで走行しているとしても、軽自動車やコンパクトカーなどとウラカンEVOとは、密度や濃さというものが違う、といえばわかるだろうか。濃密で豊かな時間。至極の時を味わった試乗会だった。
※ ※ ※
昨2019年に開催された同イベントは、富士スピードウェイの本コースでの試乗やジムカーナ大会など、ランボルギーニモデルの底知れぬパフォーマンスをクローズドコースで余すことなく味わうというものだった。
今年もサーキット試乗を予定していたのだが、コロナ禍で急遽一般道試乗に変更したという。ランボルギーニ・ジャパンのスタッフは申し訳なさそうにしていたが、いや、そんなことはない。
もちろんスーパーカーにとっては、絶対的なパフォーマンスは大切なことなのだが、市販車である以上は、サーキットという晴れの舞台だけではなく、日常使いのドライビングも重要だ。
数値に表れない部分、それこそ何気ない日常のドライブでさえも、濃密で豊かな時間に変えるということを、今回の試乗で確認することができた。この濃い時間こそが、ランボルギーニのモデルが持つ唯一無二の魅力といえるかもしれない。
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オレも欲しいもん。