東京ビッグサイト(東京都江東区)で1月17~19日開催の、自動車業界関係者の商談を目的とした展示会「オートモーティブワールド2018」。初日の17日には「エンジン革命が実現するサステイナブル社会」をテーマとした基調講演が行われ、約1000人もの来場者が聴講する中、マツダの人見光夫常務と日産自動車の平井俊弘常務、両社のパワートレイン開発トップが登壇した。
マツダ・人見光夫常務「内燃機関改善に対する目標とマツダの取り組み」
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こうした考察などの結果、「平均的な発電方法で供給された電気を使うEVに対しては実用燃費を10%強、火力発電で最もCO2排出量が少ないLNG(液化天然ガス)でも25%改善すれば追いつく」として、マツダはSPCCI(スパークプラグによる点火を制御因子とした圧縮着火)を用いることで空燃比30:1以上を可能にする「SKYACTIV-X」(スカイアクティブX)を開発。
そして、SKYACTIV-Xの次世代となる第三世代SKYACTIVでは、構造遮熱や空気層遮熱も採り入れることで熱効率56.0%を実現し、LNG発電電力を用いたEVに実用燃費で勝る見通しを明らかにしている。
さらに、NOxとCO2の効率的な低減方法についても提言。乗用車と貨物車との比較では、CO2排出量では乗用車、NOx排出量では貨物車の方が多いことをデータで示したうえで、貨物車で主流のディーゼルエンジンにおいては、燃料としてナフサを有効活用することによって理論空燃比で運転、三元触媒を利用可能とすれば低コストでNOxを大幅に削減できると説いた。
またCO2低減には、前述の石炭発電抑制に加え、最も燃料生産性が高い微細藻類を用いたバイオ燃料によりWell to TankでのCO2排出量をゼロにできる可能性があり、化石燃料の枯渇にも対応できることを示している。
人見常務は最後に、「EVとICEのどちらがCO2排出量が低いかなど関係ない。太陽光や風力で得た発電は火力発電を減らすのに使い、自動車は単独でCO2排出量を減らした方がインフラコストが低くCO2排出量低減効果も大きい」と結論を述べ、講演を締めくくった。
日産自動車・平井俊弘常務「次の100年に向けた自動車エンジンの革新~クルマはまだ空を飛ばない~」
その後、過去100年間のパワートレーンの進化において、EVは航続距離こそ1947年に誕生したたま電気乗用車に対し新型リーフは約10倍に伸びているが、電費は元々効率が高いためほとんど変わらないことを指摘。一方で内燃機関の熱効率は継続的に向上し続け、その中で様々な技術が生み出されて定着し、あるいは「引き出しの中にしまわれた」ことを振り返った。
そして日産は、内燃機関の新たな技術革新として、VCR(可変圧縮比)機構を20年前から開発スタート。マルチリンク式の採用を決定し、その後制御パラメーターが膨大になることや、部品や組み立てに極めて高い精度が求められるといった問題を解決して、初の量産型となるKR20DDET型「VCターボ」エンジンを新型インフィニティQX50に設定したことを説明している。
その一方で、「40年以上前、21世紀にはEVが100%となり、クルマは空を飛ぶと予測していたが、実際にはEVの普及率は数%に留まり、クルマは空を飛んでいない」と指摘。「より遠くへ、より速く、より効率良く」が移動体に求められる進化の方向性としたうえで、エネルギー効率を極めるなら重力に逆らって空を飛んではならないこと、またパワートレインの走行中エネルギー損失はICEではまだ大きくBEVは極めて小さいこと、しかもBEVはレスポンス良く滑らかな走りが得られることを、BEVの拡大に踏み切った理由として挙げた。
だが、バッテリーのエネルギー密度は液体燃料に比べて低く、実用化が期待されている全固体電池でも10倍以上の開きがある。また、内燃機関の役割を変え、発電に限定することで、BEVとICEの長所を組み合わせた「e-POWER」に結実。「火力発電所や舶用エンジンのように作動条件をさらに絞れば、自動車用内燃機関もまだまだ効率をアップできる」と述べ、「引き出しの中に一度しまわれた断熱や廃熱回収といった技術をどれだけ引き出せるかが、今後のさらなる効率アップのカギになる」と今後の展望を示している。
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