雑誌に載らない話 vol.286
「あいおいニッセイ同和損保」の最新の自動車保険についてのメディア向け発表会が行なわれ、同社の次世代型自動車保険が紹介された。これからのクルマは否応なく「CASE(コネクテッド、自動運転化、シェアリングサービスの拡大、電動化の総称)」の時代に入りつつあるが、クルマを使用する上で欠かせない自動車保険もまた、大きな変革期を迎えている。
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新しい損害保険像を追求
まず最初に樋口昌宏取締役専務執行役員が、現在の同社の自動車保険の取り組みを説明した。同社では、自動車保険業界で唯一、24時間・365日のコールセンターを開設しており、例えば2019年5月の10連休中でも24時間即時対応が可能になっている。こうした体制は業界で唯一なのだ。
最新のコネクテッド化されたクルマでは、24時間体制のコールセンターサポートが行なわれているが、自動車保険も同様に進化しているわけだ。
また自動車保険ではなく、損害保険の分野では、2018年のように自然災害が多発すると、特定の期間にコールセンターへの電話が集中して麻痺したり、大量の書類が集中し事務処理が滞るなどの問題が発生した。
そのため自然災害対策プロジェクトを立ち上げ、今後は被害予測の高度化、災害情報をより早くユーザーに提供し、防災、減災を目指すことや、事故受付窓口の拡大、事務処理をデジタル化し、ペーパーレス化、ロボット処理により高速化させることを目指すとしている。
クルマの先進技術に対する対応
あいおいニッセイ同和損保は、あいおいニッセイ同和自動車研究所を運営し、全国4ヶ所に研修拠点を持っている。これは、自動車保険に欠かせない事故車両の修理に必要な技術レベルの向上が目的とされ、研究部門では衝突実験施設も所有。修理費を低減するための耐損傷性能、修理性の調査研究を行なっている。
またこうした研究と同時に、板金、塗装などクルマの修理業者の技術講習なども行ない、最新のハイブリッド車、PHEV、EVなどの修理技術の向上を目指している。最近では軽自動車まで普及したドライバー支援システムのチェックがボディ修理時に必須となっており、超音波センサー、レーダー、カメラなどを装備したクルマの修理のポイント、メーカーごとに違っているドライバー支援システムの検査方法、調整方法などを調べ、こうした情報を修理業者に提供するなど、クルマの修理段階でのレベルアップ、先進技術への対応を行なっている。
2021年以降は車検時にもOBD(オンボード・ダイアグノーシス:車載故障診断システム)が採用される見込みであることなど、車検や修理を行なう業界でも革新的なデジタル化対応技術が求められている。
ボッシュ製CDRを使用した事故解析
あいおいニッセイ同和損保は、2017年に自動車保険業界でも先頭を切ってボッシュ製のCDR(クラッシュ・データ・リトリーバル:ECUに記録された事故前後の車両データ解析システム)を導入、業界でもトップの運用実績だと能力開発部の宇津木孝弘支援開発グループ長は語る。
保険会社は事故当事者の説明が食い違う場合、ペダルの踏み間違いなど、ドライバーの認識が誤っている場合、また多重衝突事故などでは、それぞれのクルマのECUに記録されている車両の多くのデータ(EDR:イベント・データ・レコード)を抽出し、事故の実態を究明する必要がある。
そうした場合に威力を発揮するのがボッシュのCDRだ。ボッシュのCDRは現在唯一のシステムで、例えば裁判になった場合には、自動車メーカーが提供するデータより客観性が高く最も信頼性が高いとされている。ボッシュのCDRは17自動車メーカー・51ブランドに適合する世界No1の唯一の事故解析ツールだ。
【関連記事】ボッシュ 事故前後の車両情報を解析する「クラッシュデータ・リトリーバル」を日本で発売
あいおいニッセイ同和損保は2018年までにCDRを5台導入し、データを分析するアナリスト20名を養成。全国の事故解析に適用できるようにしているが、さらに2019年からはボッシュとしては未発売の新型CDR(CDR900)を15台先行導入し、全国の技術調査部に配備している。
ボッシュの里廉太郎ゼネラルマネージャーによれば、最新のCDR900は、新CAN通信規格のCAN-FD、車載イーサネットに対応し、今後のADAS、自動運転時代の車載ECU/通信規格に対応できるようになっているという。
一方、アメリカ、中国では全自動車メーカーが法規によりCDRに対応しており、ヨーロッパの自動車メーカーも2020年から法規化される。だが、日本はまだこれからのため、現時点では輸入車、トヨタ、スバル車のみが対応車種だ。日本の他の自動車メーカーもECU内にはデータ記録システムを設けているが対外的に未公開となっている。
テレマティックスに対応し、新たなサービスを付加した自動車保険
新しい自動車保険は、クルマのテレマティックス、コネクテビティに対応することで従来は存在しなかった新たなサービスや価値を生み出していると、商品企画部の梅田傑次長は語る。
あいおいニッセイ同和損保の自動車保険は、2004年に日本初の走行距離連動型保険を導入しているが、2015年にイギリスのテレマティックス自動車保険の最大手「ITB社」を買収することでノウハウを獲得し、2016年にはトヨタと共同でテレマティックス保険会社をアメリカで設立している。そして2018年にトヨタが常時通信接続のクラウン、カローラスポーツを発売したことに合わせ、日本初のドライバー挙動連動型保険「タフ・つながるクルマの保険」を発売した。
これはドライバーの運転を、センサーを通して把握しクラウドに送ることで運転を評価(点数付け)を行ない、ドライバーに点数表示をすることで安全運転を促し、同時に走行距離と安全運転スコアに応じて保険料を割り引くという仕組みになっている。実際に販売店の試乗で、この仕組みを体験することで保険の加入率が高くなり、また安全運転の点数が高いドライバーほど事故率が低減しているという。
この他に高齢者向けのテレマティックス保険「タフ・見守るクルマの保険」も発売。さらにコネクテッドカーではないクルマにも適用できるスマートフォン対応型や「タフ・見守るクルマの保険ドラレコ型」も2019年1月から発売している。
これは保険会社から提供されるドライブレコーダーを装備することで、事故映像の自動送信、ドライブレコーダー映像による安全運転支援警報、ヘルプデスクとの通話が可能といった特長を持っており、e-コールの機能に付加機能をアドオンした形になっている。
常時通信接続、スマートフォンによる通信などのコネクテッド技術に対応することや、近い将来の高度運転支援システムや自動運転化という技術トレンドに合わせ、自動車保険も従来では考えられなかった付加機能やサービスを備え、同時に事故を低減できるように進化しつつあることはユーザーも知っておくべきだろう。
あいおいニッセイ同和損保 クルマの保険 公式サイト
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