■上手い操作も下手な操作も完全再現するBEV用のMTとは
トヨタは、「クルマ好きを誰ひとり置いていかない」として様々な技術への取り組みを行っています。
そんな技術の一環としてこれから普及が見込める電気自動車(BEV)においても「運転する楽しさ」を提供するために新たなMT仕様を搭載する実車が初公開しました。
果たしてどのような感覚でどのような操作感が得られるのでしょうか。
【画像】えっ…! もう下手でも大丈夫? 新しいMTが凄い! 斬新なMT車を写真で見る!(24枚)
トヨタは2023年6月8日に同社の東富士研究所にて「Toyota Technical Workshop 2023」(以下テクニカルワークショップ)という技術の説明&体感会を開催しました。
ここでは、新体制となったトヨタが掲げる「クルマの価値の拡張」「モビリティの拡張」「社会システム化」をテーマに3つのカギとなるアプローチ、「電動化」、「知能化」、「多様化」を軸においた展開をしていくといいます。
今回のテクニカルワークショップでは、新たに副社長/Chief Technology Officerに就任した中嶋裕樹氏が前述のカギに沿った技術を披露しました。
例えばそのひとつとして前述のBEVが主流になっても「運転する楽しさ」を提供するための新たなMT(マニュアルトランスミッション)です。
BEVのMTと言えば、トヨタが東京オートサロン2023にて世界初公開した「AE86 BEV Concept(電気じどう車)」が話題となりました。
このAE86 BEV Conceptは、レクサスで培ってきた電動化技術を活用したモデルです。
特徴としては、AE86のボディや車重の軽さ、前後の重量バランスは極力維持しつつも、バッテリーEVの特徴である高い駆動力やマニュアルトランスミッションの採用により「従来以上の走りの楽しさを感じられる」というテーマを目指して開発されました。
パワートレインはAE86に搭載されている4A-GEからモーターに変更。ちなみにマウント類の加工以外は純正から変更はありません。
なお一般的にBEVに機械的なトランスミッションは必要ないですが、あえてGR86用の6速MTを組み合わせたことです。
BEV×MTの組み合わせについて、現レクサスインターナショナルのプレジデント・渡辺剛氏は「BEVには機械的なトランスミッションは必要ないですが、あえてMTで操作する手間があることでクルマを操るらしさを提供するため」と説明していました。
そして今回新たに実車が公開されたBEVのMT仕様(以下BEV MT)は、AE86 BEV Conceptとは異なり機械的なMTではなく電気的なMTが搭載されています。
このBEV MTは、2022年12月5日にレクサスの欧州法人がブリュッセル(ベルギー)で開催されたメディアフォーラムにて発表されたものです。
この際公開された動画を見ると、エンジンが搭載されていないBEVながら車内にはMT操作に応じたエンジン音が聞こえてきます。
また同動画内で前出の渡辺剛氏は次のようにいいます。
「このクルマは外から見ると、ほかのBEVと同じように静かですが、ドライバーはMT車の感覚をすべて体験することができます。
ソフトウェアベースのシステムなので、異なる車種の運転感覚を再現するようにプログラムすることができ、ドライバーは好みのマッピングを選択することが可能です」
※ ※ ※
このような特徴を持つBEV MTですが、今回のテクニカルワークショップでは実際に運転することが出来ました。
ベース車となったのはUX300eで、ボタンひとつでAT仕様/MT仕様に切り替えることが可能です。
従来のMT仕様のように搭載されたクラッチペダルを踏み込むと疑似的なエンジンが始動します。
そしてシフトレバーを1速に入れ、クラッチペダルを半クラ状態にしアクセルペダルを踏み込んでいくと、まるでガソリン車(MT)のようにエンジンの動力がタイヤに伝わっていく際の振動が感じられました。
この流れで1速から2速、3速、4速にシフトアップしていくとガソリン車のような音と振動が伝わってきます。
そして5速から2速など従来のガソリン車ではやめておきたい操作でもまるで本当にエンジンブレーキが掛かったような強い衝撃が感じられました。
また意図的に1速に入っている状態でクラッチペダルを離すと、リアルなエンスト体験が出来る上に、坂道でクラッチペダルを踏んだままブレーキペダルを離すと後退するなど、何から何までガソリン車のMT仕様を完全に再現しています。
最後にまたボタンを押すことでAT仕様に戻るため、休日は運転を楽しみたいお父さんがBEV MTで、平日の奥さんが買い物に行く際にはAT仕様にするなど、シーンに応じて変更出来るなどBEVのならでは可能性が感じられました。
※ ※ ※
なお、このBEV MTは「知能化」のひとつとして体感しましたが、現在はさらに細かな部分のセッティングを行っているといいます。
今後のユーザーのニーズ次第では、今後のBEVに搭載することも視野に入れているようです。
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