一部改良を受けたアルファロメオの「ジュリオ」は、ドイツブランドとは異なる魅力があった! “イタ車”ならではのスポーティな走りを小川フミオがレポートする。
好きにならずにいられない
アルファロメオという響きはいつの時代も耳に心地よく感じる。なぜそんなに高いブランド・イメージを維持しているのか……知りたい人は、アルファロメオ・ジュリア2.0ターボ・ベローチェをぜひ体感すると良い。
すばらしく楽しいセダンだ。「活き活きとしている」という言葉がぴったり! よくまわるエンジン、ダイレクト感の強いステアリング、きびきびと動く運動性……。
2022年のマイナーチェンジで、LSD(リミテッドスリップディファンレンシャル)を搭載。高速のコーナリングでも車輪の空転が抑制され、スポーティさが一段上がったといえる。
くわえて、フロントグリルとエクステリアミラーのハウジングがブラックになり、テールカッターもダークな色調に変更された。19インチ径のアルミホイールも新デザインのものになっている。
試乗車はブラックの車体色だったので、かなり精悍なイメージ。インテリアでは、サイドサポートが大きく張り出しているスポーツシートは真っ赤! ブラックとレッドの劇的なコンビネーションだ。
知り合いのジャーナリストで「かつてBMWは、アルファロメオのようなクルマづくりを目指していたけれど、いまは丸くなってしまった」と、言った人がいる。まさに言い得て妙。
ジュリアは、クルマ好きなら、好きにならずにいられないはず。それほど、スポーティによく仕上がっているのだ。
思いどおりにクルマを操舵できる全長4655mmの4ドアボディに、1995cc直列4気筒ガソリンターボ・エンジン搭載。206kWの最高出力と400Nmの最大トルクで、後輪を駆動する。
発進時は、軽くアクセルペダルを踏み込んだだけで、間髪を入れずというかんじでクルマは加速する。足まわりの設定も、フロントが浮き上がることもなく、獲物にとびかかるように前に飛び出す。
とくに印象に残るのは、しゃきっとした足まわりと組み合わされたステアリングだ。ドライバーの腕と直結したようなクイックさで、思いどおりにクルマを操舵できる。
「これこれ、これですよ!」と、ちょっと走り出しただけで、私は嬉しくなってしまった。
インフォテインメントのモニタースクリーンは小さいし、装備は、ドイツの競合と比較すると、シンプルかもしれない。
でも乗れば、多色のアンビエントライトとか、ジェスチャーコントロールとか、最新の快適装備がない点なんて、なにも気にならなくなるはずだ。
ドライバーの気分をたまらなく昂揚させてくれる性能ぶりにかけては、競合の追随をなかなか許さない。ものすごく大事にしたいクルマに思えてくる。
かつてのスポーツモデル「4C」ほどのむきだしのダイレクト感はなく、そこはセダン的な快適性もある程度確保されている。
“素”のダイレクト感が最高の持ち味もうひとつ、ジュリアがいいのは、N1耐久レースや、むかしのツーリングカーレースを連想させる点だ。
量産車の(ほぼ)まんまで出走して、それでいいとこを狙いたいひと向けに作られたんじゃないか? というぐらい、ジュリアは楽しい。
ジュリアにはちょっと前まで「Ti」と名付けられたモデルも設定されていた。1950年代にイタリアで始まった国際ツーリングカーレース「Turismo Internazionale」からとった名称という。
アルファロメオはかつて、「1900」、「ジュリエッタ」などをこのレースで走らせ。高性能モデルに、TIとつけていた。ひとつの黄金時代のなつかしい名前なのだ。
ただ、今回のジュリアのターボ・ベローチェは、ジュリア2.0ターボTi(バランスのとれたいいクルマだった)が148kWと330Nmであったのに対して、性能数値ではだいぶ上まわっている。
日本でも、4輪駆動モデルやV6モデルやディーゼルモデルが導入されたこともあるけれど、いまは今回の後輪駆動の2.0ターボ・ベローチェに一本化されている。
“素”のダイレクト感が最高の持ち味で、こんな楽しいセダンをずっと作ってきたアルファロメオの総決算みたいなモデルだ、と、私は思った。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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