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N-VANより不利!? スペーシア ベースは、なぜ200kg積みなのか。開発者に聞いた

掲載 更新 16
N-VANより不利!? スペーシア ベースは、なぜ200kg積みなのか。開発者に聞いた

■ライバルはホンダN-VANか?

2022年8月26日に発売となった、スズキの新型軽商用車「スペーシア ベース」。軽バンには、エンジンを前席下に搭載するキャブオーバータイプと、フロントにエンジンを積む乗用車派生のボンネットタイプの2種類が存在するが、スペーシア ベースは後者のボンネットタイプ。かつてはアルトバンなど低全高系のボンネットタイプのバンがラインアップしていたが、現在ではスーパーハイト系のみとなっている。

スズキの遊べる軽商用車「新型 スペーシア ベース」発売! 乗用ライクな見た目と驚きの使い勝手

スーパーハイト系のボンネットタイプの商用車として2018年7月に誕生したのがホンダN-VANだ。軽キャブオーバーバンのアクティバンの生産終了を経て発売され、アクティバンの需要も取り込む狙いから、アクティバンと同じ最大積載量350kgを実現(300kgのタイプも設定、4人乗車時は200kg)していた。

当時、ボンネットタイプの軽商用車としてはダイハツが軽スーパーハイトワゴンより若干背が高いウェイクをベースとしたハイゼット キャディーを販売中だった。ハイゼット キャディーは2016年6月にデビュー。2人乗り・150kg積みで、ユーザーへのヒヤリングの結果から、人の働きやすさに重点を置くとともに軽積載をコンセプトにしていた。

N-VANはレジャー用途にも使える「+スタイルファン」グレードを設定するなど、純粋に商用車を意識したハイゼット キャディーとの商品性の違いが見られるが、最大の違いはN-VANが4人乗り・最大350kg積みに対して、ハイゼット キャディーは2人乗り・150kg積みである点。この乗車定員と積載のキャパシティの違いが購入の決定に少なからず影響を与えたとみられている。この結果、ボンネットタイプのバンではN-VAN 1強の構図となり、ハイゼット キャディーは2021年3月に静かに市場から去っていった。

■スペーシア ベースは、なぜ最大200kg積みなのか

そして、今回のスペーシア ベースは4人乗り・最大200kgである。N-VANの350kgより150kgも少ない。なぜ200kg積みになったのだろうか? スペーシア ベースの開発責任者を務めたチーフエンジニアの伊藤二三男氏に伺った。

「スペーシア ベースは2人乗りも検討しましたが、やはりいざという時に4人乗れたほうがクルマとしての価値は断然高いと思います。今回は前席に2人がしっかりと乗れることをテーマに、軽商用車初のシートヒーターを装備するなど快適性にもこだわりましたが、緊急時に4人は乗れるという点は譲れなかったですね。

最大積載量についてですが、もともとこのスペーシア ベースは、ホンダさんのN-VANやダイハツさんのハイゼット キャディーも属するゾーンが空白だったので、新しい狙いどころとして考えました。後ろの空間を仕事や趣味などさまざまな用途に使いたかったので、ベース車両は広い荷室を持つスペーシアやエブリイが候補にあがりました。音やヒップポイントの低さではスペーシアがベスト。さらにスペーシアは安全装備も整っていますので、ベース車としてはうってつけでした。

このように乗用車のスペーシアがあり、それを財産として使おうとしたのです。そして、できるだけテコ入れせずに成立させられるかを考えました。あまり構造的な補強をせずに、どこまで耐えられるかという最大積載量の数字が200kg。また、商用車はたいてい商用車用の専用タイヤを採用しますが、今回は乗用車用のタイヤ(ワゴンRスマイルが履くタイヤ)を使うことになりました。

乗用車用のタイヤを商用用途に使おうとすると、じつは耐荷重に対して0.9掛けした耐荷重までしか認められないという制約があって、必然的に最大積載量が決まってきます。そこで割り出したのが200kgという答えでした。そもそも、最大積載量を350kgにしようとすると、足まわりもいろいろな部品を変えないといけなくなるなど専用開発が必要になる部分が出てきます。開発期間や投資金額を考慮して選択肢から外したわけです。

350kgを積みたい方のためには、弊社ではエブリイもあります。また、エブリイのお客様が実際に積載する量を見ていくと、だいたい200kg以下というのが多いという弊社の調査結果もあります」

■スペーシア ベースは市場開拓型の商品

伊藤氏は続けて、スペーシア ベースの独自性について語っている。

「スペーシア ベースの新しさは、乗用車としてしっかり2人が乗れて、後ろは空間を自由自在にいろいろなことに使える点です。それは遊びだけではなく、もちろん仕事にも使えます。他社さんにはありそうでなかったんですよ」

確かに、N-VANは助手席を床面に格納する関係で、助手席が簡易的な設計となってしまっている。もちろん、シートヒーターもない。ハイゼット キャディーは2人しか乗れず、150kgまでしか積めない。

「ここが狙えたのは、エブリイがあって、スペーシアがあってという、その財産があったから。エブリイがなかったら、もっとしっかりと350kg積めるようにということで、ホンダさん(N-VAN)のような方向に行っていたかもしれません」

スペーシア ベースが200kg積みとしたのは、最適解を狙って“あえて”の結果だった。アルト、ワゴンRなどスズキは歴史的に見ても市場開拓型の商品を生み出すのが得意だ。スペーシア ベースはN-VANにはない特徴点で、150kg少ない最大積載量のハンディを打ち消すのか。N-VANの2021年1~12月の合計登録台数(届出台数)は2万6147台で、スペーシア ベースの年間目標販売台数は1万台。スペーシア ベースは控えめな数字のように思えるが、結果やいかに。

ちなみにダイハツには、ハイゼットカーゴをベースに乗用ライクに仕立てた、最大積載量350kgのアトレーがある。ただアトレーは、キャブオーバーバンであり、エンジンが前席下に搭載されているため、振動や騒音、乗降性はボンネットタイプのバンよりも劣る。このアトレーに競合するのは、スズキでいえばエブリイ ワゴン。

スペーシア ベースは、他社や自社も含め、ラインナップの空白に投げ込んだ新ジャンルの軽商用車なのだ。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

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みんなのコメント

16件
  • タイヤの選択肢が増えるから歓迎です、しかも元から14インチ履いてるし。
  • 小林麻美がCMキャラで、初代ワークスが生まれた2代目アルト後期型の5ドアが最初の愛車。最大積載量2名乗車時200kgなんてステッカーが貼ってあった。後部座席は非常用とはいえ3ドアよりも乗降しやすく、バックドアを開けなくても後部ドアからひょいっと積めて使い勝手は良かった。後部座席を倒してちゃぶ台みたいな折り畳みテーブルを置いて、河原でデスクワークはしてみたけど、やはり天井が低くてダメだった。

    その全高アップ版がスペーシア ベースなら基本単独か二人乗りなら使い勝手は良さそう。気分転換に森でも行ってテレワーク出来そう。目標1万台なら高すぎず低すぎずでいいところではないかと。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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