劇中で谷に落とされたのは替え玉の事故車
50年前に公開された映画「ミニミニ大作戦」の冒頭に登場したランボルギーニ・ミウラは、アルプスの峠道を爆走したあと、ブルドーザーで谷底へ突き落とされるという衝撃的なシーンが有名だ。じつはこのミウラは映画撮影のためにクラッシュしたのではなく、巧妙に差し替えられことが明らかになっていた。そして先日、半世紀を経た今も健在なことが、ランボルギーニのクラシックカー部門であるポロ・ストリコの手で明らかにされた。
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映画の中で活躍したクルマは数え切れないほど挙げられる。この「ミニミニ大作戦」は名前の通り、初代のミニが主役の金塊強盗団のアシとして大活躍。2003年に同名でリメイクされた時はニューミニ(BMWミニ)になり、『トランスポーター』のジェイソン・ステイサムも出演している。そのほか、『007シリーズ』には映画のためだけに作られたアストン・マーチンDB10をはじめ、トヨタ2000GTのオープンカーやロータス・エスプリの水陸両用車も登場。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンDMC-12、アニメでは『ルパン三世』のフィアット500なども映画ファンでなくても記憶に残る1台だろう。
さて話を本題に戻すと、劇中で使用されたミウラP400は2台存在し、アルプスの谷に落ちたのはすでに廃車処分が決まっていた同じオレンジ色(アランチョ)の事故車。これは映画の公開から数年が経って明らかになっている。それ以来、ことあるたびに健在であるはずのもう1台のミウラが捜索されていたことは想像に難くない。そしてついに、映画に登場したミウラは現在リヒテンシュタインにあることが判明した。
白と黒のレザーインテリアを持つそのミウラは現在、リヒテンシュタインの首都ファドゥーツにあるカイザー・コレクションに所蔵されている。ここのオーナーであるフリッツ・カイザー氏が2018年にランボルギーニのクラシックカー部門であるポロ・ストリコを訪問し、自分のミウラが本当に映画に登場した車両で間違いないかという立証作業を依頼したのだ。ポロ・ストリコでは車両や資料を調べるとともに、元従業員にも話を聞いて徹底的に検証。その結果、この「車台番号3586」のミウラが間違いなく、本物であることが証明された。
撮影当時、映画を製作したパラマウント・ピクチャーズのためにクルマを用意したエンツォ・モルッツィさんは次のように語り、新たな秘密を明かしてくれた。「ちょうど生産ラインに事故車(谷に落とされた)と同じ色で左ハンドル、白いレザー内装のP400があったので、これを使うことに決めました。ただ唯一の懸念は白いレザーが汚れてしまうことでした。撮影後、クルマは完璧な状態で返却しなければなりません。そこでわれわれは新品の白いシートを取り外し、すでにテストで使用していた黒いシートと交換したのです。その痕跡は映画を観るとわかります。主役が座っているシートは黒ですが、すぐに交換することができなかった白いヘッドレストが見えるのです」
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