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「左足ブレーキ」なぜ普及しない? ペダル踏み間違いを防止する最善策とは

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「左足ブレーキ」なぜ普及しない? ペダル踏み間違いを防止する最善策とは

■ペダルの踏み間違いは、AT車が普及しはじめた頃から発生していた?

 近年、高齢者によるペダルの踏み間違いによる事故の報道が目立っています。しかし、AT車が普及しはじめた頃から、若者から高齢者まで年代を問わず頻繁に起きていた事故原因です。

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 一般的なペダル操作は、右足だけでおこなっていることから、踏み間違いを誘発していますが、なぜ左足を使わないのでしょうか。

 2010年、「エンジンをかけたらいきなり急発進した」、「ブレーキを踏んだが止まらなかった」と米国でトヨタの2世代目「プリウス」の急発進事故多発を捉えて、欠陥車説まで喧伝される大騒ぎに発展しました。

 しかしその後、米国運輸省の調査でペダルの踏み間違いによる人為的なミスだということが判明しています。同様の事故は、AT車の登場とともに発生し、繰り返されているのです。AT車の歴史は、そのままペダル踏み間違いによるヒューマンエラーの歴史といっても過言ではありません。

 2ペダルのイージードライブを実現したオートマティックトランスミッション(AT)を搭載した乗用車は、1940年代に米国で登場します。その後、1945年より米国でわずか5%だったAT車が急速に普及し、1965年には90%を占めるほどになります。

 それによって、3ペダル車のマニュアルトランスミッション(MT)車の運転で、変速操作に必須だったクラッチペダルが無くなり、クラッチの操作に専念していたドライバーの左足が解放されたのです。

 日本でも90年代にAT車が急速に普及します。基本的に2ペダルのレイアウトは、運転席に腰掛けた際の右足で操作しやすい右サイドに寄り、ブレーキペダルは正面に近い中央寄りにレイアウトされているのが一般的です。

 自動車教習教則本では、アクセルおよびブレーキペダルは「右足で踏む」とあり、ドライバーは「運転姿勢を安定させるため、左足はフットレストに置く」とされているのが一般的です。

 また、道路交通法でも、どの足でブレーキペダルを踏むかについて「法的根拠はない」としています。

 では、なぜ左足でのブレーキ操作が浸透しないのでしょうか。自動車教習所の元指導員は次のように話します。

「左足ブレーキのメリットは、まさに踏み間違いをしないことです。通常、右足だけでアクセルとブレーキを状況に応じて踏み変えていますが、その際の誤操作を防ぐことができます。

 しかし、現在運転免許を取得している人は『右足でのペダル操作』を教えられて、実際に街中を走っています。また、同様に市販されているクルマも右足で操作するためのレイアウトになっていることがほとんどです。

 そうすると、急に『左足でブレーキを操作する』と呼びかけたところで、実際はさらなる誤操作を招くことになりかねません。

 ほかの交通ルールなどでも周知や徹底、設備変更など時間が掛かるので、それが個体差のある操作方法になると、さまざまな検証や議論などが尽きません」

※ ※ ※

 このようにさまざまな理由によって、「左足ブレーキ」の普及が難しいようです。では、ペダルの踏み間違いには、どのような対策が考えられるのでしょうか。

■「左足ブレーキ」が難しいなら、踏み間違いの対策はどうする?

 2019年8月に発売されたホンダの軽自動車「N-WGN」などをはじめ、最近の新型車ではペダルの踏み間違いを考慮したペダルのレイアウトを採用しています。

 N-WGNでは、アクセルペダルとブレーキペダルを従来の位置より右側にレイアウト。右足首を内側にねじらずに、より自然な姿勢で操作ができるといいます。また、ブレーキペダルはかかとの位置がずれにくく、安心して踏める方式を採用しました。

 N-WGNの担当者は、次のように話します。

「クルマは、性別・体格・年齢が異なるあらゆる人が運転します。そのため、『自然な姿勢で踏めるペダル』を目指して新しいペダルレイアウトを採用しました。

 同時に、ハンドルの前後および上下位置や、シートの高さもかんたん調節できるようにすることで、自分の運転しやすいポジションに合わせられるよう工夫をしています」

※ ※ ※

 また、先進安全装備の面でも進化しています。国産自動車メーカーの多くでは、前走車、対向車、歩行者、自転車などを検知して、衝突回避を支援する「衝突被害軽減ブレーキ(通称:自動ブレーキ)」を採用するモデルが増えてきています。

 さらに、ペダルの踏み間違いに対する対策として、不注意による前後の急発進を防止して注意喚起する「誤発進抑制機能/後方誤発進抑制機能」を採用するモデルも続々と登場するなど、クルマ側の機能でカバーする働きもあります。

 完全な自動運転社会が到来するまで、人が運転する以上はヒューマンエラーをゼロにすることは難しいですが、交通ルール、クルマ側の性能など社会全体で、事故を減らすことはできるのです。

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