人員輸送や厳戒態勢で活躍するための工夫
自衛隊といえば、国の防衛や自然災害での人命救助や復興活動など、日本国民の生命と財産を守ってくれる大切な存在。高速道路でも自衛隊の車両を見かけることができますが、大阪オートメッセ2019では「87式偵察警戒車(通称RCV)」や「軽装甲機動車(通称LAV)」など、普段はお目にかかれない特捜車両が展示された。
なかでも最も身近な存在といえるのが『73式小型トラック』。ベースは、三菱自動車工業が販売する「パジェロ(2代目・Jトップ)」というおなじみの車種なのだが、市販車とは主にどこが違うんだろう。会場にて自衛隊大阪地方協力本部の岡田所長に話を伺った。
そもそも73式小型トラックとは、名の通り”73年”(昭和48年)に導入された小型軍用車両。展示されていたのは、三菱・ジープに続いて96年(平成8年)より配備された2代目で、”73式小型トラック”の呼称はそのまま継承されている(平成13年導入分より1/2tトラックへ名称変更)。
「主に少人数での人員輸送や演習などで活躍しています。先代の三菱・ジープは、マニュアルミッション(4速)でしたが、パジェロからはオートマに変更。自衛隊向けの4輪駆動車も昔と比べて随分と乗りやすくなってますね。ちなみに、我々は”パジェロ”と車名で呼んでいます」とは岡田所長。
ボデイサイズは、全長4140mm/全幅1765mm/全高1970mmと、悪路走破性を考慮して市販パジェロより車高をアップ。その他にヘッドライトやテールランプといった灯火類、前後バンパーやフェンダー、ドアノブといった細かいパートも専用品へと変更されている。幌は、左右に小型スクリーンを2つ設けており、リア側はジッパーで開閉できるようになっていた。
「乗車定員は、前席2名と後席4名の合計6人乗り(荷台にある最後席は対面式)。幌やシートを外せば機銃を搭載することも可能で、訓練や作戦行動時では迅速に車内レイアウトが変更できるのも特徴です。隊員の人員輸送だけでなく、指揮や連絡用でも活躍してくれています」。
他にも外装では予備燃料が入った携行缶を置くスペース、左前方と右後方には無線機をセットするためのポケットが設けられていた。ちなみに車検や整備について聞くと、それぞれの基地内に配備された整備士が行なっているそうだ。
ドア内側に大きな空間がある理由
さて、内装はどこが異なるのか。前述のように変速機は、ロックアップ機構を省いた4速ATとなり、デフロック可能なフルタイム4WD機構を装備。走行シーンにあわせて調整することで、山道や不整地を走行することの多い自衛隊車両で大きな武器となっている。また、電装系は市販モデル12Vに対して、73式は24V仕様。ダッシュボードの形状こそ似ているが、自衛隊車両ならではの装備もある。
「運転席まわりで市販車とちがう点で言えば、ステアリングの右下にあるロータリースイッチですね。ブレーキランプやヘッドライトといった灯火類を管制(コントロール)するもので、街中を走るときは道交法に厳守し、厳戒体制では明るさや点灯方法を変えるなど、状況に応じて切り替えするようにしてます」。
また、マニュアルながらもエアコンが装備されたのも2代目の73式から。エアコン操作パネルの下には、災害時などの情報収集を行うためのAM/FMラジオをはじめ、ETC車載器も完備されていた。内張りのないオリーブドラブ色に染められた空間がスパルタンさを物語っているものの、あまり特別感は感じられない。
「あとは市販車と異なるのは、内張りが取り外されたドアですね。左右のドア内側には、小銃を固定するための大きなポケットが備わり、そこには取り付け具をセットしています。パワーウインドウを取り外し、横方向にスライド開閉する構造としたのも空間を確保するためのだと思いますよ」。
他にもロールバーや専用シートカバーなどを装備し、隊員たちの足となって活躍する73式小型トラック。車重は市販モデルより約200kg増の1.94t、最高速度は135km/hと記載されていた。もし、街中などで見かけることがあったならば、市販車との違いをじっくりと観察してみるといいだろう(運転中はダメですよ)。
最後に、大阪オートメッセでは車両展示にくわえ、子供たちに向けた制服試着体験や、災害時に役立つライフハックの実演を実施。イベントを通じて、自衛隊を身近に感じてもらおうという試みが行なわれていた。こういったイベントは、今回の大阪地方協力本部をはじめ、ホームページで各地のイベント情報を公開しているのでチェックしてほしい。
(ちんサブ)
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