特徴的なBピラーを持つトヨタ車といえば、多くの人が思い付くのはアイシスだろう。今のオデッセイのような低床ミニバンでスライドドアを搭載した唯一無二のクルマだ。今回はそんなアイシスの誕生20年を記念して、アイシスが持つさまざまなアイディアをご紹介しよう。
文/佐々木 亘、写真/TOYOTA
ミニバンの皮を被ったモンスター! こいつは凄いぞ……圧倒的ポテンシャルを秘めたトヨタアイシスを紹介ィィィ
■大きく開くドアで誰もが使いやすいミニバンに
アイシスは乗り降りがしやすく、車内空間も広めで、視認性も抜群なクルマだった
アイシスは、2004年9月に新規車種として登場し、2017年までの13年間、1代だけで存続を続けた珍しいクルマだ。
ボディサイズは全幅1,695mmと5ナンバー枠に抑え(エアログレードのプラタナは全幅1,710mmで3ナンバー)、全高1,640mmと全高も低め。
ボディ全長も4,610mm程度と、それほど長くは無いのだが、しっかりと3列シートを納めている。
助手席側のドアにはセンタピラーを内蔵したパノラマオープンドアを採用し、ヒンジドアとスライドドアを開けると、広大な開口部が広がるのだ。
広く、大きく使えるクルマだが、価格は抑えめ。最上級のプラタナVセレクションでも250万円を切り、最廉価グレードでは200万円を切ってくる。
最近のクルマが高くなったということもあるが、200万円台で買えるクルマは、若者からお年を召された方まで、購買層が幅広かった。
誰もが買いやすく、使いやすいミニバンが、アイシスなのである。
■秀逸だったシートアレンジ
アイシスの中で最も秀逸なポイントは、多彩すぎるシートアレンジにあると思う。
2×3×2の7人乗りで、小さく見えるボディとは裏腹に、室内が広く、どの席へ座っても、しっかり着座姿勢を取れるのが良いところ。
3列目シートに薄さは感じるが、それほど窮屈というわけではないだろう。
さらに、運転席以外のシートの動きが凄い。
助手席シートはシートバックに手すりをつけ、乗降をサポートする一方で、前方に倒せばシートバックがテーブルになる。
さらに助手席がタンブルシートになっており、前方へ折りたたむと広いセンターキャビンが生まれる構造だ。
2列目シートにはスライド機構が付き、座面が跳ね上がる仕様だった。
折りたたんだ助手席と座面を跳ね上げた2列目を使うと、センターラゲージという使い方も可能。
サードシートは床下格納機構でフラットなカーゴスペースを作れるのも嬉しい。
足を伸ばしてのリラックスモードから、2列目3列目を使ったベッドモードなど、キャンプや車中泊でも活躍できるのがアイシス。
その時々によりカタチを変え、ユーザーのオアシスのようになるクルマである。
■大開口でも強靭すぎるボディ
走りもキビキビしていて、乗ってて楽しかった記憶がある
アイシスに乗っていると、ミニバンということを忘れてしまう。
各ドアが大きく、空洞となる部分が多いのだが、ボディ剛性がこれでもかというほどに高いのだ。
ボディが頑丈なおかげでサスペンションがしっかりと動き、車体の揺れも最低限で収まる。
ミニバンとは覚えないほどキビキビと走り、スポーツドライブも楽しめるだろう。
アイシスのボディが強いということを、最も強く感じたのが2011年の東日本大震災の時だ。
大津波が襲った三陸沿岸に、発災後あまり時間を空けずに入った筆者の目には、原形をとどめない数多くのクルマが入ってきた。
津波に飲まれ、何のクルマかわからないほど変わり果てたクルマが多かったのだが、アイシスだけは潰れることなくフレームを残していたのである。
パノラマオープンドアの面影が残るボディフレームは、大きな衝撃を受けても曲がらず歪まず、折れることもなくアイシスがそこにあることを物語っていた。
走行性能が抜群で、使い勝手が良く、堅牢なクルマ。技術者の技とアイディアが詰め込まれた正にドリームカーだ。
ミニバンというカテゴリーにとどまることなく、アイシスという形が完成形だった。技術者主導で、また復活してほしいクルマの一つである。
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