2023年4月20日から発売開始となった新型セレナe-POWER。同年2月から受注開始となり、すでに2万台を突破しているが、実際に公道での走りはどうだったのか? トヨタのノアを所有する国沢光宏氏が徹底比較試乗した!
文/国沢光宏、写真/平野 学、ベストカーWeb編集部、日産
ノアのオーナーが比較試乗! 違いは走りの滑らかさ!! セレナe-POWERを実際に公道で試してわかったこととは?
■セレナe-POWERとノアHVはスペックではセレナ有利だが……
今年4月の販売台数はセレナ6504台で、ノア7019台、ヴォクシー6495台。単一車種で見ればいい勝負をしているどころか、セールスパワーの差を考えるとセレナ優勢?
2023年4月の登録台数を見ると国産Mクラスのミニバンで最も売れているのがノア/ヴォクシーの1万4600台。続いてセレナの6500台になる(ステップワゴンは2300台)。この2車種で迷っている人は案外多いんじゃなかろうか。
2023年4月20日から発売となったセレナe-POWERに一般道でジックリ乗れる機会があったので、私のノアハイブリッドと比べてみました。どちらを選ぶべきか?
新型セレナe-POWER(右)と筆者の所有する現行型ノアハイブリッド(左)は公道でどのような違いがあるのかを実際に試してみた!
まずパワートレーンから。新型セレナe-POWERのエンジンは1400ccの98ps。ノアハイブリッドが1800ccの98ps。走行用バッテリーの電力をすべて使い切った時の出力という点でイーブンとなる。
走行用バッテリーが残っている時は、理論値でそれぞれ163psと140ps。スペックだけ見るとセレナが有利? 試乗すると、新東名高速120km/h区間の連続登り坂から加速した時の絶対的なパワー感はノア優位だった。
■車重の違いが燃費性能に如実に表れた?
燃費性能だとセレナe-POWERより10%軽量なノアハイブリッドのほうが優位。ただし、ドライバビリティではセレナがノアを凌駕するというのが筆者の評価だ
なぜか? 試乗車のセレナルキシオンは車重1850kg。ノアのS-Zが1670kgで10%も軽い。これだけ違うと動力性能にも燃費にも効く。燃費はノアだと普通に走って20km/L程度なのに対し、セレナ17km/L程度。
重量差で10%くらい。ハイブリッドシステムの差で5%くらいノアが優位なんだと思う。ただ、Mクラスノミニバンで17km/L走れば充分。動力性能の差だって実用上問題なし。
それにセレナはスペックにない騒音や振動、滑らかさ、ドライバビリティでノアより優れている。e-POWERってエンジンと車軸は繋がっていない。エンジンで発電機を回して作った電力や、走行用バッテリーから持ってくる電力によってモーターを回してます。したがって発進から巡航まで連続してモーターだけで走っている。エンジンから直接駆動するルートも持つノアとひと味違う。
新型セレナのe-POWERは先代までの1.2Lから1.4Lに排気量が拡大されている
セレナは新型からエンジン排気量を1200ccから1400ccに拡大し、振動や騒音を抑えるバランサーも入れている。さらに走行用バッテリーの容量やパワーがノアより大きいため、アクセルを踏んだ時のモーターアシストなどグイグイ行う。
燃費を除くパワーユニットの評価点だと、セレナ100に対してノア80といったイメージ。ノアも燃費を諦めれば滑らかさは出せると思いますけど。
■ブレーキのタッチではノアを凌ぐセレナ
筆者が公道を試乗していて回生システムを含むブレーキのタッチはセレナのほうがいいと指摘。普通のガソリンエンジンと同じく自然で、やや唐突な利き味のノアと大きく違っていたそう。
シャシー性能やいかに。ご存じのとおり、セレナのプラットフォームは2005年デビューの3代目モデルを改良しながら使ってきている。古いのだけれど、新型からコストのかかったWピニオン式のステアリングを採用。
従来型の場合、ステアリングコラムにアシストモーターを付けていた。新型はラックにモーターを直接付けることでステアリングフィールが大幅に向上している。
新型セレナe-POWERのインテリア。コストのかかる上質なWピニオン式のステアリングを採用しているのがポイントだ
ダンパーもノアより滑らかに動くため、ハンドリング&乗り心地とも、新しい世代のプラットフォームを使うノアと比べて勝るとも劣らず。
ノアより決定的にいいのが回生システムを含むブレーキのタッチ。普通のガソリンエンジンと同じく自然だ。やや唐突な利き味のノアと大きく違う。ただ、回生効率という点では100%ドライブバイワイヤのノアが優れている。これまた燃費かフィールか、です。
■120km/hまでOKな「プロパイロット2.0」は魅力だ!
高速道路の120km/h区間でもハンズフリー走行可能な「プロパイロット2.0」はセレナの大きな魅力だという
ADASも比べてみた。新型セレナの優位点は、制限速度内なら(GPSが入らないトンネル内も使えない)すべての速度域でハンズフリー走行可能なプロパイロット2.0を選べること。
ノアのハンズフリーは30km/hまで。新東名でも試してみたけれど、120km/hをキープしながら車線内を快適にクルーズできる。ロングドライブが多い人ならプロパイロット2.0が欲しくなるかも。
安全を確保するためのADAS性能はノアのほうが多機能。バックで左右の見通しが悪い道路に出る時など、ノアなら夜間に無灯火の自転車など突っ込んできたら自動停止してくれる(1度これで事故を防げたことがあります)。
はたまたドアを開けようとした時に後方から自転車が接近したような時の警報も出す。そのほか、事故を未然に防ぐための機能でノアが優位。
2005年デビューの3代目セレナのシャシーを改良して使用している新型セレナは3列目シートの収納時にどうしても出っ張ってしまう
キャビンの使い勝手は3列目シートの収納が決定的に違う。2005年からのシャシーを使うセレナは3列目の収納に手間とチカラが必要。ノアの3列目はワンタッチだし、収納した時の出っ張りが小さい。
セレナは写真のようにガラス面だけを開閉することができるようになっている
バックドアは窓だけ開けられるセレナに対し、開く角度を自由にコントロールできるノアで互角。このあたりはディーラーで実車を見て決めたらいいと思う。買う時は大いに迷い楽しんでいただきたい。
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