近年、ナンバープレートの分類番号(地名のとなりに記載)は3桁が主流になり、2桁は少なくなっている。2桁のクルマは、多くが20年以上所有され続けている場合が多い。20年以上もおなじクルマに乗り続ける理由とは? 第8回は“品川35”のランチア「テーマ・ステーションワゴン」を所有するオーナーをたずねたお話の前編。
目黒通りで偶然見かけたテーマ・ステーションワゴン
7月上旬の平日、目黒通りをクルマで走っているとき、1台のランチア「テーマ」が合流してきた。「品川35」のナンバーを持つ紺のステーションワゴンだった。
Vol.1 春日部33のブガッティ EB110 前編/後編
ランチアといえば、かつてはガレーヂ伊太利屋やオートザムが輸入していたものの、現在、正規輸入はされていない。あとで調べたところ、20年以上、正規の輸入販売はおこなわれていないという。
「2桁のテーマとは珍しい。オウナーに連載への出演を打診出来ないだろうか……」
筆者は、ひたすら紺のテーマを追いかけた。が、運悪く信号が赤にならない。思いのほかスムーズに道が流れているので、声がなかなかかけられなかった。結局、信号の変わり目にひっかかり、テーマはどこかへ行ってしまった。
が、そのテーマにはオウナーズ・クラブのものと思わしきステッカーが貼られていた。調べると、「Lancia Thema Owners Club」のものだった。早速、事務局に問い合わせたところ、返信が!
「クラブ員に確認いたしますので、少々お待ちください」と、記されていた。さらに「品川35のテーマ8.32のオウナーが取材可能とのことです」と、まさかの別提案もいただいた。せっかくなので、品川35のテーマ8.32も後日、取材することにした。まさか2台の2桁ナンバー・テーマに出合えるとは夢にも思わなかった。
Vol.7 横浜34のポルシェ 911 前編/後編
数日後、事務局から嬉しい連絡が! 「私のテーマ・ステーションワゴンかもしれない」と、会員からメールがあったという。連絡先を聴き、早速、オウナーに取材を申し込んだ。すると、「そんなに綺麗なテーマじゃないですけど……」と、申し訳なさそうに述べられたものの、取材OKになった。
3台乗り継いだパサートからテーマへ
取材先にあらわれたテーマ・ステーションワゴンは、あの日、目黒通りでみたクルマとおなじだった。
「このクルマを中古で購入したのは1997年頃です。1995年7月に新車登録された最終モデルですね。購入時の走行距離は約1万kmでした。価格は300万円ぐらいしたかね」
オウナーである崎野眞彰(さきのまさあき)さん(74)は、現役のフォトグラファーだ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、メキシコにわたり通信社で活躍。ジャングルのなかで3カ月間生活したこともあったというからすごい。
帰国後、出版界ではちょっとした“百科事典ブーム”が起こっていたそうで、海外での撮影に慣れていた崎野さんは、すぐに出版社からの要請でヨーロッパへ派遣された。
「2年間かけて、ヨーロッパ各国をまわりました。そのときの足はフィアット『124』でしたね。日本人としてはじめて、トゥールーズで超音速旅客機『コンコルド』を撮影したのが懐かしいですね」
日本に帰国後は自身の写真事務所を設立。広告を中心に、商品撮影から人物撮影まで幅広く手がけているという。
テーマは撮影の足として、普段から乗っているという。「最近は、自宅から数km離れた事務所への通勤として使うのがほとんどです。故障ですか? 所有して20年以上経ちますが、大きなトラブルは1回だけです。雨の日でも猛暑の日でも、気にせず乗っていますよ」と、話す。
テーマの前は、パサートに乗っていたという。初代は5ドア・ハッチバック、2台目と3台目はヴァリアントだった。
「1978年に初代パサートを購入しました。当時、『シロッコ』に乗っていた友人が『ヤナセのサーヴィスは優れているよ』と、話していたのでフォルクスワーゲンにしました。パサートを選んだのは、機材の運搬があるため、広い荷室を持つ5ドアハッチバックが設定されていたからです」
学生時代はスバル『360』やダットサン『フェアレディ1600』、日産『ローレル』などを乗り継いだという。
「ライカをはじめ、ドイツの工業製品に憧れていたのもフォルクスワーゲンを選んだ理由のひとつです。パサート購入後、三菱『シャリオ』も一時所有していましたが、結局はパサート1台に落ち着きましたね」
初代パサートでドイツ車、そしてフォルクスワーゲンの魅力を知った崎野さんは、その後も2代目、3代目のパサートを乗り継ぐ。2代目にいたっては、ヴァリアントの正規輸入がおこなわれていたなかったため、わざわざドイツから並行輸入で持ち込んだという。
パサートを3台も乗り継いだ崎野さんが、なぜ、テーマを購入することになったのか? 次週、報告する。
【2桁ナンバー物語 過去記事】
Vol.1 春日部33のブガッティ EB110 前編/後編
Vol.2 品川35のアルピナB8 4.6 リムジン 前編/後編
Vol.3 練馬34の日産 ステージア 前編/後編
Vol.4 八王子33のディーノ246GT 前編/後編
Vol.5 三重33のBMWアルピナ 3.0CSL B2S 前編/後編
Vol.6 横浜33のフェラーリ テスタロッサ 前編/後編
Vol.7 横浜34のポルシェ 911 前編/後編
文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
ただ毎回、なにかと鼻につくのがGQ編集部付けだか、ライターの稲垣邦康くんだね。
気張り過ぎ、背伸び感、美化して自己陶酔してるつもりが本物視点の目からは、ただの陳腐なナルシストにしか見えない。
リアルタイムでの肌での触感で知らないことも、ホントは知らず興味もなかったくせに「僕はその時代を知らないけど、これが噂の〇〇なのか。これは〇〇で〇〇なものと知ってたはいたが」とか知識だけ急いで調べて後出しでつける軽薄ぶり。
毎度思うよ。あのブルーツールドフランスの360モデナ見るたびに、いい加減そろそろ恥ずかしくないのかと。。