一部改良を受けたトヨタ「ヤリス」に、サトータケシが試乗した。トヨタのハイブリッドの進化を考える!
アクアとヤリスの差
身もフタもない言い方ですが、トヨタのアクアってなんのために存在するモデルなのだろう? と、思うことがある。アクアは日本国内市場専用のハイブリッド車であるけれど、2021年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した世界のトヨタ「ヤリス」はほぼ同サイズで、アクアとまったくおなじハイブリッドシステムを搭載する仕様もラインナップするのだ。
「Z」という最上級グレードのFFモデルで両者の諸元を比べてみると……。
アクアは全長×全高×全幅が4050×1695×1485mm、ホイールベースが2600mmで、税込み256万5000円。
ヤリスは全長×全高×全幅が3950×1695×1495mm、ホイールベースが2550mmで、税込み249万6000円。
排気量1.5リッターの直列3気筒エンジンを軸にした組み合わせたTHSというハイブリッドシステムは共通であるけれど、アクアが5.0Ahのバイポーラ型ニッケル水素電池を使うのに対して、ヤリスが4.3Ahのリチウムイオン電池を採用しているという違いがある。
国土交通省の審査値で燃費を比較すると、アクアZが33.6km/L、ヤリスZが35.4km/L。これはアクアZの車両総重量が1405kgであるのに対してヤリスZが1365kgと、若干軽量であることや、形状の違いによる空気抵抗の差、前述した電池の違いからくると思われる。
考えれば考えるほど、「ヤリス1本でよくね?」と、思っていた矢先、トヨタ・アクアがマイナーチェンジを受けたというので、早速試乗に連れ出した。グレードは最上級のアクアZだ。
エンスージアストのセカンドカーにピッタリか運転席に座ってまず感じるのは、インテリアのフィニッシュのクオリティの高さだ。ステアリングホイールのレザーの手触りも、オプションの合成皮革を用いたシートの感触も良好だ。
ヤリスとの一番の違いは、シフトセレクターがセンターコンソールではなく、ダッシュボードの空調操作パネルの下に配置されていること。これによりセンターコンソールに余裕のある空間が生まれ、ドライバーの心にもゆとりが生まれる。
何度も書かれてきたことではあるけれど、走りながらしみじみと感じるのはトヨタのハイブリッドシステムのスムーズさだ。モーターとエンジンの連携はもはや名人芸の域に達していて、低速域でモーターが滑らかさを演出、そこから上はエンジンが伸びやかさを表現するという役割分担が、大道芸のジャグリングのようにシームレスに行われる。
以前は、トヨタのハイブリッドに対して、まったりしたドライブフィールが難点だと感じていた。けれど、ドライブモードスイッチで「POWER+」を選ぶと、アクセル操作に対してリニアに反応して心地よく加速するようになる。動力性能も、交通の流れをリードするぐらいなら充分以上。静かで滑らか、好燃費というだけでなく、ドライバビリティも大幅に向上している。
穏やかな乗り心地にも好印象を抱く。軽快なハンドリングを特徴とするヤリスが、時としてソールの薄い昔ながらのスニーカーのようなコツコツとした感触を伝えてくるのに対して、アクアはソールにエアが入った最近のスニーカーのようだ。凸凹を踏んだときのショックを、うまく丸めこんでくれる。
ただし、ハンドリングのシャキシャキ感はヤリスに軍配が上がり、アクアはなまくらとまでは言わないまでも、切れ味で一歩劣る。
結論として、心穏やかに運転をしたい人にはアクア、元気に走らせたい人にはヤリス、といった具合に、きちんと棲み分けができていた。
こう書くと、クルマ好きはヤリスという選択になりそうだ。けれども、たとえばエキサイティングなスポーツカーを1台所有している方がセカンドカーとして選ぶなら、温厚なアクアもアリだろう。今回のマイチェンで、アクアの上級グレードには「ブラインドスポットモニター」や「パーキングサポートブレーキ」といった安全・運転支援装置が標準装備されるようになったから、家族やパートナーが運転する場合でも安心だ。
カタログ値によると、後席のレッグスペースはアクアのほうが50mm広い。前述したようにインテリアの質感は高いから、エンスージアストのセカンドカーとしてなにかと便利に使えそうだ。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
やはりアクアはバイポーラニッケル電池と言うこともあり電動アシストがヤリスより強いです。60キロぐらいまで電気で走ります。ヤリスは35キロぐらいまでです。そして、アクアの方が後席が広い。