現代はハイブリッド(HV)に代表されるエコカー全盛期。さらに将来的にはガソリンをまったく使わない電気自動車(EV)の時代となることも予想されている。
そんな今、純粋なガソリンエンジン車を新規に買うのは悪手なのだろうか? エコカーに押され気味のガソリン車にも、まだまだメリットはあるのか? 改めて考えたいガソリン車のメリットとデメリット、そしてお薦めのモデルとは?
東京オートサロンで日本仕様初公開!! 日産新型フェアレディZ 6月下旬正式デビュー!!
文/長谷川 敦、写真/日産、トヨタ、ホンダ、スバル、マツダ、スズキ、写真AC
まずはコスト面から考えてみよう
1997年に販売が開始されたトヨタの初代プリウス。世界初の量産ハイブリッド車でもあり、当時の10・15モード燃費走行で28km/Lという性能を誇っていた
今さらながらの話だが、エコカーの「エコ」は「エコロジー」の略。エコロジーとは本来「生態学」を意味する言葉で、最近は自然環境保護運動を指す言葉としても使われている。従来のガソリン車に比べてガスの排出量が少ないHVやEVがエコカーと呼ばれるのはそれが理由だ。つまりガソリン消費量が少なく、ガソリン代をセーブできる「エコノミー」ではない。
とはいえ、ガソリン代のことを考えてエコカーを選ぶ人が多いのもまた事実。そこでここからは、実際にHVとガソリン車でどこまでコストが変わるのかを考えていきたい。
同グレードのクルマでお得なのはHV、それともガソリン車?
トヨタのカローラはガソリン車とHVの両タイプが販売され、写真のハイブリッドSは車両価格が257万4000円、ガソリン車のSは213万9500円となっている
最初はガソリン車とHVのコストを比較してみよう。HVの有利な点は同じ距離を走った場合にガソリン車より燃料消費量が少ないことだが、そのぶん同グレードのガソリン車に比べて車体価格が高くなりがち。これはバッテリーやモーターなどのハイブリッド用機器を追加しなくてはならないため。約20年前のHV登場時に比べればかなり価格も下がってきているが、まだガソリン車よりは高い。
HVのもうひとつのメリットは、税制面で優遇されていること。皆さんはエコカー減税という言葉をご存じだとは思うが、念のために説明すると、これはHVやEV、燃料電池(水素)車など、燃費に優れたクルマに適用される減税措置を指している。本来2021年4月までの措置だったが、税制改定により2年間の延長が決まっている。
さらになんと言ってもHVはガソリン代を節約できるのが大きい。加えてリセールバリューもHVに分があるのが現状だ。特に今後は法律面でもガソリン車に乗りにくくなる流れにあるため、中古車市場での格差は広がる可能性も高い。反面、ガソリン車側から考えると、程度の良い中古車がお手頃価格で買えるようになるということでもある。
続いて具体的なケースを見ながらHVとガソリン車のコストを考えていくことにしよう。果たしてガソリン車の“復権”はあるのか?
ヴェゼルで比べるコストの違い
ここではガソリン車とHVの両タイプをラインナップするモデルを例にコストを比較してみたい。比較するのは車両価格と税金、ガソリン代で、車体の程度によって大きく変化するリセール価格はここでは考慮しない。
今回はホンダのSUV・ヴェゼルを見てみよう。同車にはFFと4WDがあるが、ここは一般的なFFを例にする。ヴェゼルのガソリン車はグレードGのみで、これに相当するHVのグレードはe:HEV X。エンジン(パワーユニット)が異なる以外は装備などがほぼ同じになる。
車両価格はガソリン車のGが227万9200円。対するe:HEV Xは265万8700円となる。やはり車両価格は約38万円HVのほうが高い。そして税金だが、Gは新車購入時の自動車重量税3万6900円を納めなくてはならないのに対し、e:HEV X(HV全グレード)は免税になる。
そして気になるガソリン代だ。どちらも年間5000kmを3年乗り、ガソリン価格を160円と仮定すると、カタログ値のWLTCモード燃費17.0km/LのGが約14万1000円、e:HEV XのWLTCモード燃費は25.0km/Lなので9万6000円になり、その差約4万5000円。
このヴェゼルでのシミュレーションでは、年間5000km程度の走行距離の場合、新車から3年までのコストはHVに比べて車両価格の安いガソリン車のほうが抑えられるということになる。
あまり距離を走らない場合、ガソリン車とHVの車両価格差を燃料代で吸収するのに時間がかかることが理解できる。程度の差はあれ、車種が変わってもこれは同様
ガソリン車とHVのコストは走行距離で決まる!?
PHV車の充電にかかる電気代はそれほど多くないが、その電気を作り出す際に二酸化炭素は排出されてしまう。これがエコロジー面にどう影響するかは検証が必要だ
先の比較では、実はガソリン車のコストは条件次第でHVに比べても劣るものではないということがわかった。もちろん、より長い距離を乗るのであればHVが有利になるし、今後ガソリン価格がどのように推移するか予想しにくい状況では、燃費の良いHVのほうが安心できる。
また、環境に優しいと言われるHVがよりエコロジーであるのは言うまでもない。とはいえ、バッテリーの製造ラインや廃棄のことなどまで考慮に入れると、本当にHVのほうがエコなのか? という疑問を呈する声もある。しかし、これに関してはまた別の機会に……。
ここまではコスト面だけでガソリン車とHVを比べてきたが、特にクルマ好きな人にとって重要な要素である操縦性や走行音などに関してはどちらが良いのか? 「やはりクルマには排気音を含むエンジンサウンドがないと」という人も多いだろうが、実は初動トルクの大きい電動モーターを積んだHVのほうが運転していて楽しいとの意見もある。ここから先はもう好みの問題なので、この記事ではこれ以上言及しないことにする。
乗るなら今のうち? お薦めの国産現行ガソリン車
現行の純ガソリンエンジン車にはスポーツカーが多い。もともと実用性よりも趣味性が重視されるジャンルだけに、ガソリン代を気にしないユーザーが多数派?
最後は絶滅危惧種(?)のガソリン車で、一度は乗っておきたい国産モデルを紹介していこう。異論はあるかもしれないが、ここで紹介するモデルのどれもが魅力的なのは間違いない。
今後は世界中の自動車に占める純ガソリンエンジンの割合が下がってくるのは避けられない。ただし完全なEV化もまだまだ遠い未来の話だ。長い歴史のなかで進化を続けてきた現在のガソリンエンジンは、出力特性だけでなく、燃費面でも驚くほどの高性能を誇っている。そんな“究極のガソリンエンジン車”に乗っておくのは貴重な経験になるはずだ。
■日産 フェアレディZ
日本を代表するスポーツカーのフェアレディZ。その新型が2022年6月に日本国内で発売される。エンジンは新開発の3.0リッターV6ターボで、最高出力は405PS(298kW)、最大トルクは48.4kgf・m(475N・m)を叩き出す。今や数少ない純ガソリンエンジンの新型Zに乗るチャンスがあるなら、これを見逃す手はない。
■スバル BRZ & トヨタ GR86
2021年に販売が開始された2代目スバル BRZとその兄弟車のトヨタ GR86は純粋なガソリンエンジン車だ。スバル製水平対向4気筒エンジンは先代の2.0リッターから2.4リッターへと拡大され、トルク特性が大きく改善された。
同時に最高出力も引き上げられ、軽量で高剛性な車体と、このシリーズのアイデンティティでもあるFRレイアウトがドライブする喜びを呼び覚ましてくれる。
■マツダ ロードスター
先のモデルに続いてこちらもスポーツカーになる。マツダのロングセラーでもあるロードスターの現行モデルが登場したのが2015年。直噴1.5リッター直4エンジンのSKYACTIV-Gをフロントミドシップに搭載し、これぞスポーツカーと言った小気味良い走りを見せてくれる。
HVやEVでは後発組になるマツダも自社モデルでのHV化を進めており、次期ロードスターもそうなる可能性はある。だから乗るなら今のうち!
■スズキ ジムニーシエラ
根強い人気を保つスズキのジムニーは軽自動車だが、このシエラは1.5リッター直4エンジンを搭載する。現行JB74W型で採用されたこのK15B型エンジンは先代のM13Aよりパワフルになり、オフロードなどの過酷な環境にも耐えるタフさも合わせ持つなど評価は高い。SUVにもエコ化の波は訪れていて、純ガソリンのジムニーシエラは貴重な存在になりそう。
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みんなのコメント
個人的に、ガソリン車に付けたアイドリングストップ機能は無意味でストレスが車と人間にかかる。