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深化した走りの歓び──新型レクサスUX試乗記

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深化した走りの歓び──新型レクサスUX試乗記

一部改良を受けたレクサス「UX」に、ひと足はやく島下泰久が乗った。見た目以上に中身の進化が凄かった!

改良点をおさらい

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レクサスのクロスオーバーSUVの中で、もっともコンパクトなモデルとして2018年に登場したレクサス「UX」は、約5年の間にグローバルで累計34万台以上を販売するヒットとなった。ざっくり言うと、レクサスの販売全体の1割がこのUXということになる。

このUX、レクサス車の常でこれまで幾度も細かな改良を受けてきている。2022年にはかなり大掛かりなマイナーチェンジを行なっているのだが、弟分として「LBX」が登場して“もっともコンパクト”ではなくなったタイミングで、再度の改良が発表された。

主題のひとつが電動化だ。これまでもハイブリッド車のUX250hとBEVのUX300eの電動車2モデルで販売の90%を占めていたというが、今回の改良を機にエンジン車の販売が終了。ラインナップは、新たにUX300hの名が与えられたアップグレード版のハイブリッド車のUX300hと、こちらも進化したUX300eという2モデルに改められたのである。

そんなアップデート版UXを、公道デビューよりひと足速く試すチャンスが訪れた。舞台は、レクサス車開発の総本山である「Toyota Technical Center Shimoyama」。

印象を記す前に、両モデルの改良点をざっと紹介しておこう。UX300hは、電気モーターの出力向上、リチウムイオンバッテリーの採用などを行なった最新世代のハイブリッドシステムを採用して、システム最高出力を従来の184psから199psに高めながら、燃費を22.8km/ℓから26.3km/ℓに向上させている。言うまでもなく、この出力アップが車名変更の理由である。

駆動方式はFFとAWDを用意する。特にAWDモデルではリヤモーターの出力を従来の約7psから41psまで大幅に向上させて、雪道などでの発進アシストにとどまらず、ドライ路面でも後輪の駆動力を積極的に活用するよう改められた。

一方のUX300eは3月にCATL製バッテリーの採用により従来の実に約40%増となる512kmを実現した航続距離は変わらないものの、急速充電時間を約25%短縮している。また、1日に急速充電を行なうことのできる回数も、従来の2回から4回に増やされた。

そのほかにも両車共通で多くの改良が施されている。基本性能に関わる部分では、ボディ剛性の強化、サスペンションや電動パワーステアリング等々の設定見直し、遮音材や制振材の追加による静粛性の向上などを実施。またインテリアを見ると、12.3インチ大型フル液晶メーターや電気式シフトセレクターのエレクトロシフトマチックを新たに採用し、給電用アクセサリーコンセントも装備された。

一方で外観にはほとんど変更は無い。よく見るとフロントの「L」マークが少しだけ大きくなっていたり、ドアミラー内側のブラック塗装が光を反射しにくい梨地になっていたりというトリビア的な違いはあるが、いわゆるフェイスリフトは行なわれていないのだ。つまり中身で勝負というわけである。

走りの質が違う!では、その中身は? と、言えば、たしかに進化は明らかだ。まず試したのはBEVのUX300e。従来型でもフロントにエンジンを積まないが故の前後重量配分の良さ、重心の低さを活かしたスムーズな走りを楽しめたが、新型はボディ剛性が高められたおかげでサスペンションがよりしなやかに動くようになり、フットワークは一層心地良いものへと進化している。

アクセルオフ時の減速度を高め、ブレーキ前後制動力配分を状況に応じて可変させるなど制御が緻密さを増しているのも効いているのだろう。リニアな減速感を得られるブレーキを踏み、滑らかな手応えのステアリングを切り込んでいった先でアクセルを踏み込んでコーナー出口に向かうまでの一連の挙動の繋がりが素晴らしくスムーズで、まさにひと筆書きのようなコーナリングを楽しめるのだ。

パワー、トルクはそもそも十分あったが、新型はその出力特性が更に吟味されていて、こちらも意のまま感が高まっている。これまでも不満を感じていなかった走りの質がますます、明らかに進化していたのである。

続いてハイブリッドのUX300h“version L”に乗り換えて走り出すと、こちらはまず従来と較べパワフルな加速感に頬が緩んだ。出力アップした電気モーターが主体となった、より“電動感”の強い加速は、滑らかで力強い。アップダウンが続く場面でもエンジン回転数が極端に上下することなく、しかも遮音対策が行き届いているので、耳障りに感じることもないという具合で、パワーの余裕をうまく走りの質の高さに活かしている。

フットワークは、UX300eと同じようにしなやかさが際立つ。単にソフトというのではない。強い制動時にリアブレーキの効きを強めて車体を前傾姿勢から引き戻すブレーキ前後制動力配分制御なども効いていて、姿勢を常にフラットに保ちながら、タイヤは路面にしっかり張り付かせている。そんな走りだ。

さらに好印象だったのがUX300h“F SPORT”のAWD仕様である。リヤモーターの出力は上がったと言っても41psに過ぎないのだが、コーナー出口でアクセルを踏み込んでいくと、前輪に加えて後輪から車体全体をしっかり前に押し出してくれるので、安心感が高く、より積極的に大胆にアクセルを踏んでいけるのだ。多少なりとも運転することが好きという人ならば、深化した走りの歓びに唸らされるに違いない。

前述の通り、今度のUXは見た目にはほとんど変化は無い。室内に入って始めて気づき、走り出して確信する。そんな進化だが、なにしろヒット作だけに、従来モデルを陳腐化させるだけの余計なデザイン変更など無用だという考えには、私も大賛成である。

しかも走りを中心に、これだけの内容を備えているのだ。新しいユーザーにもアピールするだろうし、初期型ユーザーの買い替えだって結構起きるのではないだろうか。

文・島下泰久 編集・稲垣邦康(GQ)

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