この記事をまとめると
■40年以上前にデビューしたエブリイは海外ではいまだノックダウン生産されている
軽トラはダイハツ! 軽バンはスズキ! EVも出てきて激戦必至の「働く軽自動」のランキングが面白い
■1992年には大宇がダマスとして当時のエブリイを発売
■2008年からはシボレー・ダマスの車名で現在もウズベキスタンでは新車購入が可能
スズキ・エブリイは世界各国でノックダウン生産されていた
日本の軽自動車が世界各国で人気を博していること、ご存じの方も多いでしょう。日本独自のガラパゴス車両だなんていうのは昔の話で、コンパクトなサイズゆえの実用性や低燃費といったポイントに加え、丈夫で長もちというアドバンテージが高く評価されているのです。また、日本のメーカーが輸出するケースだけでなく、現地法人によるノックダウン生産や、現地メーカーのOEM車として売られることも少なくありません。
と聞けば、思い浮かぶのはスズキ一択! インドやイギリス、はたまた韓国やウズベキスタンなんて国でも走っていますからね。しかも、40年以上前にデビューしたエブリイをいまだに新車として販売している国があるなんて、ちょっとしたファンタジーではないでしょうか。
エブリイはご承知のとおりスズキの商用バンで、初代は1982年に登場しました(車名はキャリイバン・エブリイ)。この当時からスズキがインドに設立したマルチ・スズキ社でも「マルチバン」とか「オムニ」といった車名で、なんと2019年まで製造・販売されました。ちなみに、インドでの販売終了は現地の安全基準と環境基準が変更されたことが理由だそうです。
そして、1992年には韓国の大宇が2代目エブリイを「ダマス」として生産開始。同社は1937年の創業当時は「国産自動車」という社名でしたが、紆余曲折するなかでGMグループの傘下に入ったことも。
となると、同じくGMと親密な関係だったスズキ車をラインアップするのも当然の流れ。それどころか、本家GMもエブリイに目をつけて、世界戦略車に仕立てようと画策したのでした。
ふたり乗りのバン仕様からから7人乗りのワゴンまでを用意
なお、2代目エブリイは各国での生産が終わったかのように思われましたが、どっこいパキスタンでは現役バリバリ! 現地のスズキ子会社「パック・スズキ」が「ボラン」という車名で現在も生産を続けているのです。40年前に生まれた軽バンなのに、どんだけ活躍したら気が済むんだよって感じ(笑)。
さて、世界に羽ばたくスズキではありますが、GMもまたワールドワイドな商売人。1996年からウズベキスタンで出資していた「ウズオート」でも「作っちゃいなよ」とエブリイを導入したのでした。むろん、かの国でもダマスは大ヒットとなり、2008年からはついにシボレーブランドでの発売となりました。
フロントにはお馴染みのボウタイエンブレムが輝きつつ、ボディサイズは3845×1400×1920mmとほぼエブリイのまんま。ただし、排気量は800ccへと増強されたわりに最高速は100km/hという不思議スペック。車重590kgなのに、いささか腑に落ちませんよね。また、ふたり乗りのバン仕様と2+3+2シートのワゴン仕様が選べるとのこと。
インテリアに目を向ければ、古き良き昭和の香り漂うプラスチックてんこ盛り(笑)。樹脂感まる出しのシフトノブやレギュレーターハンドルなど、軽自動車はこうでなくっちゃと膝を叩くオールドファンもいらっしゃるかと。
なお、GMの商魂は逞しく、シボレーブランドのまま中央アメリカや北アフリカでも「CMP」という車名で現在でも製造・販売がなされています。この調子ならビートル並みの総生産台数(2152万9464台)を記録してもおかしくないのでしょうが、いかんせん世界中に広がりすぎて把握のしようもありません。
インドや韓国、ウズベキスタンといった国々のほかにもイギリスはベドフォード(ボクスホールの商用車ブランド)やインドネシアやベトナムだってスズキは現地生産していますからね。
ともあれ、40年前に生まれた日本の軽自動車がいまも形を変えることなく世界の道を走っているなんて、じつに誇らしく、またクルマ好きのロマンを誘うエピソードではありませんか!
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みんなのコメント
ダマス気満々。
ウズベキスタン大宇のダマスのコマーシャルに、新聞社が朝刊の配達にダマスを使っているものがある。重厚なクラシックをBGMに、刷り上がったばかりの朝刊を詰め込んで夜明け前の街に出て行くダマスの一団には、ワークホースとしての自動車の魅力が漲っている。それはまるで、人間の日々の営みの正しさを訴えるかのようでもある。痺れるほどに格好いい。
ダマス/ラボは数年前まで韓国でも造られていた。韓国GMにその気がないのなら、どこかが引き継がなきゃいけない存在だと思う。ラスカルがそうであるように。