現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 坂本の町で見た無骨で美しい石垣に感動!! 最強の矛と盾「石垣の穴太衆」と「鉄砲の国友衆」を巡る

ここから本文です

坂本の町で見た無骨で美しい石垣に感動!! 最強の矛と盾「石垣の穴太衆」と「鉄砲の国友衆」を巡る

掲載
坂本の町で見た無骨で美しい石垣に感動!! 最強の矛と盾「石垣の穴太衆」と「鉄砲の国友衆」を巡る

その技術は誇り、町を行けば見事な石垣に出会える

「穴太衆(あのうしゅう)」の名を初めて聞いたのは、大分の山城「角牟礼城(つのむれじょう)」をバイクで訪れた時のことでした。加工されていない自然石を積み上げたそれは、400年以上も崩れずに残っているのです。その強固さや無骨さ、繊細さが入り混じった独特の美しさ、風情に心を打たれたのでした。

【画像】これは見事……奥深き石積みを画像で見る(16枚)

 その後、穴太衆のことが気になっていつか訪れてみたいと思っていたのが、活動の拠点となっている滋賀県大津市坂本です。穴太衆は織田信長や豊臣秀吉といった超有名な武将の城の石垣を築いた石工集団であり、全国各地の城でその技術が活かされたようです。

 いざ坂本にやってくると、いきなり石垣だらけの町に入り込むことになりました。穴太衆の石垣は山城のイメージしかなかったのですが、ここでは個人宅の庭や神社など、あらゆるところに石垣があるのです。

 石垣好きにしてみれば、目がクラクラするような光景が目の前に広がっているのでした。今回は行けませんでしたが、比叡山「延暦寺」の石垣も穴太衆の石工たちが動員されたとのこと。

 石垣の前にバイクを置いて写真を撮らせてもらおうと、地元の方に話しかけたところ「見事なものでしょう? ここらは山の中のいろいろなところにたくさん石垣が残されていますよ」とのこと。

 本当に見事としか言いようがありません。穴太衆による石積みは「穴太衆積」と呼ばれ、その技のひとつが「野面積(のづらづみ)」です。一見乱雑に見えますが、実に繊細な特殊技術によって堅牢さを生み出しています。

 穴太衆や石垣に関しては、唯一の末裔と言われ、坂本に現存する株式会社粟田建設のホームページに詳しいので、そちらを参照します。

 表面に見えている石の奥には栗石(くりいし)という小さな石が詰められており、排水性が良く、表面にかかる圧力も軽減しています。目に見えない細かい技によって、何百年ものあいだ雨や風、雪、それに地震に耐える堅牢な石垣を実現しているというわけです。

 もちろん表面に見える自然石も、石の面、石目(割れやすい方向)などの具合を見極めて積んでいます。ちなみに、粟田建設では織田信長が築城した「安土城」の復元工事も担当されています。

 面白いのはコンクリートブロックの擁壁との強度比較テストです。最大荷重250トンと言うジャンボジェット1機分に相当する重さを加えたところ、コンクリートは約200トンの荷重で割れてしまったのに対して、穴太衆積の石垣は最後まで支え続けたそうです。

 なぜそんなにも強固な石垣を作ることができたのか。それは石と対話する力、石の声を聞く能力のある熟練者がいたということだと思いますが、そのイメージを膨らませることができる小説があります。

 今村翔吾氏の『塞王の楯』(集英社)です。2021年に第166回直木賞を受賞したこの作品は、主人公の穴太衆頭目、飛田源斎と、鉄砲集団「国友衆」の次期頭目、国友彦九郎の対決を描いたフィクションです。

 この話の中で、主人公が石の声を聞き、石を切り出し、迅速に運搬し、積み上げたり修復する様子が描かれています。どの仕事も重要です。これらの技術は紙などに残されておらず、口伝のみとされています。

 その真の理由はわかりませんが、城の守りの要を扱うということは、城主にとって最重要である防御機構の情報を得ているということでもあり、機密情報を扱う職人としての心得だったのかもしれません。

 逆に言えば、城の構造を熟知する穴太衆は、ある意味忍者のような諜報活動に長けた集団のようにも思えたのですが、実際には、穴太衆のみの口伝に徹し、信頼という武器を得て、今の時代にもその技術が受け継がれているのでしょう。

 ちなみに、穴太衆の活動拠点である坂本は滋賀県琵琶湖の西南側で、明智光秀の築いた「坂本城」に程近いところにあります。

 一方、鉄砲の国友衆は琵琶湖の北東になります。小説では双方が敵対関係にあったというシナリオでしたが、実際にはそんなことはなかったようです。

 しかし、最強の盾と矛、最強の石垣作りと最強の鉄砲作りに従事した特殊技術集団が同時代にこの地に存在していたこと自体、歴史好きにとってはワクワクしてきます。坂本の石垣を堪能した後は、バイクで国友町へ走りました。

関連タグ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

鉄砲作りの技術はやがて花火、望遠鏡へ。最強の矛と盾「石垣の穴太衆」と「鉄砲の国友衆」を巡る
鉄砲作りの技術はやがて花火、望遠鏡へ。最強の矛と盾「石垣の穴太衆」と「鉄砲の国友衆」を巡る
バイクのニュース
雨の日は読書だ リライアント・シミターが好き 東京オリンピック2020開催決定に触れて【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】
雨の日は読書だ リライアント・シミターが好き 東京オリンピック2020開催決定に触れて【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】
ベストカーWeb
「鎌倉遠いのに…」  なぜ全国に「鎌倉街道」が存在? 鎌倉に続かずも名称付けられる謎! 歴史的背景が理由?
「鎌倉遠いのに…」 なぜ全国に「鎌倉街道」が存在? 鎌倉に続かずも名称付けられる謎! 歴史的背景が理由?
くるまのニュース
“地獄渋滞”国道21号の救世主!?「岐阜南部横断ハイウェイ」計画のスゴさとは 新ルートに「夢の橋」も!? どこまで開通したのか
“地獄渋滞”国道21号の救世主!?「岐阜南部横断ハイウェイ」計画のスゴさとは 新ルートに「夢の橋」も!? どこまで開通したのか
くるまのニュース
ホントに“国道”!? めちゃハードで「走行困難」な道も? “過酷”すぎる「日本三大“酷道”」とは
ホントに“国道”!? めちゃハードで「走行困難」な道も? “過酷”すぎる「日本三大“酷道”」とは
くるまのニュース
『サーキットの狼』を読んでいた幼稚園児が「カウンタック」の生みの親である「スタンツァーニ」さんにどうやって巡り会えた?【極私的スーパーカーブーム】
『サーキットの狼』を読んでいた幼稚園児が「カウンタック」の生みの親である「スタンツァーニ」さんにどうやって巡り会えた?【極私的スーパーカーブーム】
Auto Messe Web
「まるで北欧神話」あまりに美しすぎる「道路標識」が東京から消えた理由とは!? ファンに愛された「王の槍」標識って一体なんだ
「まるで北欧神話」あまりに美しすぎる「道路標識」が東京から消えた理由とは!? ファンに愛された「王の槍」標識って一体なんだ
くるまのニュース
子どもも大人もテンション爆上がり確定! バカでか重機に触れて電動ショベルの操作までできる「こまつの杜」は行きたい欲が抑えられない!!
子どもも大人もテンション爆上がり確定! バカでか重機に触れて電動ショベルの操作までできる「こまつの杜」は行きたい欲が抑えられない!!
WEB CARTOP
愛車の履歴書──Vol59. 磯村勇斗さん(番外・後編)
愛車の履歴書──Vol59. 磯村勇斗さん(番外・後編)
GQ JAPAN
かつて日本において沖縄だけが「右側通行」だった! 左側通行へと変わった46年前を知る「2台の現役バス」の姿
かつて日本において沖縄だけが「右側通行」だった! 左側通行へと変わった46年前を知る「2台の現役バス」の姿
WEB CARTOP
「え、船じゃないの!?」 陸自の激レア「異形の巨大車両」衝撃の洋上訓練に密着! 隊員の知られざる苦労とは
「え、船じゃないの!?」 陸自の激レア「異形の巨大車両」衝撃の洋上訓練に密着! 隊員の知られざる苦労とは
乗りものニュース
「ウルル」が夕日で赤く染まる景色を坂本龍一『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』を読みながら待つ至福の時間…お約束でも絶対見る価値ありです【豪州釣りキャンの旅_16】
「ウルル」が夕日で赤く染まる景色を坂本龍一『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』を読みながら待つ至福の時間…お約束でも絶対見る価値ありです【豪州釣りキャンの旅_16】
Auto Messe Web
なぜ京都に阪神高速があったのか? 消えた阪神高速8号京都線と京都高速道路の謎。【いま気になる道路計画】
なぜ京都に阪神高速があったのか? 消えた阪神高速8号京都線と京都高速道路の謎。【いま気になる道路計画】
くるくら
2025年 激変する“原付界隈”をホンダ企業広報が回答
2025年 激変する“原付界隈”をホンダ企業広報が回答
バイクのニュース
『サーキットの狼』の中でもランボルギーニ「ミウラ」は別格だった! 憧れの地「ミウラ牧場」を訪ねる夢を実現しました【極私的スーパーカーブーム】
『サーキットの狼』の中でもランボルギーニ「ミウラ」は別格だった! 憧れの地「ミウラ牧場」を訪ねる夢を実現しました【極私的スーパーカーブーム】
Auto Messe Web
AIを導入して最先端の安全装置を使ってもやっぱり最後は「熟練の職人技」! 一度事故ると凄まじい被害になる「クレーン操作」の最前線
AIを導入して最先端の安全装置を使ってもやっぱり最後は「熟練の職人技」! 一度事故ると凄まじい被害になる「クレーン操作」の最前線
WEB CARTOP
気軽なメルセデス・ベンツ540Kを夢見て クーリエ・キャデラック(1) 社長のワンオフ
気軽なメルセデス・ベンツ540Kを夢見て クーリエ・キャデラック(1) 社長のワンオフ
AUTOCAR JAPAN
マンガ家・里中はるか氏のヒマラヤバイク旅を描いた展示会「#ヒマバイ展」がユナイテッドカフェで1/15より開催
マンガ家・里中はるか氏のヒマラヤバイク旅を描いた展示会「#ヒマバイ展」がユナイテッドカフェで1/15より開催
バイクブロス

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村