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もはや生存車なし!? 絶滅危惧車「シャレード・デ・トマソ」を探せ!

掲載 更新 83
もはや生存車なし!? 絶滅危惧車「シャレード・デ・トマソ」を探せ!

 ダイハツがかつて販売していたコンパクトカー、シャレードをご存じだろうか? 1977年に初代が誕生し、2000年5月に販売終了となるまで、4代23年にわたって愛されてきた。

 そのなかで、クルマ好きの若者を虜にした1台のシャレードがある。1984年1月に設定されたシャレード・デ・トマソターボである。

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 当時、パンテーラというスーパーを生み出したスポーツカーメーカーの名を冠したクルマが、なぜダイハツから出るのかと驚いた人も多かったのではないだろうか。

 シャレード・デ・トマソターボは、デ・トマソ社とダイハツがコラボして生まれた日伊合作車で、レッドとブラックの2トーンカラーのボディに、CHARADE DE TOMASOのデカールが貼られ、ゴールドのカンパニョーロ製マグネシウム合金ホイールを装着したボーイズレーサーである。

 しかし、発売から36年経った今、シャレード・デ・トマソターボは、中古車市場にほとんど流通していないという話を聞いた。

 そこで日本に生存しているのか、中古車市場を調査するとともに、シャレード・デ・トマソを所有しているオーナーさんがいないか、徹底調査した!

文/野里卓也
写真/ダイハツ 

【画像ギャラリー】日本に現存するのか? 貴重なシャレード・デ・トマソを写真でチェック!

シャレード・デ・トマソってどんなクルマ?

1984年1月に発売されたシャレード・デ・トマソターボ

MOMO製本革ステアリングやバケットシートを装着し、エクステリアと同じくレッド/ブラックのツートンカラーとした、イタリアンテイスト溢れる内装

 きっかけは、本企画担当者が懇意にしているダイハツ関係者のA氏と話した時だったという。

 「ここ数年、初代シャレード・デ・トマソを購入しようと中古車検索サイトで探しているけれど、なかなか見つからない。かろうじて2代目は売っているけれど、初代のデ・トマソはゼロ。日本に現存しているのだろうか?」。

 それを聞いた本企画担当者が私に指令を出した。「シャレード・デ・トマソが日本に生存しているのか、中古車やオーナーさんを探してほしい」と。

 指令を受け、さっそくインターネットの中古車検索サイトを探してみたら、確かに2代目シャレード・デ・トマソはヒットする。

 それでも数台と圧倒的に少ないが、初代はいくら探してもゼロ。そのほか旧車が多い「エンスーの杜」、「セイヤー」などのサイトを見ても皆無だった。これはオーナーを探すしかないのか……。

 と、その前にシャレードおよびシャレード・デ・トマソを知らない人が多いと思うので、どんなクルマだったのか、足跡を辿っていこう。

 1977年に登場した初代シャレードはそれまでラインナップしていたコンソルテの後継車としてデビュー。

 ダイハツのエポックメイキングなモデルで、当時は2ボックスというスタイル、今のコンパクトカーとも言うべきジャンルだが、5人乗り乗車でもゆとりのある居住スペースを確保していた。

 さらに当時、世界初という触れ込みの1L、4サイクルの3気筒のエンジンを搭載。このガソリンエンジンは19km/L(10モード燃費、当時)という低燃費を謳っており、パッケージの良さと燃費の良さで高い評価を得ていた。

 1978年には日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞した、由緒あるモデルでもある。

 今度はデ・トマソについて。そもそもデ・トマソとはアルゼンチン生まれのレーシングドライバーとして活躍したアレッサンドロ・デ・トマソという人物で、1959年にイタリアで「デ・トマソ社」を設立。

1971年、デ・トマソ社とフォード社とのコラボレーションによって生まれたパンテーラ。写真は350ps/50.0kgmを発生するデ・トマソ・パンテーラGTS

 そこでレーシングカーやスポーツカーの開発・製作を始めた。これまで送り出したモデルだと、レーシングコンストラクターのジャンパオロ・ダラーラが設計したモノコックボディにフォードの5.8L、V8エンジンをミドシップに搭載したパンテーラが挙げられる。

 それ以前にマングスタやヴァレルンガというモデルがあるが、筆頭はやはりパンテーラだろう。

 そして1983年1月にシャレードは2代目にモデルチェンジし、初代のコンセプトはそのまま受け継がれ、エンジンも1L、3気筒のガソリンNAから高出力のターボモデルを搭載したほか、当時、世界最小排気量の1Lディーゼルエンジン車を追加。

 さらに、1984年10月にはターボモデルを国際ラリー規格であるグループBに合わせて排気量を993ccから926ccへとダウンサイジングしたホモロゲーションモデル、シャレード926ターボを200台限定で発売。

レッド/ブラックのツートンボディでまるで、パンテーラGTSを連想させる

 さて、本命のシャレード・デ・トマソターボは、2代目シャレードが発売された翌年の1984年1月に追加された。

 実はこのデ・トマソターボが発売される前の1981年の東京モーターショーにシャレード デ・トマソが参考出品され、評判は上々だったが、市販化にはいたらなかった。

 誕生した背景は1981年当時、デ・トマソ氏が代表を務めていたヌオバ・イノチェンティ社との業務提携で、同社へダイハツがエンジンを供給していたことに起因する。

 というのも、イノチェンティ社のイノチェンティ・ミニにはシャレードの1Lエンジンが搭載されたモデルもあり、1983年にはダイハツがグループ会社を通じて日本でも同モデルの輸入販売を始めるなど、イノチェンティとの結びつきはかなり深くなってきていたからだ。

 そんな協力関係が縁でデ・トマソ氏がシャレードのターボモデルをベースにエクステリアからインテリアまでプロデュースした車両がシャレード・デ・トマソ、正式名称はシャレード・デ・トマソターボなのだ。

 専用のエアロパーツが装着されたレッド/ブラックが眩しいツートンカラーのボディには「CHARADE DE TOMASO」というデカールが誇らしげに入り、ゴールドカラーのマグネシウム合金のカンパニョーロ製ホイール+ピレリP8タイヤで足元をキメていた。

 インテリアはMOMO製の3本スポークステアリングが装着され、レッド/ブラックツートンの専用バケットシートが装着されていた。

 今でいうと、規模は違うがGRスープラのような、メーカーの垣根を越えたコラボレーションモデルだった。

1985年2月のマイナーチェンジでフロントマスクおよびリア回りのデザインを一新、フラッシュサーフェスフォルムを採用

■歴代シャレード デ・トマソ年表
●1981年10月/第24回東京モーターショーに初代シャレードをベースにした「シャレード・デ・トマソターボ」を参考出品
●1983年10月/第25回東京モーターショーでも「シャレード・デ・トマソターボ」を参考出品
●1984年1月/東京モーターショーに参考出品した「シャレード・デ・トマソターボ」(初代デ・トマソ)を発売
●1985年2月/「シャレード・デ・トマソターボ」マイナーチェンジ
●同年6月/「シャレード・デ・トマソ・ビアンカ」を限定600台で発売
●同年10月/第26回東京モーターショーに2代目シャレードをベースにミドシップに改造したプロトタイプカー「シャレード・デ・トマソ926R」を参考出品
●1986年9月/「シャレード・デ・トマソリミテッド」を限定300台で発売
●1987年10月/第27回東京モーターショーに3代目シャレードをベースにした「シャレード・デ・トマソ」を参考出品
●1993年8月/「シャレード・デ・トマソ」(2代目デ・トマソ)を発売
●1994年8月/「シャレード・デ・トマソ・ビアンカ」を限定200台で発売

シャレード・デ・トマソオーナーを発見!

ケンズィさんが所有する初代シャレード・デ・トマソターボ。実はこの車両、某イベントにて貸し出して展示されていたこともあるという。ラジオアンテナとマーシャルのフォグランプはオーナーによって変更されている

エクステリアはフロントからサイド、リアまで一体となったエアロパーツを装着

 さて、本題に戻ろう。1週間粘り強く探してみた結果、なんと九州地方に住むシャレード・デ・トマソオーナーを発見! 

 ようやく探し当てた初代シャレード デ・トマソターボのオーナーがケンズィさんだ。さっそく、購入の経緯などを聞いてみた。

 「親戚づきあいで親父がダイハツ車を乗り継いでいたこともあり、知らず知らずのうちにダイハツ贔屓になっていました。

 中学生だった当時、CMを見たことがきっかけで2代目シャレードが好きになり(今でも欲しい)、後から登場したデ・トマソターボのトータルコーディネートされたスタイルに恋をしました。

 免許を取得してしばらくは、新車を乗り継いでいましたが、ここ何年か魅力的なクルマが発売されないので、だんだん昔から欲しかったクルマに目がいくようになりました。そう、初代シャレード・デ・トマソです。

 そんな折、たまたま近所に動態保存中のオーナーを見つけ、とりあえず見たいとアポを入れたのです。外観はボロかったのですが、機関はシッカリしていたので譲って欲しいと……。オーナーにもその熱い思いが伝わり、2017年にデ・トマソターボを購入することができました。長年の夢がかないました」。

 ケンズィさんの熱い思いが伝わってよかったですね。ちなみに純正部品がほぼないので、他車の部品を流用しながら大事に乗っているそうです。いつまでも大事にして欲しいですね!

インパネ上部の4連メーターとコンソール下には2DINサイズのカーAVをインストールするためオーナーに手によって自作されている。また、ピラーにはFRPでカバーを製作、ついでにツィーターを埋め込んで、リアスピーカーも変更が加えられている

80ps/12.0kgmを発生する993cc、直3ターボエンジン。オーナーの手によってタワーバーが装着されプラグコードも変更。実は経年でブレーキマスターバックが故障となり、現在は他社の軽自動車用マスターバックとシリンダーを合体(ニコイチ)にして流用しているという

■オーナー紹介
●氏名:ケンズィさん
●年齢/職業:50歳/会社員
●年式:1984年式
●購入金額/購入した年:ヒミツ/中古で2017年購入
●購入動機:少年の頃からずっと好きだった前期デ・トマソ。残っていることが奇跡? それをたまたま同一県内で発見できたので、これを逃せば二度とチャンスは巡ってこないと譲渡を頼み込みました
●維持費用:年間20万円くらい?(内訳は燃料や消耗品や税金に車検など)
●愛車の魅力:クルマとして過不足の無い丁度いいバランス
●購入時に考えたライバル車は?:なし
●愛車の○と×:○/よく走るし疲れない。コンパクトなのに充分過ぎる室内スペース!加えて硬すぎず柔すぎずストロークも充分なサスペンション!軽いボディと望むに充分なパワーとトルク! すべてが必要充分で、運転していて一切のストレスを感じない。×/特になし
●所有して困っていること。パーツの問題など:特にないけど、できればドナーが欲しいです(笑)

白いデ・トマソ・ビアンカを知っているか?

びあんかさんが所有するシャレード・デ・トマソ・ビアンカは購入してから35年、走行距離は42万km! ボディカラーはホワイトとシルバーメタリックのツートンカラーだが、バンパーを含めたエアロパーツとホイールはシルバーメタリックで統一

 さて、今度はもっとレアなデ・トマソを紹介しよう。1985年6月に600台限定で発売された、シャレード デ・トマソターボ・ビアンカだ。

 イタリア語で“白”を意味するビアンカのとおり、白を基調としており、ボディカラーはホワイトとシルバーメタリックのツートン塗装が専用色となっている。

 もちろんデ・トマソターボ同様に内外装は特別な装備が与えられており、個性溢れる仕様となっているのだ。

 このデ・トマソ・ビアンカのオーナーさんも見つかった。前出のケンズィさんに紹介してもらったのだ。

 びあんかさんは、このデ・トマソ・ビアンカを購入してからなんと35年、42万kmも走行しているそうだ。

 前述のケンズィさんと同様にマスターバックを流用部品と替え発電機も交換と、部品の調達に苦労しながらもシャレードオーナーたちに助けられているという。

 今はエンジン不調で工場に入院中とのことだが、仲間達に支えながら復活を目指しているそうだ。シャレード・デ・トマソ愛には感服するばかりだ。

グリルやドアミラー、それにリアライセンスプレート回りはホワイトカラーとなっており、全体をホワイトとシルバーで統一

驚くなかれ! ビアンカは車内の天井内張りにイタリアの道路地図が描かれているのだ! DETOMASO本社の所在地まで描かれており、遊び心のある演出がなんともユニーク

■オーナー紹介
●氏名: びあんかさん
●年齢/職業:57歳/自動車教習所職員(教習指導員・技能検定員)
●年式:1985年式、G11-FMJT、デ・トマソ初の限定車 ビアンカ
●購入金額:新車で購入。車両本体価格130万円+エアコン(当時は後付け)+登録諸費用など
●購入動機:兵庫ダイハツ販売に入社。自社車両に乗り替える必要があったため、会社が薦める軽自動車やディーゼル車ではなく、ガソリンターボのデ・トマソを検討中に限定車が発売されることになり、いかついイメージを払拭した白とシルバーのツートンカラーが美しくショールームに入ってきたクルマにひと目惚れ
●維持費用:計りしれません……
●愛車の魅力:全国限定600台。内装の色合いもイタリアのこだわりも、嫌みがない。操作性も癖が無く扱いやすい。何より美しかった
●購入時に考えたライバル車は?:MR2(AW11)やカローラレビンGTV(AE86)が発売になった頃、試乗したけれど……
●愛車の○と×:自分にとっては全てが◎
●所有して困っていること:所有から35年、現在42万km。さすがにあちこち部品が寿命迎えています。2020年3月、ついにエンジン本体が静かに悲鳴をあげ停止、部品はすぐには見つからない状況です

 先に紹介したケンズィさんと「師匠」と呼ばれる方の力添えで、部品は現在調達中とのことでした。

■シャレード・デ・トマソターボ 1984年1月発売
●全長×全幅×全高:3600×1575×1390mm
●ホイールベース:2320mm
●トレッド(前/後):1340/1310mm 
●最小回転半径:4.4m
●車両重量:690kg 
●エンジン:水冷4サイクル直列3気筒SOHC
●総排気量:993cc 
●最高出力:80ps/5500rpm
●最大トルク:12.0kgm/3500rpm 
●10モード燃費:18.8km/L 
●タイヤサイズ(前/後):165/65R14 
●車両価格:122.4万円(大阪地区の販売価格/当時)

2代目シャレードは生存しているのか?

4代目シャレード(3代目シャレードには設定なし)に設定された2代目シャレード・デ・トマソ

 ここからは、1993年8月、4代目シャレードに設定されたシャレード デ・トマソ(シャレード・デ・トマソとしては2代目)を紹介しよう。

 先代シャレード・デ・トマソと同じようにデ・トマソ氏がセレクトしたこだわりのアイテムを装備し、「スポーティで楽しい小さな実力者」というコンセプトのもと、専用サスペンションや新設計の1.6L、直4を搭載と、当時最先端の技術や装備がふんだんに盛り込まれた仕様になっている。

 インテリアも先代のMOMO製からナルディ製のステアリングに変更され、RECARO製フロントシートを採用。メーターパネルもデ・トマソマーク入りとなり、インテリアカラーもレッドを基調としたカラーに統一されている。

 さて、2代目シャレードを中古車市場で探してみた。Gooやカーセンサーなどの中古車検索サイトで合計4台見つかった。

 1993年式、9.8万kmで38万円、1995年式、9.6万kmで69万円、1994年式、8.2万kmで50万円、1995年式、15.4万kmで39万円といった具合で、40万~70万円で流通していた。

上の写真をクリックすると2代目シャレード・デ・トマソの中古車情報が見られます!

 なんとか2代目シャレード・デ・トマソの中古車は見つかったが、やはり初代シャレード・デ・トマソは見つからなかった、残念……。

 本企画を見た方で、初代シャレードを持っていて売ってもいいというオーナーさんがいらっしゃいましたら、まずはご一報ください!

■2代目シャレード・デ・トマソ(4代目シャレードに設定)1993年8月発売
●全長×全幅×全高:3760×1650×1420mm
●ホイールベース:2395mm
●トレッド(前/後):1385/1390mm
●最小回転半径:4.5m
●車両重量:900kg(930kg、AT車)
●エンジン:水冷4サイクル直列4気筒SOHC
●総排気量:1589cc
●最高出力:125ps/6300rpm
●最大トルク:14.7kgm/4000rpm 
●10・15モード燃費:15.0km/L(13.0km/L、AT車)
●タイヤサイズ(前/後):185/60R14
●車両価格:129.8万円(139.3万円、AT車/当時)

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