全国軽自動車協会連合会 (全軽自協)がまとめている、軽自動車の販売台数ランキングが発表されたが、ホンダ「N-WGN」は2月:1万1121台、3月:1万271台という結果となった。
3月の軽自動車の販売台数では7位で、軽ハイトワゴンのライバルであるスズキ「ワゴンR」にも勝っている。
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電動パーキングブレーキ問題で出遅れたものの、このご時世で1万台以上と健闘しているN-WGN。
他社ライバルだけでなく、強力な新型「フィット」や王者「N-BOX」といった身内のライバルを向こうに回しても売れてる要因、そしてホンダが抱える課題について、自動車評論家の渡辺陽一郎氏が考察する。
文/渡辺陽一郎
写真/編集部、HONDA
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■電動パーキングブレーキ問題の出遅れ挽回を急ぐN-WGN
国内販売の1位は、2017年以降一環してホンダ「N-BOX」となっている。しかし直近の状況を見ると、同じホンダの「N-WGN」も増えた。2020年2月には1万1121台、3月には1万271台を届け出している。N-BOXと違って2万台前後には達しないが、売れ行きは好調だ。
丸目を基調としたフロントマスクで落ち着いた雰囲気に仕上げたN-WGN。運転席、後席ともに視界は広く、メーターパネルも視認性がよい
今は新型コロナウイルスの影響もあり、クルマの売れ行きが下がっている。2020年1~3月の販売統計を見ると、前年に比べて10%前後は少ない。このなかで1万台を超えたのは注目される。
N-WGNの販売台数を見る時に注意したいのは、発売直後に納車が滞ったことだ。2019年7月に発表され、納車を伴う発売は8月だったが、この直後に電動パーキングブレーキの不具合が発覚した。
その対応に手間取り、2019年中は、新型N-WGNがほとんど売られなかった。ホンダカーズ(ホンダの販売店)も「N-WGNは売れ筋車種だが、納期がわからない生産中止の状態が続いていた」と述べている。
そして電動パーキングブレーキの対策が済み、溜めていた受注の納車を開始できたのが2020年1月以降だった。従って過去数カ月にわたるN-WGNの届け出台数を見ると、2019年12月は74台(これは先代型の在庫の可能性が高い)、2020年1月は納車が開始されて3372台に増え、2月は前述の1万1121台、3月は1万271台だ。つまり今のN-WGNは、溜まっていた受注を大急ぎで納車している状態になる。
N-WGNの納期をホンダカーズに尋ねると「すべてのグレードで約3カ月を要する。2020年4月中旬時点の契約で、納車は7月下旬だろう」という。軽自動車としては納期が長めだが、極端ではない。ただし新型コロナウイルスの影響もあるから、確定的ではない。
■N-WGNの強みとライバルとの選り分け
N-WGNの商品力は、客観的に見ると軽自動車のなかではかなり高い。エンジンやプラットフォームはN-BOXと共通だが、N-WGNは全高が100mm以上低く、車両重量も40kgほど軽い。そのために動力性能と走行安定性はN-BOX以上に向上した。
WLTCモード燃費も優れ、N-WGNで売れ筋になる2WDのノーマルエンジン車は23.2km/Lだ。N-BOXは21.8km/Lだから、N-WGNの数値は約6%勝る。
N-WGNは内装も上質で、後席の下には、傘などが収まるワイドなトレイを装着した。このトレイがあるために、後席のシートアレンジは乏しいが、複雑な機能がないから座り心地はボリューム感が伴って快適だ。
ラゲッジは付属のボードにより上下2段に分けられていて、積み荷の大きさ、種類などにより多彩なアレンジが可能
荷室は上下2段に分けられ、後席を前側に倒すとフラットで広い空間になる。さまざまな工夫を凝らして使い勝手を高めた。
衝突被害軽減ブレーキも充実しており、歩行者とクルマに加えて自転車も検知する。車間距離を自動制御できるクルーズコントロールは、N-BOXでは走行速度が25km/h未満まで下がるとキャンセルされるが、N-WGNは全車速追従型に進化した。N-WGNのパーキングブレーキは前述の電動式だから、追従停車が長引いた時は、パーキングブレーキを自動的に作動させて止まり続けられる。
このようにN-WGNは高機能だ。従ってN-BOXが欲しいと思った時も、まずはN-WGNを検討するとよい。検討した結果、N-WGNでは天井の高さが足りないとか、スライドドアが欲しいと思った時に、選択の範囲をN-BOXまで広げると合理的だ。
スライドドアは採用しなかったが、N-WGNはドアの開口部が広く、ドアも大きく開くので、子どもやお年寄りにとっても優しい設計がされている。スライドドアが欲しければ、N-BOXという選択肢になる
■N-BOXとの住み分けに成功したN-WGN ホンダの軽比率は55%に
それでも今後、N-WGNの販売台数がN-BOXを抜くことはない。ホンダカーズでは「N-BOXは今では軽自動車の定番になり、ほかの車種を比較検討しないで購入するお客様が多い」という。
スズキの販売店からは「ワゴンRと競争するホンダ車は、機能的にはN-WGNだが、お客様が比べる相手はN-BOXだ。SUV風のハスラーまで、N-BOXと比較される」という声が聞かれる。今ではN-BOXが軽自動車の絶対王者になり、広い荷室やスライドドアを必要としないユーザーも選ぶようになった。
このほか価格設定もあるだろう。「N-WGN L・ホンダセンシング」は136万4000円、「N-BOX G・L ホンダセンシング」は154万3300円だ。N-BOXは約18万円高いが、左側のスライドドアに電動開閉機能を装着するなど装備も充実する。そうなると「18万円の差額なら、車内が広く、装備も充実するN-BOXが魅力的」という見方も成り立つ。
この判断には、残価設定ローンも影響を与えている。N-WGN・L ホンダセンシングで60回(5年間)/均等払いの残価設定ローンを組むと、月々の返済額は2万4800円だ。N-BOX G・L ホンダセンシングは、同じ条件で月々の返済額が2万8000円になる。「月々3200円の上乗せで済むなら、N-WGNではなくN-BOXが欲しい」と考えるユーザーは多い。
ホンダカーズでは「今は新車を買うお客様の約半数が残クレ(残価設定ローン)を使う」とコメントしている。残価設定ローンは、車種やグレードの上級化を促すのに都合がよく、メーカーは低金利なども設定して利用者を増やしている。軽自動車では高額なN-BOXが好調に売れる背景には、残価設定ローンの普及もあるわけだ。
そのいっぽうでN-WGNでは、価格が最も安い「G・ホンダセンシング」が129万8000円だ。130万円を下まわる価格なら法人も購入しやすい。このようにN-WGNとN-BOXは、互いに競争する関係にありながら、異なるニーズにも応えてホンダの軽自動車販売を拡大させている。
この影響で、ホンダ車の軽自動車比率は以前に比べて増加した。2020年2月には、国内でホンダが販売した新車の55%が軽自動車だ。3月は少し減ったが49%に達する。
ちなみに2009年(暦年)におけるホンダ車の国内販売状況を見ると、総台数が62万5443台で、軽自動車は16万2149台(総台数に占める比率は26%)、小型/普通車は46万3294台(74%)であった。
2019年は総台数が72万2003台だから、10年前に比べて10万台近く増えた。特に軽自動車は36万4832台(51%)だから、10年前の2.2倍だ。その代わり小型/普通車は35万7171台(49%)だから、10年前に比べて10万台以上も減った。比率に換算すれば23%の減少になる。
■ホンダは軽自動車にばかり頼る戦略を転換すべき時期にきている
過去の経緯を振り返ると、2011年末に先代N-BOXが発売されてヒット作になり、先代N-WGN、N-ONEも加えてホンダの軽自動車ラインナップは大幅に強化された。2017年にはN-BOXがフルモデルチェンジを受けて現行型になり、売れ行きを一層伸ばした。その結果、ホンダ車の販売総数は10年前に比べて約10万台増加したが(比率に換算すると15%のプラス)、増えたのは軽自動車で、小型/普通車は10万台以上減ってしまった(23%のマイナス)。
今のように軽自動車が好調に売れると、販売力もそこに集中するから、どうしても小型/普通車の販売促進には力が入りにくい。メーカーも費用対効果を考えると、小型/普通車に積極的になれない。そうなると小型/普通車はさらに落ち込み、ますます軽自動車が中心になっていく。
ユーザーのホンダに対するブランドイメージも変わった。中高年齢層には今でもスポーティカーの記憶が残るが、今年25歳になる1995年生まれの若年層はどうだろう。生まれた翌年に初代ステップワゴンが発売され、6歳になった2001年に初代フィットが登場した。16歳の2011年に初代N-BOXというパターンだから、ホンダはコンパクトで合理的なクルマを造るメーカーだ。ブランドイメージが変わり、ホンダの高価格車は、今後ますます売りにくくなる。
新型フィットは絶好調だが、N-BOXやN-WGNといった軽自動車頼みとなっているホンダの販売。近年はホンダでは高価格車がすっかり影が薄くなってしまった
海外市場とのバランスもある。ホンダの国内販売は、前述のように拡大傾向にあり、今の国内メーカー別販売ランキング順位はトヨタに次ぐ2位となった。それでも2019年におけるホンダの世界生産台数に占める国内販売比率は14%だから、国内市場の優先順位は高くない。
ホンダのブランドイメージの変化も含めて、今の状態が続くと「国内市場は軽自動車とフィットなどのコンパクトカーに任せておけばよい」という判断になりかねない。
軽自動車比率が37%前後に達した国内市場全体にも当てはまる話だが、健全な商品開発をするには、ホンダは軽自動車の国内販売比率を10年前と同様の25%前後に引き下げる必要がある。魅力的な小型/普通車を投入して、販売バランスを最適化すべきだ。
仮に軽自動車比率が今後も増え続けると、軽自動車のさらなる増税も招く。公共交通機関が未発達な地域では、高齢者が毎日の移動に軽自動車を使っているので、福祉にも反する。自動車税金大国の日本では、軽自動車には福祉車両の側面もあるから、好調に売れるカテゴリーなのにデリケートに扱う必要もあるわけだ。ホンダに限らず、軽自動車を守るために、小型/普通車に力を入れて欲しい。
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みんなのコメント
なら、軽自動車比率を「25」%としたのか、その根拠も上げてほしい。一皮剥くと主観でしゃべってるように見える。
それに、
ホンダの軽における最大の課題は利益率が低いというのが挙げられるはず。
アクティトラックなど、他メーカーより高額なのに、売っても利益が出ず、次期型開発を断念したという記事を読んだことがある。
こうした内容を課題としては挙げるべきでしょう。
同氏の挙げている課題は何もホンダに限ったことではない。
ウィリアムズホンダ マクラーレンホンダ NSR500
RVF750をから入った世代から見ると、ホンダには落胆しかない。
実用軽四輪メーカーになって、夢も魅力もすっかりなくなった。
経営のためなんでもちろん理解するが、クルマ屋さんは夢やロマンも創らないと。昔は造ってたのに。
NSX?夢はあるが希望はないよ。