ID.4を中心に、フルバッテリーEVの展開を着実に進めつつあるフォルクスワーゲン。その新たな主力モデルと目されるID.7が、中国上海モーターショーでワールドプレミアを果たした。グループの総力を統合した取り組みは、この新しいフラッグシップの登場とともに、新たなステップを踏み出そうとしている。
eモビリティに関する世界最大規模のサプライヤーのひとつに成長
フォルクスワーゲングループ・テクノロジーは、フォルクスワーゲングループを横断する形で、電気自動車関連の技術を提供するサプライヤー事業を担っている組織だ。統括するのは、フォルクスワーゲングループの技術担当取締役、トーマス・シュモール。バッテリー/充電システムおよびエネルギー/技術コンポーネンツ/プラットフォームビジネスの4部門が、その活動の柱となる。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
その取り組みはすでに、大きな成果に結びついている。バッテリーや充電システム、電動コンポーネンツといったコアテクノロジーを供給することで、MEBプラットフォームをベースとする車両のトータルでのバリューをおよそ40%向上。フォルクスワーゲンブランドだけでも2020年9月に最初のID.3が納車されて以来、58万台以上の市販車に、その技術コンポーネンツが採用されているという。
ありようを見ればそれはまさに、eモビリティに関する世界最大規模のサプライヤーのひとつと言っていい。巨大なグループを取りまとめたスケーラビリティ、産業リサイクルに至るまで縦断的に統合されたバリューチェーンによる競争力、包括的なコンピテンシーの醸成があることは確かだろう。
ワールドプレミアされたばかりのフォルクスワーゲンID.7もまたその活動を通して、約15年の時間を経て積み重ねられてきた技術力が生んだ、新しい「結晶」に他ならない。とくに、完全なる新世代モジュールとして開発された高効率な「APP550」システムは、アッパーミドルクラス向けBEVの性能的スタンダードを一気に引き上げるポテンシャルを秘めている。
それはつまるところ、フォルクスワーゲングループにおける売れ筋系車種のパフォーマンスが一気に引き上げる可能性が秘められていることを、意味している。
伸びやかなスタイルには、さまざまな「機能美」を採用
なんといっても、WLTPモードで最大700kmという目標設定は衝撃的だ。APP550のアドバンテージは有効巻き線数が多く、ワイヤ断面面積が大きな高効率ステータに依存する。一方でローター側には、強力でよりフレキシビリティに富んだ永久磁石を備えている。特殊な電気シートと機械加工のプロセスを採用することで、システム全体を最適化、効率を高めることが可能になった。
最高出力は210kW(286ps)と、ID.モデルの中でもっともパワフルかつ最大のトルクを発生。とりわけエネルギー消費の面でも非常に優れた効率を実現し、最大で約200kWを謳う大容量バッテリーもまた、破格の航続距離実現に貢献している。
約5mに達するボディサイズとロングホイールベースを組み合わせつつ、空力特性を磨きぬいたフォルムは伸びやかで美しい。一方で短いオーバーハングが、ダイナミックな走りを印象付ける。
大型ディスプレイをはじめとする、フォルクスワーゲン車としては初めてのコントロール系コンセプトの採用、ゆとりある室内空間とおもてなし装備の充実ぶりも含めて、商品力的にも見事な上級シフトぶり・・・確かに、新時代の「フラッグシップモデル」を謳うにふさわしい仕上がりだ。
最大で50%のコスト削減が見込めるユニファイドセル
フォルクスワーゲングループからは、さらなる戦略的ポートフォリオが公表されている。2025年から量産車向けに生産される計画のユニファイドセル(新しい統一規格のバッテリーセル)は(当初予定よりは少しばかり後送りになっているようだが)、ボリュームセグメントで約30%ほど、エントリーセグメントでは約50%に達する段階的なコスト削減を目指している。
2021年のテクノロジー・ロードマップでは、1kWhあたり100ユーロまでバッテリーセルのコストを下げることが目標値とされている。2030年までに、フォルクスワーゲン グループは、パートナーと協力して、ヨーロッパ全域で合計240GWhの6つのセル工場を操業する予定だが、これはすべてのグループモデルの最大80%で利用できるようになるようだ。
世界的なリサーチ会社である北米ブルームバーグNEFによれば、2022年のリチウムイオン電池パックの平均価格は151ドル(およそ137円)。100ユーロ(2023年5月5日時点のレートでおよそ110米ドル)という数字は、ウクライナ情勢など不確定要素はあるものの、フォルクスワーゲングループが持つスケールメリットを活かせばおそらく、不可能な目標ではないだろう。
2023年1月にオフィシャルに発表された実績によれば、2022年のグループ全体では57万2100台のBEVをユーザーに納めている。EVのシェアは、前年の5.1%から6.9%まで成長した。ちなみに原材料の供給不足によるバックオーダーは西ヨーロッパにおいて180万台に達しているが、そのうち31万台(17%超)がEVだという数値も、衰えない勢いを感じさせる。
内燃機関の「リミット」延長は歓迎。だが一方で「現実解」はやはり・・・
欧州委員会におけるICEの扱いを巡った丁々発止は、各国の思惑が交錯する中で様々な憶測を生んでいるものの、電動化に向けた流れが停滞することはあり得ない。もちろんカーボンニュートラルな合成液体燃料が実用化されることで、魅力的なパワートレーンの多様性がある程度の期間、保たれることは歓迎したい。
個人的にも、「BEVが当たり前」な近未来のマイカーライフを、そろそろ真剣に考え始めている今日この頃、フォルクスワーゲングループのようなスケールメリットを生かした取り組みには、いろいろな意味で期待感があおられる。
2025年をメドに発売が予定される約2万ポンドのエントリーBEVハッチバックにはもちろん、モジュールの組み合わせによっては500kW(680ps)のハイスペック仕様にまで対応可能だという。お得感まで含めた多様性と信頼性というアドバンテージは、そうとう大きそうだ。
発電環境や充電インフラといった基幹技術の進化も常に見据えながら、これからの「愛車と付き合う毎日」をいろんなパターンでイメージしてみるのも、なかなかに楽しい。
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みんなのコメント
充電に時間が掛かるとお出かけの足止め時間になりますし、施設を探す手間、やっと着いたら充電設備が少なくて順番待ち、中には充電が終わっているのにオーナーさんがどこかへ行ってしまって不在なんて話もよく聞きます。
今後、電気自動車を増やすなら、自宅充電にしたり、カセット式のバッテリーを交換すれば良い等の工夫が必要です。