トヨタのプレミアムブランドであるレクサスは、モデルチェンジが長くなる傾向にある。最上級車種のLSは、前型が11年目となる2017年に現行車へフルモデルチェンジした。
ただし前型は、2013年に内外装の造形を含めた大規模改良を行い、車体寸法まで変更している。
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小型ハッチバックのCTは9年、4ドアセダンのISは7年目の今年2020年、マイナーチェンジをし(11月販売開始予定)、これも大幅改良となっている。
SUVのLXも、2007年の発売(ただし、国内での販売は2015年)から13年が経った。
日本車のモデルチェンジサイクルが1990年代に比べると明らかに長くなっているが、その中でもレクサスのモデルチェンジサイクルが長いのは顕著だ。
なぜレクサスはモデルチェンジサイクルが長い傾向にあるのかについて、御堀直嗣氏が考察する。
文/御堀直嗣、写真/LEXUS、TOYOTA、NISSAN、MITSUBISHI、DAIHATSU、MERCEDES BENZ、BMW、ベストカー編集部
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レクサスブランドは北米をターゲットに誕生
2020年8月いっぱいでGSが生産終了となり、ISはGSのマーケットも担うべく、ビッグマイチェンを敢行。新型は2020年11月から販売開始予定
LSを例に過去を振り返ると、初代から2代目へは5年、2代目から3代目および3代目から前型へは、それぞれ6年でのモデルチェンジだった。前型から、急に長寿命になったといえそうだ。
背景のひとつとして考えられるのは、商品企画および開発の際の競合車種をどこに見るかが変化したのではないかと思う。
そもそもレクサスを立ち上げたのは米国市場であり、トヨタをはじめ日産やホンダも米国市場でインフィニティやアキュラを立ち上げた。
先代LSは2006年にデビュー(写真上)し、2013年にビッグマイチェン(写真下)で劇的に変わった。結果的に2017年まで11年間にわたり販売された
その理由は、重要な米国市場での拡販であった。米国では、無暗な販売店競争を抑えるため、販売店の出店に制約があるとされている。近い場所で同じメーカーの販売店同士が必要以上の安売り競争をしないためだろう。
1980年代以降、石油危機なども影響し、また品質や性能の向上もあって、米国市場での日本車需要が高まった。そこでさらなる拡販をするには販売店網を拡充する必要がある。
同じ地域内でいかに店を増やすかという答えのひとつが、別名でもうひとつのブランドを作ることであったはずだ。
また、1980年代後半から1990年代にかけては、国内のバブル経済も後押しとなり、高性能車やスポーツカーなど、高価格帯の車種が日本車でも誕生するようになる。
それらを別の販売店系列で売れば、既存の販売店での取り扱い車種を整理でき、選択と集中ができる。一石二鳥の戦略だ。
国内で、セルシオ、アリスト、アルテッツアとして販売している車種を、レクサスLS、GS、ISとして米国で売れば、トヨタ店で売る必要がなくなり、他の車種の販売に力を注ぐことができる。日産も、ホンダも、同様だ。
1989年にレクサス初の市販モデルである初代LSが登場。源流主義を謳い、徹底的にNVHを低減し、メルセデス、BMWを震撼とさせた
北米での成功を受けて欧州進出
こうして米国で成功したレクサスは、欧州や他の国でも販売するようになったとき、トヨタの目が競合車として欧州のドイツ車などを視野に入れはじめたのだと思う。
初代LSの最大の特徴は、際立つ静粛性を含めた乗り心地のよさであった。それが、次第に走行性能の向上を求めるようになっていった。
LSの競合となるドイツ車は何かといえば、メルセデスベンツSクラスだろう。歴代をみても、およそ7~8年で世代交代している。EクラスやCクラスもほぼ7年での世代交代だ。
新型メルセデスベンツSクラスは2020年9月に本国でフルモデルチェンジ。先代は2013年にデビューし改良を続けながら、2020年までの約7年間販売
BMWの7シリーズは、前型が6年だったが、その前は8年での世代交代である。アウディA8は初代が9年で、以後7~8年だ。
そのように、長い期間同じ車型を販売しながら、毎年のように品質や性能を進化させていくのが、ドイツ車全般の開発の姿勢といえるだろう。
このため、ドイツ車を購入するならフルモデルチェンジ直前の最終版を買うのが一番いいと、永年いわれている。
レクサスも、ドイツの競合を視野に、性能や品質を高め、競争力を上げていこうとしはじめたのではないか。
現行のBMW7シリーズは2015年にデビューだから2020年で5年となる。先代モデルは2009~2015年という比較的短いモデルチェンジサイクルだった
レクサス広報は、開発の取り組み姿勢として、「オールウェイズ・オン(Always On)」という言い方で、「お客様や時代の要請を第一に考え、適時・適材・適所に新車や新技術を導入する方向で改良の手を止めず、小さな進化でも具現化していく取り組みをしている」と説明する。
欧米では、イヤーモデルといった言い方をしながら、毎年クルマがよくなっていく改良と市場導入を従来から行っているが、それに似た進化を目指しているといえそうだ。
改良によりブランド力を高める
マツダも、一括企画の手法により、数年先の新車投入を視野に入れながら、そこに適応できる技術や装備の開発を行い、モデルチェンジ時期にこだわらず、クルマを日々よくしていく取り組みを行っている。
欧州的手法を学びながら、大手自動車メーカーであるトヨタと、小ぶりな自動車メーカーであるマツダそれぞれに、クルマをよりよくしていく手法を考え、実行し、それが顧客の信頼を高めることにつながっているのではないか。
2013年にデビューしたISは全幅、デザインまで変更されるビッグマイチェンでリフレッシュ。あと最低でも5年は改良を続けて販売されることが確実
少なくとも欧州の自動車メーカーはそうした姿勢で改良や新車開発を行うことで、ブランド力を高めてきた経緯がある。
ことにトヨタのなかでプレミアムに位置づけられるレクサスは、高級車や高性能車を扱う銘柄として高いブランド力を備えるための戦略が採り入れられたのだろう。
それはまた、「もっといいクルマ作り」を標榜するトヨタ車全体の取り組みにも通じるかもしれない。
マツダは年次改良を徹底。2012年にデビューしたマツダアテンザは、2018年にフルモデルチェンジ並みの変更を受けて別物になった。現在はマツダ6として販売
先を見据えた新車開発の必要性が高まる
こうして、日々クルマが改良される手法を採り入れながら、では、次の新車をどのように企画し、開発していくかとなったとき、そこに新しい視野が必要になるはずだ。
たとえば、日米の新車開発は概ね4~5年の期間で世代交代を考えてきた。それに対し欧州では、7~8年の期間を置き、次期型の企画と開発をしてきたのである。それら手法を比較すると、欧州車は日米の約2倍先の将来を見通して企画していることになる。
レクサス初の100%EVのUX300eは、日本では2021年から販売を開始する予定。電動化時代に向けて投入される1台だ
もし、いま、次の新車を構想するとして、2024~2025年の未来を想像するか、あるいは2028~2030年あたりの時代を想像するかで、次期型の価値は大きく変わることになるだろう。
2030年といえば、そろそろエンジン車はなくなっていくことが予想される。
米国カリフォルニア州では、2035年までにエンジン車の販売を禁止すると発表したばかりだが、2030年の5年後の実施となれば、2030年に出る新車はその影響を強く受けるだろう。なぜなら、顧客は新車購入から5年や10年は乗り続けるからだ。
いっぽう、4~5年先であれば、まだエンジン車が多く残るのではないか。動力源ひとつをみても、未来像に大きな差が生じる。
そこに、自動運転技を加えていくと、8~10年先の交通社会はもっと読みにくくなるだろう。消費者の嗜好も変化する可能性がある。
2011年にデビューした5ドアハッチバックのCTは、UXベースにした新型が噂されるいっぽうで、このモデルで消滅するという情報もある
次期型への投資を最大限に生かす戦略
2010年に日産リーフが発売されてから10年が過ぎた今年、輸入車を中心にEVの車種が増えはじめている。消費者の選択肢にEVの占める比率が大きくなりだしたのだ。
この先10年を考えたら、もっと増えるに違いない。その嗜好の変化は、携帯電話とスマートフォンの切り替わりのように、突然起こるかもしれない。
2017年に登場した現行LSのマイチェンモデルはすでに公表されている。大きく進化した新型は2020年内に日本で発売される可能性が高い
そうなると、これまでの延長線での改良や進歩で、次期型を企画することが適正であるかどうか問われることになる。時代の読みが、非常に重要になり、簡単には決断しにくい時代となっている。
ではどうするか。
モデルチェンジの間隔を長くして、ISのように大幅な改良によっていまという時代の競争力を磨きながら、次期型の構想を、熟慮する時を稼ぐことが重要になっていくだろう。
強力な競合に相対するには、容易な開発ではすまされない。未来の方向性を見誤れば、損失ははかりしれなくなる。
次期型への投資を最大に活かすため、レクサスはじっくり時を掛けながら仕込みをしているに違いない。
レクサスの人気SUVのNXの新型モデルはトヨタのハリアーをベースにさらに高級感を増して2022年にデビューする可能性が高い(画像は予想CG)
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みんなのコメント
変らないのは欧州車も同じでしょ。
ただレクサスは品質以外の部分でコストカット目的なのがが見えすぎる。
静粛性に優れ故障も少ないけど高級感が足りなく、安全装備もそこそこで
終わってる気がするのが残念。