英国では最も安いBセグ・ハッチバック
2023年にも、4000名以上の英国人が先代MG 3を購入したそうだ。登場は10年以上前で、ガソリンエンジンは少々ガサツ。洗練の走りとはいい難かった。しかし英国では最も安い1台として、少なくない支持を集めていた。保証も7年付いていた。
【画像】英国「最安」ハッチバック 2代目MG 3 お好みは?競合サイズのハッチバックたち 全152枚
かくして、高支持率だった3は2代目へモデルチェンジ。プラットフォームは一新され、MGとしては初めて、マイルドではないハイブリッドを獲得した。車内にはタッチモニターが与えられ、スタイリングもモダンになった。
MGは、モデル自体をステップアップさせたとしている。英国価格も約1万4000ポンド(約269万円)から、約1万8000ポンド(約346万円)へ上昇している。それでも、ライバルのルノー・クリオ(ルーテシア)やトヨタ・ヤリスより安い。
こちらでは人気モデルの1種だった、フォード・フィエスタは生産終了。お手頃価格のハッチバックは減りつつある。そんな乗り換え先を失ったユーザーを受け止められると、MGは予想している。
目標の年間販売数は1万台。ヤリスの実績の半分程度だが、中国資本となったブランドは、価格を武器にシェア拡大を実現したい構えだ。
MGのデザインスタジオはロンドンにあり、バーミンガムの技術センターで欧州仕様のシャシーが仕上げられた。COVID-19の出国規制が緩められたことで、中国の技術者もグレートブリテン島での開発テストへ参加したという。
サイズはクリオとほぼ同じ 装備は豪華すぎ?
スタイリングは、クリオの廉価版といった印象。全長は4113mm、全幅は1797mm、全高が1502mmで、ボディサイズもほぼ同じ。
パワートレインは、102psを発揮する1.5L 4気筒ガソリンエンジンに、136psを発揮する駆動用モーターが組まれたハイブリッド。トランスミッションは、従来的な3速オートマティックだ。
インテリアは、先代から熟成された印象。ダッシュボードやドアのプラスティックは手触りが良く、シートのクロスはグラフィックが好ましい。
タッチモニターは10.3インチと充分で、グラフィックは高精細。トップ画面にはタイル状のアイコンが並び、メニュー構造は理解しやすい。スマートフォンとのミラーリング機能にも対応する。
トップグレードを選ぶと、駐車時の360度カメラ映像機能も付いてくる。小さなハッチバックには、ちょっと贅沢すぎる装備かもしれない。エントリグレードにカーナビが備わることも褒められるが、試乗車は現在地を正しく表示できていなかった。
タッチモニター下部には、実際に押せるハードボタンが並ぶものの、これはインフォテインメント・システムのショートカットキー。エアコンの温度や送風位置を選べるわけではない。
このショートカットキーを使う場合、スマホのミラーリング中はホームボタンで戻る必要があり、最低でも3度のタップが必要。視線を長時間そらすことになる。クリオにはちゃんと機能するスイッチが並び、1度覚えればチラ見で操作できるけれど。
システム総合194ps 加速の「波」を作る3速AT
運転支援システムのオン/オフはしやすい。タッチモニター右上のアイコンで、簡単に切り替えられる。
アダプティブ・クルーズコントロールは、先行車両との車間距離が必要以上に遠い。並走するクルマへ割り込まれても、不思議ではないほど。車線維持支援は緩やかなカーブでも操舵がギクシャクし、ドライバーがアシストする必要があるようだった。
車内空間は充分といえ、運転席と助手席が不自然に近いわけでもなく、高身長のドライバーが強い不満を感じることもないだろう。後席にも、2名の大人が問題なく座れる。
荷室は241Lで、クリオの254Lより小さい。背もたれを倒し、広げることは可能だ。
さて、ハイブリッドが生み出すシステム総合での最高出力は194ps。最大トルクは43.1kg-mもあり、かなり活発な走りを想像するはず。ところが実際に走らせてみると、数字ほどたくましい印象はない。
とはいえ、一般的なドライバーなら、このクラスの平均以上に速いと感じるはず。高速道路への合流も、登り坂での追い越しも、まったく不満はない。アクセルペダルを踏み込むと、ワイドなギア比を持つ3速ATが、変速する度に加速の「波」を作るが。
回生ブレーキの効きを、3段階から選べるのは便利だろう。最も強くすると、ほぼワンペダル・ドライブが可能となる。
燃費は今ひとつ 高価値でシェア拡大の可能性
シャシーは、クリオと比較すると柔らかめ。路面の凹凸へ揉まれるように、上下する印象がある。だが不快なほどではなく、すぐに落ち着く。アスファルトの剥がれた穴や、補修のツギハギには、大きな影響を受けないようだった。
ボディロールは大きめだが、カーブでは粘り強くラインを辿る。ステアリングはシャープとはいえず、スポーツ・モードでは重くなるというより、不自然な手応えが増す印象。セルフセンタリング性が明確に鋭くなる。
スポーティなハッチバックとはいえないが、全体的な動的特性は悪くない。クリオのように運転する自信を鼓舞することはないものの、先代の3より大幅に洗練度は増しており、このクラスでは褒められる水準といっていい。
燃費は、カタログ値で22.7km/L。今回、筆者が高速道路や市街地などを複合的に300kmほど走らせた平均では、15.9km/Lだった。クリオは18.0km/L前後だから、その差は小さくない。運転スタイルで、大きく変化するといえるだろう。
このクラスの優等生は、フランスのクリオだ。しかし、英国価格が3000ポンド(約58万円)も安い3の訴求力は侮れない。残価設定型プランの支払額も抑えられ、多くのユーザーが必要とする機能を満たし、価値に優れることは間違いないと思う。
ここ数年のMGは、クロスオーバーと電動ハッチバックで、急速に英国でのシェアを拡大中。3が属するBセグメント・クラスでも、同じ変化が起こる可能性はある。
◯:コンフォート志向な動的特性 ハイブリッド・パワートレインのパワフルさ 優れたデジタル技術と上質なインテリア ライバルよりお手頃な価格
△:エアコンの操作性 スポーツモード時のステアリングフィール 余り優れない燃費
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