モッカに続きオペルのエントリーモデルを試す
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードはオペル「コルサ」についてです。筆者はドイツにも活動拠点を構えて、ニュルブルクリンクで開催される耐久レースに年間エントリーしています。現地での移動は日本未導入のクルマも多いのですが、今回の相棒は、オペル コルサ。以前試乗した「モッカ」に続き、エントリーモデルであるコルサをアウトバーンなどで試乗。その実力やいかに?
ずばり、ライバルはトヨタ「ヤリス クロス」とホンダ「ヴェゼル」…オペル「モッカ」に日本市場で活躍して欲しい私的な理由とは【Key's note】
けっして豪華さはないが基本に忠実な作り込み
以前、本コラムでオペル「モッカ」の試乗記を紹介したところ、なかなかの反響をいただきました。
かつてオペルは日本市場には欠かせないドイツブランドでしたが、度重なる経営危機や合従連衡の荒波に翻弄され、2006年を最後に日本市場への正規輸入が途絶えています。過去を知るユーザーにとっては懐かしい響きを持っているでしょうし、若い世代には耳にしたことのない新鮮なブランドかもしれません。期待を超える反響をいただいたのは、それが理由かもしれません。
もっともオペルは、日本への正規輸入が途絶えただけで、おもに欧州ではブランドとして確立しています。ドイツ本国だけではなく、英国ではボクスホール名で販売されており、爆発的に人気というわけではありませんが、安定したポジションを得ているといえるでしょう。
そんなオペルブランドの中でもっとも話題を独占しているモッカを紹介したわけです。モッカという聞きなれないネーミングもインパクトがあったのかもしれませんが、スタイリッシュなエクステリアだったこともあり、意外に好評のようなのです。
では、オペルの最量販モデルともいえる「コルサ」はいかがでしょう。
コルサのデビューは1982年です。当時、VW「ポロ」やフォード「フィエスタ」などがコンパクト市場を席巻していました。その対抗馬としてデビューしたのがコルサです。
コンパクトなボディに小排気量エンジンを搭載。コンパクトファミリーカーのコンセプトは6代目になっても変わることなく受け継がれています。サイズは全長は4060mm×全幅1765mm×全高1435mm。搭載するエンジンは直列3気筒1.2Lガソリンと、直列4気筒1.5Lディーゼルをラインアップしています。今回ドライブしたのはガソリン仕様でした。
大衆車の王道のような作り込みです。立ち位置は国民車ですから、ことさら高級感を求めているわけでも、趣味性を狙っているわけでもありません。ひたすら実直に、安価な大衆車の道を貫いているのです。
アウトバーンでもしっかりと走る
エンジンはいかにも3気筒らしいチープな振動がありますし、パワーも十分ではありません。それでもアウトバーンで160km/hを記録したことには驚かされました。つまり、加速は十分ではないけれど、アクセルを踏み続けていればアウトバーンの流れにも乗ることが可能という、ドイツの高速道路走行で必須な要件を満たしているのです。
内外装もことさら高級感を求めてもいません。各種スイッチ類も、必要最低限の装備が必要なその位置にあるだけです。最近では大型タブレット端末をそのまま組み込んだかのようなモニターが主流ですが、コルサはドットの粗い旧態依然としたインターフェイスです。むしろシンプルな構成に親しみやすささえ感じるほどです。
オペルブランドはいま、ステランティスのアライアンスに属しています。ステラテスジャパンはかつて、2022年には日本マーケットにオペルを投入すると発表しました。ですが、世界を震撼させたコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻の影響を受けて延期。その後のアナウンスは一切ありません。再上陸の撤退なのか延期なのか不明ですが、ともあれ、再上陸するのであれば、コルサもラインアップに加わると発表されています。
そんなコルサが群雄割拠の日本マーケットで存在感を表すことができるのか、はなはだ心配ではあります。ですが、ともあれかつては日本に存在していたオペル コルサの日本再上陸を楽しみにしたいと思います。
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