ドイツにあるBMW本社(BMW AG)のフルネームは「Bayerische Motoren Werke Aktiengesellschaft」。直訳は少し違うのだが、こなれた日本語にするなら「バイエルン・エンジン製作所株式会社」ということになるだろう。
そんな社名を持つ同社はよく知られているとおり、もともとは航空機用エンジンメーカーだった。第一次世界大戦の敗戦により航空機の製造を禁じられた結果として、二輪車や四輪車のメーカーへ転じたという背景を持っている。
根っからのエンジン屋!? ホンダ新社長が携わったクルマと指揮官の「横顔」
そんなBMWだけに、同社の大きなアピールポイントは2021年の現在も「エンジン」だ。方式や気筒数を問わず精密な感触でもって高回転域まで吹け上がるBMW製エンジンには魔力的な快感がある。
特にその直列6気筒エンジンは「シルキーシックス(絹のような感触の6気筒エンジン)」との異名を持ち、「地上で最高のNAエンジンである!」と評する人間も多い。
だがそんなBMWのシルキーシックスも今、存続の危機にひんしている。ご承知のとおり現在、世界規模で「純内燃機関の新車販売を将来的に禁止する」という動きが加速している。
まだ新車販売禁止だけだが、将来的な都市中心部への乗り入れ禁止などを含め、すでに販売されているクルマや中古車がどうなるのかはわからない。
そこで、BMWの名機、直6エンジンを搭載したM2やM3、M4の中古車は今どうなっているのか、調べてみた。
文/伊達軍曹
写真/ベストカー編集部 ベストカー
【画像ギャラリー】BMWの伝家の宝刀「シルキーシックス」こと直6エンジン搭載モデルをチェック!
純エンジン車がなくなってしまう前に乗っておきたい!
2021年1月26日に発表、発売された新型M3とM4。新しいBMWの顔となる縦型キドニーグリルを採用
直6エンジンにこだわり続ける自動車メーカーといえばBMW。写真は 1977~1989年まで生産された、世界一美しいクーペと呼ばれたBMW635CSi。搭載されている直6エンジンは、まるで絹のようになめらかに吹け上がることから「シルキーシックス」と呼ばれ、ファンを魅了した
米国カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は2020年9月、同州内におけるガソリン車の新車販売を2035年までに禁止すると発表し、英国政府も2020年11月、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止すると発表した。
また我が国日本でも、東京都が2030年、日本政府が2035年にはガソリン車の新車販売を禁止する方針だ。
BMWのお膝元であるドイツは、PHVを含むガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車の全廃を「2050年」と、比較的遅いタイミングで設定している。しかしBMW AG自身は「今後数年間で電動化を加速させる」と表明した。
具体的には2023年からフルEVを12車種に拡大し、2025年までにフルEVの販売を年間平均で50%以上増加させる。そして2030年までに、世界販売台数の少なくとも50%をフルEVにする……というのがBMW AGの計画である。
この計画どおりに物事が進むかどうかはさておき、少なくともいえるのは、「フルEVが増える分だけ、BMWの直6ガソリンエンジンは廃番となっていく可能性が高い」ということ。
それがいつになるかは不明だが、そう遠くない将来には、BMWのシルキーシックスは「買いたくても買えない」になっているのかもしれないのだ。
ならば今のうちに、とことん堪能しておくしかない。それも、通常のBMW製直列6気筒以上に官能的な「Mモデルの直列6気筒」を!!!
……と、びっくりマークを3つも付けて力説したが、直6を搭載する現行Mモデル(M2クーペ/M3セダン/M4クーペ)の新車はなかなか高額であり、ド庶民である筆者風情がそう簡単に買えるものでもない。
ということで、その「中古車」について考えてみることにしたい。はたして直6搭載Mモデルとはどんなもので、いくらぐらいで買えるのか……ということを!!!
F87型M2クーペ/370psの3L、直6ターボを搭載するちょうどいいサイズのスペシャルティ
■おススメは450万円前後、走行距離は2万km台
M2クーペに搭載されるN55B30A型3L、直6ターボエンジンは370ps/47.4kgmを発生。最大トルクはオーバーブースト機能によって一時的に51.0kgmまで引き上げられる
2018年8月、M2クーペの直6、3Lターボエンジンをさらに強化して登場したのがこのM2コンペティション
最新モデルのM2コンペティションは、先代M4クーペの冷却システムを採用したS55B30A型3L、直6ツインターボエンジンを搭載。最高出力は410ps/56.1kgmにパワーアップ
M2クーペの中古車情報はこちら!
まずは「M2クーペ」からいってみよう。BMW M2クーペは、初代M3や2002ターボの伝統を引き継ぐ「もっともコンパクトなMモデル」として、日本では2016年1月に発売された。
ベースとなったのはBMW2シリーズクーペで、縦置きされるエンジンは最高出力370psの3L、直6ターボ。最大トルクは47.4kgmだが、オーバーブースト時には51.0kgmまで高められる。
当初のトランスミッションは7速DCTの「M DCT ドライブロジック」で、駆動方式は当然FR。足回りには軽量な専用設計サスペンションと「Mコンパウンドブレーキシステム」が採用された。
そして2016年10月には待望の6MTが追加され、こちらはシフトダウン時に自動でエンジン回転数を上げる「スロットルブリッピング機能」付きとなった。
さらに2018年8月には、同じ3L、直6ターボながら最高出力410psを発生する「M3」「M4」譲りのユニットを搭載する「M2コンペティション」が登場。
このタイミングで従来のM2クーペはカタログ落ちした。またわずか60台限定ではあるが、2020年4月には最高出力450psの軽量ハイパフォーマンスモデル「M2 CS」も導入された。
……というのがM2クーペの大まかなヒストリーなわけだが、新車時価格768万~1285万円だったそれの中古車は今、ズバリいくらなのか?
結論から申し上げると、2016年から2018年途中の「M2クーペ」が380万~660万円で、2018年途中からの「M2コンペティション」が580万~740万円というのが直近の大まかな相場。
ちなみに60台限定の「M2 CS」の中古車はさすがに希少かつ高額で、約1200万円の物件が1台流通しているのみである。
BMW M2の中古車をこれから狙うのであれば、後期型に相当するM2コンペティションではなく、前期型である「M2クーペ」にするべきだろう。
もちろん絶対的な諸性能はM2コンペティションのほうが上なわけだが、コンペティションは中古車相場も「上」で、底値圏の物件でもおおむね600万円は下らない。
で、そこまでのお金を投じるならいっそ新車を買いたくなるのが人情というもの。新車ではなくあえて中古車を選ぶのであれば、「車両450万円前後、走行距離は2万km台」ぐらいのM2クーペを選ぶのが、結果として納得感の強い選択となるだろう。
F80型M3セダン/怒涛の431psの3L、直6ツインターボ!
■おススメは600万円前後、走行3万km台~4万km台
先代のF80型M3セダン(2014~2020年)。2017年5月に上級モデルのM3コンペティションがラインナップに加わり、2018年2月にはサーキット仕様のM3 CSが30台限定で販売された
可変バルブタイミング&リフト機構を搭載した3L、直6直噴ツインターボエンジンが最高出力431ps/56.1kgmを発揮する
F80型M3セダンの中古車情報はこちら!
お次は「M3セダン」である。2021年1月に大きなキドニーグリルをフロントに設けた新型M3セダンが発売されたわけだが、その中古車はさすがにまだ皆無であり、あったとしても高くて(筆者には)買えるはずもないため、さくっと省略して「先代M3セダン」について考えてみよう。
F30型BMW3シリーズセダンをベースとする先代M3セダンが日本に上陸したのは2014年2月。搭載エンジンは可変バルブタイミング&リフト機構を搭載した最高出力431psの3L、直6直噴ツインターボで、シリンダーブロックには高剛性のクローズドデッキ構造を採用。高いねじり剛性と軽さを併せ持つ鍛造のクランクシャフトも採用されている。
トランスミッションは、7速DCTである「M DCTドライブロジック」と6MTの2種類を用意。走りに関しては、左右後輪のロッキングファクターを0%から100%まで調整できる「アクティブMディファレンシャル」や、パワーステアリングのアシスト量を3段階に調整可能な「Mサーボトロニック」などを採用。さらにオプションとしてカーボンセラミックブレーキも用意された。
またこのほか、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を使った徹底的な軽量化などについても書いていけばきりがないのだが、2017年5月にはマイナーチェンジを行い、ハーマンカードンのサラウンド・サウンド・システムとカーボンファイバー・トリムが標準装備となった。
このタイミングで、よりスポーティに仕立てられた「M3コンペティション」を追加設定。M3コンペティションは、3L、直6ターボの最高出力が450psとなり、足回りにはダンパーとスタビライザーに専用チューンを施された「アダプティブMサスペンション」を採用。
さらに専用の「Mスポーツ・エキゾースト・システム」が採用されたことで、より官能的なエンジンサウンドを奏でられる一台にもなっている。
そして2018年2月には、コンペティションより10ps増しとなる460psの直6ターボを搭載したうえで軽量化した「M3 CS」を30台限定で発売……というのが、現役時代のM3セダンの大まかな流れだ。
先代M3の中古車は今どうなっているかというと、流通量は全国で約60台をやや少なめ。後述する同時期の「M4クーペ」半数以下だ。
そしてモデル全体の相場は490万~1200万円。ただしこれは希少なCSや後期コンペティションも含んだ形の相場。ベーシックなM3セダンだけで見た場合の中古車相場は490万~800万円といったところだ。
そのなかでも中古車としてのバランスが良いと考えられるのは(モノが悪くなく、それでいて中古車らしい買い得感が感じられる値段であるのは)、「車両600万円前後、走行3万km台か4万km台」といったニュアンスの物件か。
この価格帯だとどうしてもマイナーチェンジ前の前期型になるわけだが、普通に乗る分には特に後期型にこだわる必要もない。「コンディションの良い前期型が、まあまあ手頃な値段(500万円後半あたり)で見つかればそれで十分」というノリで探すのが正解となるだろう。
なお、先代M3セダンには7速DCTだけでなく6MTも設定されてはいたが、その中古車は超希少というか、ほぼ皆無である。
F82型M4クーペ/流通台数は先代M3の約2倍の約130台と多い
■おススメは500万円前後、走行3万km台~4万km台のM4 クーペ M DCT
E92型M3クーペの後継モデルとして登場したM4クーペ(2014~2020年)
エンジンはF90型M3セダンと同じ3L、直6ツインターボを搭載。最高出力は431ps/56.1kgm
F82型M4クーペの中古車情報はこちら!
では最後に、一番人気と思われる「M4クーペ」について考えてみよう。といっても、2021年1月に発売された現行型の中古車はまだ0台であるため、考えてみるのは「先代M4クーペ」についてだ。
先代BMW M4クーペは、F32型4シリーズ(要するに先代BMW 4シリーズクーペ)をベースに作られたハイパフォーマンスクーペ。日本に導入されたタイミングは先述した先代M3セダンと同じ2014年2月で、パワートレインも先代M3セダンと同じ最高出力431psの3L直6直噴ツインターボ+7速 M DCTドライブロジックまたは6MTだ。
その後のマイナーチェンジ等においても先代M4クーペは先代M3セダンとほぼ同じ道をたどった。すなわち、2017年5月にマイナーチェンジを受けるとともに「M4コンペティション」が追加され、その後に軽量ハイパワーの「M4 CS」が60台限定で発売され……といった具合である。主な違いはCSの発売時期と、M4コンペティションには2017年8月に6MT版も追加された程度だろうか。
ちなみに先代M4クーペと先代M3セダンは、ボディタイプは違うが、前後の軸重も含めて車両重量はほぼ同じ。それゆえドライブフィールもほぼ同じなので(まあレーサーが運転すれば超微妙な違いも感知するのかもしれないが)、どちらを選ぶかは「デザイン的な好み」で決めるのが一番だろう。
そして先代BMW M4クーペの中古車事情はどうなっているかといえば、まず流通量は、前述したとおり先代M3セダンの約2倍となる全国約130台。この種の車=輸入ハイパフォーマンスクーペとしては「多い」と評せる台数だ。
気になる価格は、モデル全体としては400万~1800万円といったところ。ただし上限である1800万円付近の個体は、先ほど書き忘れた30台のみの特別限定車「M4 GTS(最高出力500ps!)」であるため、筆者のようなド庶民にはあまり関係がない。
また1000万円以上の個体も「エディション ヘリテージ」や「DTM Champion Edition」などの希少で高価な限定車である場合が多いため、これまたあまり関係がない。
しかし逆に400万円ほどの底値物件はけっこうな過走行車だったりもするため、こちらはあまり食指が動かない。
あくまで中古車として見た場合に好バランスなのは、ズバリ「車両価格500万円前後、走行3万km台か4万km台」のM4 クーペ M DCTドライブロジックだ。
さすがに新車のM4クーペと比べてしまうと、ハードウェアの面で見劣りする部分はある。だがまだまだ現役感は十分なこのクルマで、過給器付きエンジンとしては異例の7300rpmで431psの最高出力を発揮するBMW製直6ユニットならではの快感を、安全に留意しながらしみじみと味わうのはかなり素敵な行為である。
M4クーペだけでなくM3セダンもM2クーペも、中古車であっても決して安い買い物ではない。
しかし「BMW M社の手による珠玉のガソリン直列6気筒を味わうため」と考えるなら、つまり「ある種の世界遺産を手に入れるため」と考えるなら、決して高すぎるとは言えないはずなのだ。
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