■ネジを打たずに製作されたカスタムカー
ホンダはオンライン開催となったバーチャルオートサロン2021にあわせて、「N-VAN」をベースとしたカスタムカー「3rd Place VAN」を公開しました。
【画像】ホンダ「N-VAN」がゴリゴリカスタムでカフェに大変身!? 実車を画像で見る(12枚)
デザインは入社8年目と入社2年目の若手デザイナーふたりが担当しましたが、カスタムするにあたってこだわったポイントとはいったい何でしょうか。
N-VANは2018年に発売された軽バンで、同社の軽自動車群「Nシリーズ」で初の商用車となります。
最大の特徴は助手席側に採用された軽バン初となるセンターピラーレスのドアで、圧倒的な大開口を実現。バックドアだけでなく助手席側からも大きな荷物の出し入れがしやすい仕様となっています。
3rd Place VANでは、N-VANのセンターピラーレスドアの上部にルーフタープを配し、さらに車内にテーブルを設置することで、トレーラー風カフェのスタイルを提案。また実際のN-VANユーザーが3rd Place VANのスタイルを楽しめるよう、テーブルをDIYする設計図もあわせて公開されています。
3rd Place VANのデザインは、本田技術研究所 デザインセンター オートモービルデザイン開発室 プロダクトデザインスタジオに所属する佐藤友哉氏(入社8年目)と荒木紀充氏(入社2年目)が担当しました。
デザインでこだわったポイントについて、ホンダが公開した動画のなかで佐藤氏は次のようにコメントしています。
「非常に工夫したポイントは、(クルマに)ネジなどを一切打っていないところです。N-VANはホイールハウスがフラットにてきているなどの特徴があるので、そこに載せるだけで簡易的でありながらこれだけ創れるという特徴があります。
テーブルも折りたたむことができて最終的に荷室に全部収まって、4座すべて開けることができるのですが、すごく簡易に創っていて、そこが知恵を絞ったところです」
ベースの仕様に過度な変更を加えていない点が特徴的だといいますが、テーブルを含め内外装の雰囲気は一変しています。
「例えばテーブルはホイールハウスの上に載せる仕組みであることや、側面はM6ナットがつくN-VANの良さを生かして有孔ボードを這わせ、金具は有孔ボードに打ち込み、収納はその上に載せています。
すごく簡易でいつでも取り外せて、アレンジも利かせられる簡易性にこだわりました。また、照明やパソコン、スピーカーなどの電力はホンダの蓄電機『E500』でまかなっています。
フロントシートは背面を180度倒してそのまま座れるようになっています。めちゃくちゃ座り心地が良くて、このまま仕事もできます」(佐藤氏)
また、素材感や雰囲気の良さも特徴的で、荒木氏はこだわりのポイントについてこのように話します。
「テーブルは、いわゆるカフェのテーブルをイメージしていて、ちょっと焦げたような色合いや使い込んだ風合いというのをあえて出しています。
ルーフタープは、木のテーブルの端に穴を打っていて、そこにスポンと挿しているという仕組みです。
全体に這わせているライトは、点灯したときの雰囲気がちょっと華やかになるのを演出したいと思って取り入れています」
非常にこだわった内装の3rd Place VANですが、金属感のある外装も特徴で、「普通のメッキフィルムをヤスリでちょっと荒く削ることでこの風合いが出ます。ヤスリも色々と検討して、一番いい風合いを見つけ出しました。
デザインではリベットが結構効いているのかなと思います。(メッキフィルムを)継がなければいけない部分がどうしても出てくるので、そこにリベットをすることで、ハッとする要素を創り出せていると思います」(佐藤氏)と話します。
※ ※ ※
3rd Place VANの開発にあたってはふたりのデザイナーが実現したいライフスタイルとも大きな関係性があるといい、佐藤氏は「釣りが好きなのですが、湖とか河原などでテレワークをして、仕事を終えたら、そのあとは釣り竿を出してちょっと釣りをするとか、(そうしたライフスタイルを)もしできるのだったらいいな、というのを荒木氏とふたりで妄想しながら創りました」とコメント。
荒木氏は「自分で入れたコーヒーを飲むのが好きなのですが、3rd Place VANでは自分のこだわりのコーヒー豆を車内に飾り、閉じこもったオフィスや家のなかだけではなく大自然のなかでコーヒーを楽しめるのがいいな、と僕もそんな妄想をしながらデザインしていました」と話します。
ベースモデルのN-VANが持つ魅力を社員自らがフルに楽しんだことで生まれたモデルが、3rd Place VANだといえるでしょう。
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