N-BOXが王座に君臨し続けるホンダ。いっぽう小型車/普通車の販売は奮わず、2023年上半期はトップ10に1台もランクインしない月が目立った。ホンダはなぜ低迷し、ここからどう挽回すればいいのか。復活のシナリオを探ってみた!
文/渡辺陽一郎、写真/ホンダ、ベストカーWeb編集部
N-BOX頼みはもう限界!? 失速気味のホンダよ! 昔の活気を取り戻してくれ!
■じわじわと国内販売ランキングを落としてきたホンダ
2023年5月の小型車/普通車販売ランキング。1位から10位までにホンダ車の姿はない
メーカー別の国内販売ランキングを振り返ると、1963年以来、1位はトヨタが守っている。しかし2位以下は入れ替わりが激しい。
2000年以降の順位を振り返ると、2010年頃までは、多少の変動はあっても1位:トヨタ、2位:日産、3位:ホンダ、4位:スズキ、5位:ダイハツだった。
ところがその後は、日産が国内投入車種を減らして売れ行きが下がり、ホンダが2位に繰り上がって日産は3位になった。2010年代の中盤には、日産はスズキとダイハツにも抜かれて5位に下がる。1位:トヨタ、2位:ホンダ、3位:スズキ、4位:ダイハツ、5位:日産の順番だ。
2020年にはさらに順位が変わり、スズキが2位に繰り上がってホンダは3位に後退した。4位はダイハツ、5位が日産になる。2022年には再び変わり、1位:トヨタ、2位:スズキ、3位:ダイハツ、4位:ホンダ、5位:日産になった。2023年1~5月も同じ順位で推移している。
トヨタの強さは昔と同じだが、2位にスズキ、3位にダイハツと、軽自動車中心のメーカーが上位に食い込む。その代わりホンダと日産が下位に甘んじる構図は、以前は想像できないことだった。
背景には2つの理由がある。1つ目は軽自動車の販売増加だ。
今は全高が1700mmを超えるスライドドアを装着したスーパーハイトワゴンを中心に、軽自動車の売れ行きが好調だ。新車として売られるクルマの40%近くを占める。そうなると軽自動車の販売比率が高いスズキとダイハツの順位も上昇する。
2つ目の理由は、ホンダと日産が従来以上に海外指向を強め、国内で売る車種を減らしたことだ。特に日産は、2011年から2019年までの8年間にわたり、国内で発売する新型車が「1~2年に1車種」というペースにまで減った。
しかし直近では改善され、2022年の日産は、セレナ、エクストレイル、フェアレディZ、サクラを発売して活気を取り戻した。現時点では販売ランキング順位は上向かないが、車種が増えたから今後の日産には期待が持てる。
■今やホンダは「小さくて実用的なクルマのメーカー」
前出の表のとおり、2023年5月の小型車/普通車販売ランキングの上位10位までにホンダ車の姿はないが、写真のホンダ N-BOXは国内販売の総合1位を記録している
その点で心配なのがホンダだ。今後復活の予定はあるものの、オデッセイとアコードは販売を停止している。CR-V、ジェイド、グレイス、NSXなどは廃止され、選択肢が限られる。
この車種の減少に納期遅延も加わり、2023年2月、4月、5月の国内小型/普通車登録台数ランキングを見ると、ホンダがトップ10車に入っていない。
それなのに国内販売の総合1位は、軽自動車のN-BOXだ。売れ行きが伸びる2023年3月には、2万7811台を届け出した。
2位は小型車のヤリスで、同月に2万2322台を登録したが、この台数には5ドアハッチバックのヤリスに加えて、SUVのヤリスクロス、スポーツモデルのGRヤリスも含まれる。また軽自動車の販売2位はタントだが、2023年3月は1万5251台だから、N-BOXの55%に留まる。
つまり今の国内販売では、N-BOXが他車に圧倒的な差を付けて1位になる。2023年1~5月に国内で新車として売られたホンダ車の内、40%をN-BOXが占めた。
ひとつの車種が国内販売台数の40%に達すると、そのメーカーの販売バランスに大きな影響を与える。例えばフィットは、かつてはホンダの最多販売車種だったが、N-BOXが同じ価格帯で登場すると需要を吸い取られた。
またN-BOXの絶好調は、ホンダのブランドイメージも変化させた。かつてのホンダは、高性能車のメーカーとされたが、N-BOXが40%を占める今は「小さくて実用的なクルマのメーカー」だ。従ってミドルサイズ以上の車種は売れ行きを下げた。
例えばステップワゴンは、2022年に発売された設計の新しいミドルサイズミニバンだが、2023年1~5月の1か月平均登録台数は2630台だ。
ライバル車のノアは8090台、ヴォクシーは7990台、セレナ(2023年1~3月まではノーマルエンジンのみを登録)は5310台だから、ステップワゴンは圧倒的に少ない。ここにもホンダのブランドイメージのダウンサイジングが影響を与えている。
■スズキに近づきつつあるホンダ
ホンダ フリード。コンパクトで車内の広いフリードは「小さくて実用的なクルマのメーカー」というホンダのブランドイメージに合致する
その代わりコンパクトミニバンのフリードは好調だ。2023年1月と3月の小型/普通車登録台数ランキングで、唯一上位10車に入ったのがフリードだ。
発売は2016年だから既に7年を経過して、ハイブリッドや安全装備の設計は古い。それでもフィットを始めとする設計の新しい車種を押さえて、ホンダの国内販売ではN-BOXに次ぐ2位だ。2023年1~5月の1か月平均登録台数は7250台に達した。
これもまた今のホンダのブランドイメージに基づく。「小さくて実用的なクルマのメーカー」だから、コンパクトで車内の広いフリードは、ブランドイメージと親和性が高い。
つまり「軽自動車のN-BOXと小型車のフリード」が今の国内におけるホンダ車の双璧で、この2車種を合計すると、国内で新車として売られたホンダ車の53%に達する。設計の古いフリードの好調な売れ行きは、今のホンダの象徴だ。
そしてホンダの販売店によると「N-BOXは2023年の終盤に次期型が発表され、2024年に販売を開始する可能性が高い。フリードも2024年中には次期型にフルモデルチェンジされる」としている。
そうなるとN-BOXとフリードの魅力がさらに増して、軽自動車とコンパクトな車種に向けた依存度も一層強まる。ホンダは全長が4m前後のコンパクトSUV、WR-Vも発売予定で、これも好調に売れるだろう。今のホンダはスズキへ急速に近付いている。
そこに明確な戦略があるとは思えない。それを示すのが、ホンダが車種の廃止と復活を繰り返していることだ。
シビックとCR-Vは一度廃止して復活させ、後者は再び廃止した。オデッセイも一度廃止して、2023年末に復活させる。アコードは新型の国内投入が遅れ、今は実質的に廃止された状態だ。ここまで車種の廃止と復活を繰り返すメーカーはない。
自分の愛用する車種が廃止されると、ユーザーはメーカーから見捨てられた気分になり、他社に移ることも多い。車種の廃止は苦渋の選択だが、ホンダは少なくとも外部から見ていると、安直に判断しているように思える。確固たる戦略があれば、販売する車種の朝令暮改も発生しない。
■小さなクルマ造りは今後の電動化に恩恵をもたらす
2023年5月に発表されたヨーロッパ向け新型EVのe:Ny1
そこを改めると、ホンダは再び販売ランキングの上位に返り咲ける。N-BOX、フィット、ヴェゼル、ステップワゴンなど、いずれも商品力は高いからだ。
フィットは、全長が4m以下、全高も立体駐車場を使いやすいサイズに抑えたコンパクトカーながら、広い居住空間と優れた積載性、快適な乗り心地を両立させた。ステップワゴンも、走りの良さではミドルサイズミニバンの1位だ。
今のホンダは開発能力は高いのに、販売戦略とブランド構築の失敗で、好調に売れるべき車種を落ち込ませている。そこを見直せば、以前のようにトヨタに次ぐ国内販売の2位メーカーになる。
またホンダは、2040年までに、すべての新車販売を電気自動車と燃料電池車にすると公表している。直近では、欧州において、電気自動車のe:Ny1を発表した。
この電気自動車の時代にメリットをもたらすのが、今のホンダが得意な小さなクルマ造りだ。大きなクルマは長距離移動向けで、ボディも重いから、大型の駆動用電池を必要とする。電力消費量が増えてエコに逆行し、充電時間は長引き、車両価格も高騰する。
日産サクラのヒットからも分かるように、少なくとも日本で電気自動車を普及させるなら、コンパクトで軽量かつ割安に造ることが必須条件だ。
今のN-BOXとフリードを双璧とするホンダの国内販売状況は、電気自動車への移行をスムーズに行う上で都合が良い。ホンダのブランドイメージは「小さくて実用的なクルマのメーカー」だが、そこにエコロジーを加えると、将来の厳しい販売競争を乗り越えることも可能になる。
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