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電源の問題は解決しないが、EV、PHEV、48Vマイルドハイブリッドがメインストリームになりつつある現状

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電源の問題は解決しないが、EV、PHEV、48Vマイルドハイブリッドがメインストリームになりつつある現状

2014年に燃料電池車(FCV)のトヨタ MIARIが発売された時、マスコミは「究極のエコカー」というタイトルをつけた。燃料電池車は水素を燃料として搭載し、燃料電池スタックで酸素と水素を白金触媒でイオン反応を発生させ、電気と水を発生させる。つまり排出されるのは水だけということで究極のエコカーと呼ばれる。

しかし、電気自動車(BEV)に排ガスは存在しない。電力をバッテリーに貯蔵し、その電力を使用してモーターで駆動するから排ガスゼロ(ゼロ・エミッション)で、これも究極のエコカーではないのか。

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さらに最近次々と登場しているプラグインハイブリッド(PHEV)も新たなカテゴリーのクルマだ。従来からあるハイブリッド車(HV)とPHEVの違いは搭載するバッテリー容量だ。ハイブリッド車の電池容量は1kWh程度だが、PHEVはその4~5倍の容量を持っている。また駆動モーターの出力もPHEVはハイブリッドの1.5倍~2倍だ。

PHEVは、エンジンを停止したままバッテリーによる走行距離は50km程度となり、普通のハイブリッド車の10倍以上となる。そのため日常のドライブではエンジンは使用せず、電気自動車として使い、さらに自宅に帰って充電するというパターンを繰り返せば、ガソリンは使用せず電気自動車として使用できるのだ。だから使い方によっては、排ガスゼロ、ガソリン使用ゼロに限りなく近いクルマといえる。

燃料電池車も、EVもPHEVも共通している点は、駆動システムが電動化されていることだ。PHEVだけは電気駆動に加え従来通りのエンジン駆動システムも備えている。近未来のクルマは電気駆動システムが不可欠といわれるのも当然というべきだろう。

しかし、近未来は燃料電池車、EV、あるいはPHEVか、どれが本命なのか? その答えは簡単ではない。なぜならそれぞれのクルマは成り立ちや、狙い、目指すところが違う同床異夢の状態にあるからだ。

■エネルギー問題の論点はどこか

現在の社会、現在のクルマにとって大きな課題になっているのは、エネルギー問題と、CO2排出による地球温暖化の問題だ。この大きな問題は関連性もあるが、まったく別の側面も持っている。新世代を目指す燃料電池車、EV、PHEVはその二つのテーマを反映したクルマといってもよいのだ。

エネルギー問題とは、原油、シェールガス、天然ガスなど化石燃料資源が将来に枯渇するという危機感と、化石燃料を輸入する国にとって激しく価格変動する財政負担を無視できない。あるいは自国のエネルギー自給率の低下に対する危機感という問題があるのだ。

人類にとって化石燃料の埋蔵量は現在でも未知の世界であり、現時点では化石燃料の世界的な消費量が頭打ちになり、原油生産は減産傾向にある。しかし、新興大国では、経済活動の急激な拡大による化石燃料の輸入量が飛躍的に増大し、財政負担の増大とエネルギー自給率が極端に低くなる状況を回避させたいと考えている。

このため、エネルギー消費が急激に拡大している中国(石炭は大量に産出する。原油も産出)、インド(石炭、原油、天然ガスを産出する)、ブラジルなど原油を輸入している新興大国は国家戦略としてエネルギーシフトを行なっている。

■各国のエネルギー事情

中国では新エネルギー政策(「第11次五カ年計画」期間の国家863計画「省エネルギー・新エネルギー自動車重大事業」)が策定され、2015年から2020年に向けて電気駆動車、バッテリー製造、それらの産業インフラの整備などを進めることになった。

爆発的に自動車の販売台数が増大している中国は、一気に化石燃料に頼らない自動車へのシフトを決定したわけで、その影響で2015年には前年比4倍にあたる33万台の電気駆動車が販売された。なお、この新エネルギー政策には従来型ハイブリッド車は対象外となっている。

EVやPHEVの購入者には最大100万円の補助金が与えられ、内燃エンジン車では難しい大都市でのナンバープレート交付が有利になる。さらに大都市の市街地への乗り入れも認められるなどの優遇政策も効果を発揮し、現時点ですでに世界最大の電気駆動車市場に成長しているのだ。もちろん電気駆動車へのシフトはエネルギーシフトだけではなく、大気汚染対策という側面も持っている。

一方、インドは原油、石炭や天然ガスを産出するが、中国を上回るほどの経済成長に伴い原油、石炭の海外依存度が急激に高まっている。また電力需要も大幅に拡大しているが、石炭火力発電による大気汚染が深刻化。電気インフラの遅れなど多くの問題を抱えている。エネルギー政策としては原子力発電、再生可能エネルギーへのシフトを加速すると考えられている。

南米の大国、ブラジルは原油輸入に依存してきたが1973年の石油危機により、経済が大きなダメージを受けたため、エネルギー自給率を高めることが急務となった。そのため、深海油田の開発、天然ガス田の開発を行なうとともに、1970年代後半からサトウキビから生産するバイオエタノールの実用化を目指し、現在ではアメリカに次ぐ世界第2位のバイオエタノール生産を誇っている。結果的にブラジルはエネルギー需要の約50%がバイオエタノールとなっており、エネルギーシフトの点では成功を収めている。

このように各国はそれぞれのエネルギーの国家政策を推進しているが、日本はエネルギー自給率を高めることと、エネルギーミックスという2本立ての基本構想の下で、水素エネルギー政策が経産省・資源エネルギー局を中心に推進されている。その一環として、トヨタMIRAI、ホンダ クラリティFCが誕生したといってもよいだろう。燃料電池技術は、欧米各国が開発を行なっているが、クルマの市販化と水素ステーションの整備をセットにした政策は日本独自である。

燃料電池車があくまでエネルギー政策の産物であることは明らかで、現在の水素の製造、輸送、貯蔵などのエネルギー効率がよいとはいえないし、コストも高い。このため燃料電池車が環境適合性やCO2低減を訴求するのは飛躍した話だ。

■PHEVが急激に増加している理由

自動車メーカーにとっては、国家のエネルギー戦略、化石燃料に対する長期的なビジョンよりは、間近に迫っている各国のCO2排出量規制、燃費規制の方がはるかに深刻というのが本音だろう。

ヨーロッパでは、CO2排出量は2021年から適用される95g/km(燃費換算で24.4km/L)が、各自動車メーカーに求められる企業平均燃費(CAFÉ)だ。2015年を目標とした130g/kmの企業平均燃費は2014年の時点で全自動車メーカーがクリアしているが、2021年の規制ははるかに厳しく、クリアできなければ罰金が課せられる。

また、アメリカではヨーロッパのような燃費、CO2の規制より大気汚染に対する規制がはるかに重視されている。カリフォルニア州など18州で適用されるZEV(排気ガスゼロ車)規制を導入しており、自動車メーカーの販売台数に応じて一定数のZEV車、つまりEVかPHEVを販売する義務があり、ZEV車の販売が定数より不足した場合は、罰金を払うか、ZEV車を販売している他メーカーからクレジット(ZEV規制に適合させる権利)を買う義務を負う。

このように、ヨーロッパでは2021年からの厳しいCO2規制が待ち構えており、マーケットとして巨大なアメリカ市場ではZEV規制をクリアしなければならない。このふたつの難問を解くために、大排気量クラスをラインアップしているドイツのプレミアムカーメーカーはPHEVを大幅に導入する方法を選んだのだ。

つまりPHEVであればヨーロッパのCO2規制をクリアでき、大市場のアメリカでもZEV規制に適合できるからだ。言い換えれば、これらふたつの規制というハードルを越えるためには、中型車、大型車をラインアップしているメーカーはPHEVという技術以外に選択肢がないというのが実情だと言える。

しかしいうまでもなくPHEVは通常の内燃エンジン車に大容量のバッテリーと電気駆動システムを追加するため、価格的には高くなる。そのため、もともと高価格のプレミアムカーメーカーには採用できても、より小型の低価格のクルマにとっては採用が難しい技術である。

EVは、技術的な特徴としては小型車から大型車まで適用される汎用性を持っているが、PHEVよりさらに4~5倍以上という大容量のリチウムイオン・バッテリーを搭載するため、価格面での制約が大きいこと、燃料電池車やPHEVに比べて航続距離が短く、充電にも時間を要するなどEV特有の課題を抱えており、次世代車の主流になるとまでは言い切れない。

またEVは確かに排気ガスゼロであるが、バッテリーに充電する電気は、発電時にどのようなエネルギーを使用しているか? どれほどCO2を排出しているかも問われている。つまりEV自体はCO2を排出しないが、その電力源である電気にCO2のツケを回しているともいえるのだ。

原子力発電か、火力発電か、風力や太陽光発電など再生エネルギーによる発電なのか、電源によってEVの位置付けは微妙な存在なのだ。

では、燃料電池、EV、PHEVの採用が難しい低価格の小型車はどのようにCO2規制、ZEV規制のハードルを乗り越えるのか?欧州では48Vのマイルドハイブリッドを選択。国産は48Vを採用し始めるのか?興味深い

このように、考えると次世代の環境技術と搭載したエコカーと呼ばれる、燃料電池車、EV、PHEVのいずれもが、直面する課題に合わせて開発され、それぞれが特有の存在理由や課題を持っているクルマであることがわかる。グローバルで販売される幅広い車種に適合できるメインストリームと考えるのは早計なのである。

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