世界的なSUVブームのなか、各メーカーはクーペのように見える美しいデザインの“クーペSUV”を続々とデビューさせている。
例えばBMWのX2、X4、X6、ベンツGLEクーペ、ポルシェカイエンクーペ、そして2020年6月17日に発売されるトヨタハリアーなどだが、どのクルマもシンプルで美しい流麗なデザインだ。
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そこで、こうしたクーペSUVを含めて、過去、現在のSUVのなかから、美しいデザインのSUVを、モータージャーナリストの清水草一氏に選んでもらった。さて、どんな美しいSUVが登場するのか?
文/清水草一
写真/ベストカー編集部 TOYOTA NISSAN HONDA MAZDA SUZUKI ISUZU GM FORD JAGUAR LAND ROVER LIMITED
【画像ギャラリー】美しいデザインのSUV「日本車&輸入車TOP10」を写真でチェック!!
新型キャデラックエスカレードに衝撃を受けた
先代の強面顔からシンプルで美しいデザインとなった新型キャデラックエスカレード
2020年2月に発表された新型キャデラックエスカレードのデザインは、衝撃的だった。
エスカレードといえば、アメリカンSUVのなかでも最もゴージャス。威圧感もタップリだったが、新型はその美点はそのままに、「シンプルな美」を感じさせたからである。
グリルは巨大だが形はシンプルになり、全体にゴテゴテ感が抑えられ、優美ささえ漂わせているじゃないか!
オラオラ感もゴテゴテ感も大盛りが当たり前のアメリカンSUVまでもが、シンプルな美を目指している。やっぱりそっちが世界の自動車デザインの潮流なのか!
初代ホンダCR-V(1995年)
1995年にデビューした初代CR-V。清水氏曰くシンプルな美を感じさせるデザインだという
そこで今回は、シンプルで美しいデザインをまとっていた歴代SUVをピックアップして、その流れを温故知新してみよう。まずは美しいデザインの国産SUVを、古い順に列挙します。
同じ都会派のクロスオーバーSUVとしては、トヨタRAV4が前年に誕生してヒットしていたが、そっちがコロンしたフレンドリーなフォルムだったのに対して、CR-Vはシンプル&クリーン。バランスがよくてカッコよかった。
それほど美しいかと言われればそうでもないが、方向性としては「シンプルな美」を感じさせるSUVだった。
いすゞビークロス(1997年)
コンセプトカーのデザインがそのまま生かされて市販化されたことに驚いた人も多かった
1993年の東京モーターショーで、いすゞが1台の新しいSUVのコンセプトカーを出展した。その名はヴィークロス。従来のSUVの概念を大きく覆すスポーティな3ドアのスタリングが与えられていた。
チーフデザイナーを務めたのは、のちに日産自動車のデザイン本部長となる中村史郎氏だった。
東京モーターショー出展から約3年半後となる1997年3月、ビークロスは世に送り出された。
しかし、それまで存在しなかった「スペシャルティSUV」という新ジャンルを確立したものの、当時はまだRVブームの名残が強く、ライトSUV以外は、乗用車ライクな快適装備を備えた本格SUVがマーケットの中心であった。
時代としては、高級クロスオーバーSUVを確立した初代ハリアーのデビューが1997年12月であり、スポーティさを強調したSUVの存在は時期尚早であった。
このため、ビークロスの販売は決して成功とはいえず、わずか2年で販売終了。しかし、もう二度とこうしたデザイン優先のSUVは出るまい。歴史に残るSUVであることは間違いない。
初代ハリアー(1997年)
初代ハリアーが市場に与えた影響は大きく、北米市場、日本市場でも大ヒット
こちらも、都会派高級クロスオーバーSUVの草分けとして、高く評価されている。美しいというよりはカッコいいという感じだが、やっぱりシンプル&クリーンで、洗練されたエクステリアデザインだった。
それでいてワイルドさもあり、レクサスRXの名前で北米で大ヒット。クロスオーバーSUVという分野を切り開いた。
たとえばBMWは、ハリアー(レクサスRX)の後を追ってX5を開発、その後各社が続くことになったのだ。
初代ムラーノ(2002年)
初代ムラーノが2002年に北米市場専売車として発売され、日本導入までに約8万台を売り上げた。世界中からの強い要望を受ける形で、日本を含む世界80カ国で順次販売されることになる
シンプルでありながら、フロントやリアの強く丸みを帯びた造形は、グラマラスかつ未来的。当時はここまでラウンドしたフォルムを持つSUVはなく、見る者にショックを与えた。
当時日産は、キューブやマーチ、スカイラインクーペと、次々にデザイン的なヒットを飛ばしていて、乗りに乗っていた。初代ムラーノも、「日産のデザインはすげえ!」と思わせたものだ。
その後、日産デザインは徐々にコテコテ路線に傾き、没落していきましたが……。
3代目レクサスRX(2009年)
現在のレクサスが採用しているスピンドル以前のRXはこんなにもシンプルだった
レクサスRXは、日本国内のみ「ハリアー」の名前で販売されていたが、3代目からはRXに統一され、ハリアーは2代目が継続販売、その後国内専用モデルとして独立……という経緯を辿るわけですが、この3代目RXは、まさにシンプルで美しいSUVだった。
12年のマイナーチェンジでスピンドルグリルが移植され、ややバランスが崩れたが、前期型は余計なデコレーションがほとんどないエレガントなフォルムだった。特にボディと完全に一体になったフロントバンパーや、優美なリアピラーが秀逸でした。
2代目CX-5(2017年)
CX-5はマツダの魂動デザインを採用したミドルクラスSUV
マツダの現行SUVラインナップは、みんなシンプルで美しい。CX-5、そのロングホイールベース版であるCX-8、コンパクトなCX-3、そしてその上のCX-30と、どれも甲乙つけがたい優れたデザインだ。その中でどれか一台を代表で選ぶとすれば、CX-5になる。
最新のCX-30は、マツダ3とともに、キャラクターラインを排した面の美しさで勝負しているが、CX-5はそれより一世代前の、キャラクターラインのエッジを際立たせたデザイン。しかしそのラインが実に美しく、パネル面がどれもキリリと輝いて見える。
細部では、グリルとヘッドライトがつながり、開放された部分に注目したい。横から見ると割れ目のように見えるが、その割れ目から見える背後の風景にしばし見とれる。全体にとても彫刻的です。
現行ジムニー/ジムニーシエラ(2018年)
いまだに納期1年待ちといわれるジムニー(右)とジムニーシエラ(左)
ジムニーは本格的なクロカン4WD。これをSUVと呼んでいいのかどうか一瞬迷うが、スズキ自らがSUVと言っているので、仲間に入れさせていただきます。
ここまでの5台は都会派のクロスオーバーSUVだが、ジムニーはまったく違う。本来、泥にまみれて悪路を走るクルマである。分野としては別物だが、美しさではこれがベスト! 世紀の傑作! と言いたくなる。
とにかく、すべてが機能美の極致。余計なデコレーションはほとんどない。優美な曲線もない。ほぼ直線と円で構成されたウルトラ原点回帰のデザインで、これをやられたらグゥの音も出ません!
新型ハリアー(2020年6月)
2020年6月17日に発売予定の新型ハリアー
まだ発売前で実物を見ていないのでなんともいえないが、BピラーからCピラーにかけて流れるようにサイドウインドウのラインを落とし込んでいくデザインは、なかなかスタイリッシュ。
抑揚のあるサイドのキャラクターデザインは力強さを感じさせ、テールランプ回りもシンプル路線。きっと大ヒット間違いなしだろう。
ルーフからCピラーにかけて落ち込んでいくサイドウインドウのラインがクーペSUVの特徴
フォードブロンコ(1966年~)
1966年に登場した初代フォードブロンコ。アメリカでのブロンコ人気は凄く、その人気を受けて6代目はこの初代ブロンコを復刻させたレトロ&モダン路線になることがわかっている。しかし、2020年4月に発表予定だったがコロナ禍の影響で遅れている
続いて輸入車部門。こちらも多士済々で、あんまりいっぱい取り上げるスペースはないので、代表して今後の方向性を示している3台をピックアップしてみましょう。
1966年登場の初代ブロンコ(アーリーブロンコ)は、今見てもハッとするほどシンプルで力強いデザインだった。
その後ブロンコはボディの巨大化とともに、大味デザインの権化と化したが、間もなく発表予定(2020年4月に発表予定だったがコロナ禍により延期)のブロンコは、リーク画像を見るとアーリーブロンコの復刻版! アメリカンSUVとは思えない、シンプルなフォルムに大変身している。
前述のキャデラックエスカレードも、復刻デザインではないが方向性は同じ。アメ車の大味デザインは、徐々に過去のものになっていくのだろうか。
1972年式フォードブロンコ
初代イヴォークコンバーチブル(2016年)
SUVのコンバーチブルという意外性で驚かされたイヴォークコンバーチブル
ランドローバーのSUVは、すべてシンプルな直線基調で、とても美しい。モデル名を列挙すると、上からレンジローバー、レンジローバースポーツ、レンジローバーヴェラール、レンジローバーイヴォーク、ディスカバリー、ディスカバリースポーツ、そして新型ディフェンダー。
どれもこれもステキだが、こうも同じ傾向のデザインが並ぶと、なんだか整形美人のようで食傷気味になってくる。
思えば一番美しかったのは、初代イヴォークの3ドアモデルだったのではないか。いや、それをベースにしたコンバーチブルは、上屋が幌になった分、さらにシンプルで美しいかもしれない。ということで、これを代表に選びました。
このクルマ、幌を閉めても実に美しい。いやむしろ閉めていたほうが美しいかもしれないと思わせるほど、完璧なデザインでした。新型イヴォークのラインナップから消えたのは残念。
ジャガーIペース(2019年)
航続距離438kmのジャガー初のフルEV「I-PACE」
ジャガーのラインナップも、どれもこれもシンプルで美しい。SUVだけを取り上げても、FペースもEペースも実に美しい。
しかし1台を代表で選ぶとしたら、より全高が低くてスポーティなIペースでしょうか。
Iペースは床下にバッテリーを敷いたEV。SUVデザインにはまだいろいろな可能性があることを教えてくれた。
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