2020年10月15日、いよいよ新型レヴォーグが正式発表された。
新型は同車にとって通算2代目のモデル。名門車レガシィツーリングワゴンの実質的な後継車とはいえ、ワゴンが衰退するなかで歴史が浅いレヴォーグが、モデルチェンジできたことは安定した人気の裏付けといえるだろう。
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なぜ、レヴォーグは評価されているのか、新型への刷新を可能とした背景にある事情とは。
文/渡辺陽一郎、写真/SUBARU、池之平昌信
【画像ギャラリー】安定の人気に要注目! ワゴン衰退の中、新型への刷新を迎えたスバル レヴォーグ!!
■ワゴン激減のなかで2代目へ移行するレヴォーグ
ワゴンの登録台数が減少する中、着実に契約数を伸ばしている新型レヴォーグ
先行予約は8月20日に開始され、販売店では「10月中旬の発表後に契約した場合、納車は2021年2月から3月になる」という。試乗車は納車が開始される発売日の11月26日以降に配車される。発売スケジュールは複雑で購入しにくいが、レヴォーグに対する市場の関心は高い。
レヴォーグが注目される理由として、まずはワゴン(正確にはステーションワゴン)であることが挙げられる。
スバルに限ったことではないが、デザインを重視するあまり後方視界がよくないのが最近の自動車に共通の短所だ
2000年頃には、カルディナ、アベニール、アコードワゴン、レグナムなど、国産ワゴンが20車種ほど販売されていた。それが今では、従来型を継続生産するカローラフィールダーなどを含めても6車種程度だ。
しかもマツダ6(旧アテンザ)ワゴンの発売は2012年、シャトルも2015年だから、設計が全般的に古い。新しく堅調に売れるワゴンは、レヴォーグと2019年に発売されたカローラツーリングのみだ。このような状況だから、ワゴンの登録台数も大幅に下がった。
■スバルが衰退するワゴン市場で存在感見せる訳
センターモニターは縦型を採用。スマートフォンに慣れ親しんだ現代では違和感なく操作できるという判断だろうか
ワゴンの車種数と売れ行きが減った理由は、日本の場合、1990年代中盤以降に普及を開始したミニバンに、需要を奪われたからだ。ワゴンも荷室の使い勝手が魅力だが、全高は大半が1500mm以下に収まる。全高が1800mmを超えるミニバンに比べると、車内は明らかに狭い。
ミニバンなら多人数乗車が可能で、3列目のシートを畳めば自転車のような大きな荷物も積める。ワゴンにこのような実用性はないから、売れ行きを下げた。
しかし、ミニバンの登場で、ワゴンの魅力まで薄れたわけではない。ワゴンは前述の通り全高が1500mm以下だから、セダンと同様に重心も低い。走行安定性を確保しやすく、左右に振られにくいから乗り心地も良い。立体駐車場も使いやすい。
このワゴンのメリットを高く評価しているのは、日常的に高速走行の機会が多い欧州だ。ワゴンはドライバーと乗員にとって安心感が高く、快適だから疲労も少ない。そうなると安全性をさらに高められる。
そこでメルセデスベンツ、BMW、アウディなどのドイツ車には、日本や北米で廃れたワゴンが今でも豊富に用意されている。
そしてスバルは、欧州の市場やメーカーと同じ考え方で、ワゴンに着目してきた。トヨタや日産に比べてメーカーの規模が小さいから、生き残るには個性的なクルマ造りをする必要があり、古くから水平対向エンジンと4WDに特化した技術指向の商品開発を行っている。
スバルが特に大切なテーマとして掲げているのは安全で、危険回避能力を含めた走行安定性、前後左右の視界、インパネやシートなどの内装まで、すべてにおいて安全にこだわっている。
安全にこだわるスバルの姿勢は一見地味ではあるが、スバリストと呼ばれる熱狂的ファンを魅了する要素のひとつだろう
クルマはひとつ間違えれば人を殺傷するから、安全にこだわるのは当たり前だが、実際には外観をカッコ良く見せるため、側方や後方が満足に見えないクルマも増えた。
スバルのクルマ造りが完璧とはいえないが(最近のスバル車は以前に比べて後方視界も悪化している)、自動車メーカーの中では地道に安全を追求している。そのためにOEM車を除くと、今のスバルに極端に背の高いクルマはなく、安全性の高い低重心のカテゴリーを選んでいる面もある。そのひとつがワゴンだ。
つまり、走行安定性と乗り心地を向上させやすいワゴンは、スバルの目指すクルマ造りと親和性が高い。そのために日本車がワゴン市場から次々と撤退する状況でも、スバルは方針を変えず、レガシィツーリングワゴン、さらにレヴォーグへと進化を続けている。
しかもレヴォーグは、国内市場での使い勝手を重視して開発され、従来型の全幅は1780mm、新型も1795mmだからあまりワイド化していない。運転がしやすく、死角を減らすことも含めて安全性を高めるクルマ造りだ。
■新型への刷新を可能としたレヴォーグの価値
国産ワゴンの車種が減少したことにより、現行型レヴォーグのユーザーが大きく増え、モデルチェンジを促したともいえる
以上のようにレヴォーグは、ワゴンのボディスタイルを採用したことで、スバルが重視する安心と快適を最適なサイズで実現できた。そこに共感を得たユーザーがレヴォーグを購入して、さらに評価が高まる好ましい循環が成り立っている。
また、逆説的な表現になるが、国産ワゴンの車種数が大幅に減ったことも、レヴォーグの購買層を増やしてフルモデルチェンジを促すことに繋がった。
前述の通りワゴンは、走行安定性と乗り心地が優れ、運転感覚も楽しい。外観はスマートで、アクティブな雰囲気もある。ミニバンに押されてワゴンの需要が減ったことは確かだが、ニーズがなくなったわけではない。
レヴォーグといえば「走りのワゴン」だ。新型ももちろん期待以上の走りを見せてくれる
それなのにワゴンの車種数は、2000年以降の約20年間に、需要の減少以上に削減されてしまった。その結果、国産ワゴンに対するニーズは、設計が新しく改良も頻繁に行うレヴォーグとカローラツーリングに集中している。少数精鋭のメリットが生じた。
日本自動車販売協会連合会が集計するカローラの登録台数は、継続生産型のカローラアクシオ&フィールダーやカローラスポーツを含んだ数字だが、このシリーズ全体の約60%をカローラツーリングが占める。
その登録台数は、コロナ禍の影響を受けながら、2020年に月平均で約4500台であった。カローラツーリングは、プリウスやシエンタと同等の台数を登録している。
レヴォーグは2020年5月に従来型の受注を終えたから、現在の登録台数は大幅に少ないが、2019年にはモデル末期ながらも月平均で1000台以上を登録していた。フルモデルチェンジを受けると、再び増加するだろう。
スバルのワゴンは、1981年に発売されたレオーネツーリングワゴンの時代から、メーカーや販売店とユーザーが一緒になって大切に育ててきた。
今後トヨタや日産が新しいワゴンを発売しても、好調に売るのは難しいと思うが、スバルではワゴンが同社のブランドイメージと一体になっている。
もはやスバルのラインナップから、ワゴンを省くことはできない。スバルにとってワゴンは、特別なカテゴリーだから、今後も進化を続けていく。
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元走り屋でファミリーカーを余儀なくされてる人の悪あがきの末の着地点にはちょうどいい。