いすゞ・ビークロスとは何だったのか
text:Kouichi Kobuna(小鮒康一)
【画像】ビークロスのように思いどおりにはならない! 日本発売されなかった/あとから日本発売されたモデル【2選】 全121枚
現在ではバスやトラックなど、物流を支える働くクルマを中心に手掛けているいすゞ自動車。
日本国外向けにはSUVやピックアップトラックなども販売しているが、日本国内では2002年の乗用車事業撤退以降、開発生産販売はストップしたままだ。
そんないすゞが日本国内向けに最後にリリースした新規乗用モデルが、1997年4月に発売をスタートさせた「ビークロス」である。
ビークロスの元をたどると1993年の第30回東京モーターショーに参考出展されたモデルに行きあたる。
名前もそのまま「Vehi Cross」であり、エクステリアものちの市販版とほとんど共通の意匠を持っていた。
ただし、ベースとなったのは当時の5ナンバーサイズの乗用車ジェミニであり、ボディサイズも全長3890mm×全幅1785mm×全高1620mmと、市販車の全長4130mm×全幅1790mm×全高1710mmに比べて一回り小柄。
搭載される想定のエンジンも直列4気筒1.6Lのスーパーチャージャー付とアナウンスされていた点が大きな違いと言える。
結局この時の反響を受けて市販化へ向けての取り組みがスタートし、97年に登場した市販版ビークロスは、ビックホーンのショートボディのシャシーを流用した本格的なRV性能を持った新しいタイプのRV車となっていた。
当時、奇抜なルックスが話題を集めた
ビークロスの話題となると、どうしてもそのエクステリアに話題が集中してしまう。
それは117クーペやピアッツァのときと同じように、コンセプトカーのイメージをそのまま市販車に落とし込んだという点もあるだろう。
実際、ボディの下半分をほぼすべて無塗装樹脂で成形したり、スペアタイヤ内蔵のバックドアを採用したりと、通常であれば市販化される際に手直しされるであろう部分がそのままだったというインパクトは計り知れない。
特にスペアタイヤ内蔵バックドアを実現するために、当時としては採用例の少なかったリバース連動バックカメラを標準装備するなど、コンセプトカーの雰囲気を壊さないための情熱も半端ではなかったのだ。
また登場からおよそ半年後の97年11月にはあらたに20色ものボディカラーをオプションとして設定し、当初の5色と合わせて25色ものボディカラーを選べるようになっておた。
これはボディ下部の樹脂部分の装着に関しては熟練の職人による手作業で行うというセミハンドメイド方式が採られていたことを逆手に取ったものだったのかもしれない。
ここまで手が込んだモデルでありながら、新車販売価格は295万円と比較的安価だったのは、他メーカーの純正部品をうまく流用してコストを抑えていたことも要因の1つ。
それを感じさせないデザイン力にはただただ脱帽といったところだろう。
ビークロス、じつは高い実力を秘める
前述のようにエクステリアに話題が集まりがちなビークロスではあるが、じつはオールラウンド・リアルスポーツをコンセプトに開発されたモデルでもあった。
足回りにはラリーレイドからフィードバックしたアルミ製モノチューブ別体タンク式ショックアブソーバーを採用しているのだ。
今でこそハイパフォーマンスなスポーツモデルやアフターパーツとしては知られるところの形状ではあるが、当時はまだまだ発展途上の最新技術だった。
車両価格300万円を切る量産車への採用は異例中の異例となっていた。
また、フレームとボディを繋ぐマウント部のブッシュには柔らかいゴムではなく樹脂に近い硬度のものを採用。
サスペンション周りのブッシュも強化品にし、リアラテラルリンクのブッシュに至ってはピロボール化がなされるなど、まさにラリーレイド車両のようなメカニズムが採用されていたのである。
このようにルックスも含めかなりトガった仕様となっていたビークロスだけに当時の日本ではあまり受け入れられなかった。
しかしその後に販売された北米ではコアなファンを獲得するなど一定の評価を集めている。
当時はどちらかというと異端なイメージのビークロスではあったが、現在のSUVブームの中で見ていると、1台くらいはこのようなモデルがあってもいいような気がする。
そういう点では時代を先取りし過ぎてしまったのがビークロスということであり、現在いすゞが乗用車事業から撤退し、第2のビークロスが生まれることがないというのが残念でならないのだ。
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みんなのコメント
マスゴミどもが挙って「これはいい!!このまま発売してくれ~!!」って大合唱して、
それにのった「いすゞ」が発売したら全然売れなかった可哀そうな車。
デザインは俺も結構好きだったんだけれどね・・・・
ビッグホーンショートを部品取りにしてマニュアル化したい