■パワーはなくても、エンジン特性を引き出して走行
ギアを手動で切り替えて、エンジンの性能を自分の手足で引き出して走行する。それがマニュアルトランスミッション(以下MT)車の醍醐味ではないでしょうか。
なぜ、警告音が違う? バック時にAT車とMT車で「警告音」有無の差があるワケとは
これは、ハイパワーなスポーツカーだけでなく、ベーシックカーでも同じことです。むしろ、パワーがない分、持てる力をフルに引き出してやることも楽しくなります。
そこで、軽自動車を除く100万円台で販売されているクルマのなかから、ベーシックなMT車を5車種ピックアップして紹介します。
●マツダ「デミオ」
MT車を広くラインナップすることで知られるマツダですが、当然、ベーシックなコンパクトカー「デミオ」にもMT車を用意しています。
燃費重視設定ではありますがMTは全車6速となっているため、速度に合わせて最適なギアを選択するには、より適しています。
また、デミオはハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを制御してタイヤの接地荷重を最適化させ、安定した車両挙動を実現する「G-ベクタリング コントロール(GVC)」が全車標準装備となっています。
さらに、安全装備も全車で「サポカーS・ワイド」となっているため、車線逸脱警報や先進ライトも標準装備しており、安心安全に走る楽しさが味わえます。
価格も100万円台のグレードを多く用意しており、最も手が届きやすいのはガソリン車2WDの「15S」で、149万400円(消費税込、以下同様)。装備が充実した「15S Touring L Package」も181万4400円です。
また、モータースポーツに参加するためのベース車で装備が簡素化され、エンジンにも手が入れられている「15MB」が156万600円。ディーゼル車ではベーシックグレードの「XD」が181万4400円と、デミオは100万円台のMT車がじつに豊富です。
●ホンダ「フィット」
ホンダのベーシックカー「フィット」は、歴代モデルすべてにMT車がラインナップされてきました。
現行モデルでは、走りに特化した「RS」と最もベーシックなグレードの「13G・F」でMTを選ぶことができますが、残念ながらRSは6速MTで200万円を少し超える205万920円です。100万円台なら5速MTを搭載する「13G・F」の142万8840円のみということになります。
「13G・F」では先進安全装備の「ホンダセンシング」が付けられない、装備に制約があるのが残念なほか、燃費はCVT車よりも1割以上悪化した21.8km/L(JC08モード)となるなど、ネガティブな要素がいくつかあります。
しかし1.3リッター直4エンジンは100馬力と、それほど出力が低いわけではなく、スポーティな走りも可能です。
外観でもスチールホイールである以外、中心グレードと目立った差異がないのも好ましく、ユーザーがカスタマイズできる余地が残されているのも、楽しめる点です。
●トヨタ「カローラアクシオ」
日本のベーシックセダンの代名詞的存在がトヨタ「カローラ」ですが、現行の4ドアセダンの「カローラアクシオ」では、1.5リッターエンジン搭載の2WD車「1.5X」と「1.5G」で5速MTが選べます。
なお、MT仕様のカローラに搭載される1.5リッターエンジンは「1NZ-FE型」とCVT仕様の「2NR-FKE型」で、同じ排気量ながら世代が異なるものとなっています。
また、MT仕様ではアイドリングストップ機構は装備されませんので、燃費の数値にも影響し、CVTの23.4km/Lに対して18.0km/Lと2割以上悪くなっているのが残念なところです。
価格はベーシックな「1.5X」で150万7680円、装備が充実した「1.5G」で171万6120円と、CVTに比べて安価になっています。
ステーションワゴンタイプの「カローラフィールダー」でも同様にMT車があり、「1.5X」で165万6720円、「1.5G」で181万3320円です。
カローラアクシオ/フィールダーは近々フルモデルチェンジが宣言されていますので、もしかしたらMT車が安価に購入できるのもいまのうちかもしれません。
■100万円台で手に入るMT輸入車もあり
●ルノー「トゥインゴ」
輸入車といえば高価だと思っている人もいるかもしれませんが、ベーシックカーであれば国産車とあまり変わらない価格で買うことができます。
サイズ的には国内ではヴィッツよりも少し小さいルノー「トゥインゴ」ですが、リアエンジンで後輪駆動というこのクラスでは貴重なレイアウトで、注目すべき存在です。
5速MTが設定されている「ZEN MT」のエンジンは1リッターの3気筒で71馬力を発揮。内装はシンプルながら革巻きハンドルが標準など要所を押さえた装備となっています。
また、Bluetoothと専用アプリ「R&Go」によるスマートフォン連携で、ハンズフリー通話やカーナビ、車両情報の表示が可能となる機能を標準装備しています。
「ZEN MT」の価格は177万円で、ほかに「ルノースポール」(ルノーのスポーティブランド)がチューンしたターボエンジンを搭載した「GT MT」もMTですが、こちらは少し高価な229万円となっています。
●スズキ「スイフト」
このクラスのベーシックカーのなかでも、走りの評価が高いのがスズキ「スイフト」です。現行モデルはスズキが誇る軽量化技術により、全車1トン未満を実現し、最軽量なモデルでは860kgとなっています。
MTは5速ですが、ハイブリッドやターボを除く3グレードで選ぶことができます。また、通常モデルとは別にスポーツモデルの「スイフトスポーツ」が用意され、こちらは6速MTで、ギリギリ100万円台に収まります。
スイフトは通常の1.2リッターエンジン搭載モデルなら「XG Limited」の2WDの5MTで135万円です。ただし、これは「セーフティパッケージ」を装備していないため、先進安全装備を装備すると145万6920円となります。
装備を考えると「XL」や「RS」にしたいところで、XLなら156万1680円、RSなら168万5880円です。
また、1.4リッターターボの「スイフトスポーツ」なら183万6000円からですので、よりパワーが欲しいならスイフトスポーツという選択もできます。
※ ※ ※
いま日本でMT車は絶滅危惧種になっていますが、日本よりも圧倒的にMT比率が高いヨーロッパでも、徐々にATのみの車種が増えてきています。
そう簡単にはMT車がなくなることはないでしょうが、近い将来にMT車はクラシックカーのような、趣味のクルマとなってしまうかもしれません。
比較的安価でMT車が販売されているうちに、ぜひ乗ってみてはいかがでしょうか。
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