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ゴルフGTIと欧州アイコニックモデルたち、ルノー メガーヌR.S.とアバルト595コンペティツィオーネの世界

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ゴルフGTIと欧州アイコニックモデルたち、ルノー メガーヌR.S.とアバルト595コンペティツィオーネの世界

ゴルフGTIの完成度の高さはひとつ前のパートでもお伝えしたとおり。では、ほかのモデルと比べるとどうなのか?その答えを求めるべく、フランス車とイタリア車の代表的なスポーツハッチとともにロングドライブに出かけた。(Motor Magazine2022年3月号より)

エンジンの特性だけでも、3車は明らかに異なる
ゴルフ8 GTI(以下mゴルフGTI)はゴルフ7 GTIパフォーマンスと同スペックのエンジン、電子制御油圧式フロントデファレンシャルロックやブレーキ制御を組み合わせたビークルダイナミクスマネージャーを得て、FFスポーツモデルの本流をさらに極めた。走り込むほどにその性能の奥深さに圧倒された一方、日常使いでは決してドライバーに牙を剥かないしつけの良さに、ゴルフGTIの伝統と底力を感じた。

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対して、ライバルモデルとして用意された2台は性能、ルーツともに実に個性的だ。ルノー メガーヌR.S.(以下、メガーヌR.S.)はルノーの威信をかけてFF最速にこだわり、シビック タイプRやゴルフ7 GTIクラブスポーツなどと、ニュルブルクリンク北コースでのレコードタイム争いに挑み、勝ち抜いてきた。

一方、アバルトは創設者のカルロ・アバルト自身の星座にちなんだサソリのマークで知られるモータースポーツブランドで、レースシーンでの活躍とハイパフォーマンスモデルを数多く世に送り出したことで知られる。幾度となく厳しい経営状態を乗り越えて、その名を今に残している。

ドッカンターボに近いメガーヌR.S.のパワーフィール
実際に乗り比べると、各車の個性や伝統は明確に異なる。メガーヌR.S.に搭載される1.8L直4ターボエンジンは、小排気量でありながらセラミックボールベアリングターボユニットによって300ps、420Nmのスペックを絞り出す。これはゴルフGTIと比較して実に、55ps、50Nmも上まわる数値である。

アクティブバルブ付きのスポーツエキゾーストのサウンドも特徴的で、R.S.ドライブモードを「スポーツ」や「レース」にすると、抵抗が少ない排気ルートが開かれ低周波音が効いたエンジンサウンドを響かせる。それと同時にエンジン本来の性能も引き出す。

フル加速時は、低回転域では排気音の高まりに対して一瞬加速感が遅れるが、3000rpm弱を過ぎると強烈な加速に身体はのけぞる。幸いにしてDCTでパドルシフトもあるので、ハンドルから手を離す必要はない。6速で各ギアの守備範囲は広いものの、シフトアップ後の回転域はフルブースト領域に収まる。

パワーフィールは中速域からグッと加速するいわゆるドッカンターボに近い。それでも加速感が息つく間もなく続くのは、スムーズに回るボールベアリングターボと各ギアがワイドレンジであるおかげだ。もしクロスレンジレシオであれば、使えるエンジン回転の幅が狭く、反応の良い過給を生かし切れないだろう。変速ロスの低減という意味でも、多段化が必ずしもがベストではないのだ。

総じてラフ。けれどそれもまたアバルトらしい味わいだ
一方、コンパクトなボディにパワフルなエンジンを搭載するなど、サプライズパッケージが得意なアバルト595コンペティツィオーネ(以下、アバルト595)は、フィアット500をベースにギャレット製の大型タービンを組み合わせた1.4Lターボエンジンを搭載。ミドルグレードであるツーリスモの165ps、230Nmを上まわる180ps、250Nmまでパワーアップされている。

トランスミッションは5速MTか5速AMTが用意されているが、試乗車はAMTだった。街乗りでは変速のたびに一瞬の間がありシングルクラッチであることを意識させるが、フル加速時のスムーズさはそれを忘れさせる。

小さなボディに対してパワーユニットは強力なので、その走りには弾けるような加速感があり、それはシフトアップ後も衰えを見せない。ターボの過給の勢いが残っているうちにその力を借りて変速して次へとつないでいく。変速中も加速していてそのまま次へとリレーされていく感覚で、変速の間を感じにくい。さらに、SPORTスイッチを押せば、最大トルクが230Nmから250Nmにアップする。

5速なので各ギアの守備範囲は当然広くなるが、メガーヌR.S.同様に不用意に変速しないのでターボの働きを妨げることがない。とくに4000rpmあたりの気持ち良さは抜群で、力強くレスポンスの良い走りを楽しめる。大型のターボの使い方を熟知した味付けといえる。

アバルト595の走りは、総じてちょっとラフなセッティングのような気もするが、そこにアバルトのこだわりといい意味での大らかさが見えた。

この点、ゴルフGTIはターボの力を借りてはいるものの、エンジンの回転上昇と力強さがリンクしていて、パワーは常にドライバーのコントロール下にある。ターボは常に最適なパワーを引き出す黒子に徹していて、過給の上昇は比較車2台のような二次曲線を描かない。あくまでもエンジンが「主」で、ターボは「従」だ。結果、幅広い領域でいつでもパワーを引き出せるフラット感があるユニットに仕上がっている。

ほかの2台はターボの勢いを常に感じ取れて、実にエキサイティングだ。メガーヌR.S.は右足を操作するたびに、明確な加減速のGを感じさせるし、アバルト595は過給の勢いをダイレクトに駆って、必要十分以上のパワーをひねり出す。そこには、情熱のようなものさえ感じさせる。冷静さを常に失わないゴルフGTIとはやはり対照的である。

ハンドリングと挙動にも各車の個性が表れている
ハンドリングも、それぞれに個性的だ。メガーヌR.s.は4輪操舵と強いダンパーのサポートがあるので、とにかく姿勢を乱さない。いや、正確に言えば操作に対しては実に直進性が強いのでレコードラインに強引に乗せていく感じ。ロールの収束力は強く、ドライバーのミスはそのまま反発Gとして返ってくる。

発進時や加速時はスポーツモード以上では急激に立ち上がるトルクの抑制量が少なく、前輪の振動やハンドルへの反動が出ても、確実に前に進ませようとする。アクセルペダルを踏んでいる限り常に進行方向に向かって一直線に引き寄せられるような反応を見せ、前後や左右へのわずかな動きもない。

アバルト595はロール方向の動きは小さく、ねじ伏せるような走りになる。旋回方向の動きもハンドルをさらに切りこんでいくことでラインにのせていく感じとなる。その領域まで進んでいくと、ようやく足元の上下動が感じられ、アバルトならではの走りの奥深さが見えてくる。

小さいボディゆえに前後左右の動きが大きくなることを嫌い、低い車高と硬めのサスペンションを選んだ。一度姿勢をギュッと抑え込んだうえで、粘る感覚だ。可動域は狭いが、前後左右の動きをきちんと制御して、4輪のグリップを最大限に引き出してくれる。

安心感重視ならゴルフGTIだがほかの2車も魅力的
ゴルフGTIはボディの無駄な動きがなく、足元を巧みにコントロールして4輪の性能を引き出しフラット感をキープ。どの姿勢からでも次の一手の動きに移行できる懐の深さを持つ。

ゴルフGTIがFFスポーツモデルのお手本を極めた感があるのに対して、メガーヌR.S.は姿勢やパワーを強引にピーク領域に持っていくことで速さを実現。アバルト595はサスペンションやパワーに制約のあるコンパクトモデルながら、ピーク性能からのさらなる性能向上を追求、と3台はまったく異なる。

この3台を乗り比べるとメガーヌR.S.とアバルト5955には走りへの情熱を感じると同時に、乗るほどに驚かされることが多く魅力的だった。ゴルフGTIの走りは冷静沈着で安心感はあるものの少し味気ないのも事実である。実用面ならゴルフを選ぶが、走りを楽しむならライバルの2台も選択肢からは外せない。(文:瀬在仁志/写真:永元秀和、井上雅行)

フォルクスワーゲン ゴルフGTI主要諸元
●全長×全幅×全高:4295×1790×1465mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量:1430kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1984cc
●最高出力:180kW(245ps)/5000-6500rpm
●最大トルク:370Nm/16000-4300rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム ・51L
●WLTCモード燃費:12.8km/L
●タイヤサイズ:225/40R18
●車両価格(税込):466万円

ルノー メガーヌR.S.主要諸元
●全長×全幅×全高:4410×1875×1465mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1480kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1798cc
●最高出力:221kW(300ps)/6000rpm
●最大トルク:420Nm/3200rpm
●トランスミッション:6速DCT(EDC)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・47L
●WLTCモード燃費:11.8km/L
●タイヤサイズ:245/35R19
●車両価格(税込):464万円

アバルト595コンペティツィオーネ主要諸元
●全長×全幅×全高:3660×1625×1505mm
●ホイールベース:2300mm
●車両重量:1120kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1368cc
●最高出力:132kW(180ps)/5500rpm
●最大トルク:230Nm/2000rpm<SPORTスイッチ使用時は250Nm/3000rpm>
●トランスミッション:5速AMT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・35L
●WLTCモード燃費:13.2km/L
●タイヤサイズ:205/40R17
●車両価格(税込):421万円

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みんなのコメント

2件
  • こういう全面的に「アバタもエクボ」な全車を全面肯定するレビューは本当に意味ないとウンザリなのだが。
    カー雑誌をいまだに読んでいるような層にはこういう内容がいちばん安心で心地よいってこと?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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