市販車の発売とほぼ同時に登場したレース仕様
日産自動車と日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)が、2022年9月下旬に発表したNissan ZのGT4規定のレース車両「Nissan Z GT4」。そもそもGT4とは、どのようなカテゴリーなのだろうか?
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現在のGTレースはFIA GT3マシンが主役
2ドアスポーツカーによるGTレースは、車両の改造範囲によって現在、GT2(ル・マンシリーズのGTE)、GT3、GT4と区分されている。GT2(GTE)は2022年いっぱいで終了。来季2023年シーズンはGT3がGTシリーズの頂点となる。グループGT3という規定は一般的にはFIA(国際自動車連盟) GT3と呼ばれ、世界のスポーツカーレースの中心となった。日本でもスーパーGTシリーズのプライベータークラスであるGT300クラスの主要車両であり、参加型のスーパー耐久シリーズ(S耐)ではST-Xクラスとしてトップカテゴリーとなっている。
GT3は市販車をベースにした純レーシングカー。エンジン出力や搭載位置、車重などで車両の性能には当然差がつくわけだが、それをBoP(=Balance of Performance、性能調整)で接近させる手法を取っている。またGT3車両は改造など手を加えることができなくなっており、スペシャルパーツへの交換も許されない。またメーカー間の開発競争もエスカレートし、車両価格も高騰。さらに純レーシングカーという性格なため、ジェントルマンドライバーたちにとってドライビングはシビアになってしまう。
より市販車に近い仕様がGT4マシン
そこで誕生したのがGT4というカテゴリーだった。市販車ベースが原則で、GT3ほどカリカリにチューニングしてあるわけでもなく、車両にトリッキーな動きも少ない。車両価格もGT3に比べれば安価で、ジェントルマンドライバーには打ってつけのカテゴリーとなった。日本でもS耐では2017年にGT4のクラスであるST-Zクラスを設定。2019年からは主要クラスに発展している。
海外ではドイツやイギリスなど、そしてアメリカでもGT4のシリーズが行われており、ニュルブルクリンク24時間やスパ24時間といった耐久レースでも、GT4のクラスが設定されている。
現在GT4で中心となる車両は、アストンマーティン・ヴァンテージGT4、アウディR8 LMS GT4、BMW M4 GT4、フォード・マスタングGT4、ジネッタG56 GT4、マクラーレン570S GT4、メルセデスAMG GT4、ポルシェ718ケイマンGT4 RSクラブスポーツ、サリーン1 GT4、トヨタGRスープラ GT4など。GT4規定がわが国に導入される以前は、トヨタ86や日産370ZのGT4車両も欧州のレースで走っていた。
ちなみにGT4はFIAではなくベルギー王室自動車クラブ(RACB)が公認を行っている。ここで公認された車両のBoPを、GT3シリーズを統括するSRO(ステファン・ラテル・オーガニゼーション)が行っており、「SRO GT4」という呼び方をされることもある。
気になるZ GT4の実力はどうか
さて、では2022年のS耐富士24時間においてメーカーの開発車両のクラスであるST-QクラスでデビューしたNissan Zは、どれほどのポテンシャルを持っているのだろうか? ちなみに富士24時間ではNISMOから2台のZが参戦し、1台はカーボンニュートラル燃料を使用。もう1台はガソリンを使用し、富士24時間以降はMax Racingで開発が行われている。
しかし今年の各レースでST-Zクラスの他車両とのタイムと比較してみると1~2秒遅く、予選順位も7~8位相当。決勝レースでも富士24時間が最高位で4位相当と、このままST-Zクラスに参戦すれば表彰台にすら届かないことになる。
もしかするとテスト参戦中なので「三味線」を弾いているのかと思いきや、そうでもないように見える。搭載されるエンジンは、V6、3LのVR30DDTT型を規定内でチューニングしたものだが、ロングノーズがゆえに重いV6エンジンが邪魔をして回頭性がイマイチなようなのだ。せめてST-Zクラスの上位陣と同じぐらいの速さが欲しいもの。S耐岡山では、新型ZのCPSを担当した田村宏志氏とも少しだけ話をする機会があったが、「レース参戦を考えて作ったクルマじゃないからね」とはぐらかされてしまった。
* * *
車両のスペックや価格は未発表(11月1日~の2022 SEMAショーで発表予定)だが、とくに北米では人気を呼ぶだろう。国内ではS耐に2台以上が参戦を予定しているという。しかもSUPER GT/GT500クラスに参戦するチームからのエントリーになるという噂もある。現在も開発中のZ GT4が、来年からサーキットで活躍する姿に期待したい。
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