必ずしも成功するとは限らないフルモデルチェンジ。では、どうすれば失敗せずにすむのか? そのキーワードのひとつに間違いなくあげられるのが“原点回帰”。ここでは、原点回帰で大成功した5モデルを紹介したい。
文/FK、写真/スズキ、ダイハツ、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、FavCars.com
見た目もどこか懐かしい現行「ホンダ・ステップワゴン」に垣間見える初代モデルの魂
カタマリ感のあるボディによる安心感とシンプルで誰にでも似合うような自由なフォルムを表現したステップワゴン
「#素敵な暮らし」をコンセプトに、ユーザーの生活スタイルに合わせて暮らしを豊かにするアイテムになることを目指して開発された現行のステップワゴンが登場したのは2022年5月のこと。
クルマ好きのなかには、そのデザインを見たときに「初代や2代目に似ている」と思った人も少なからずいたのではないだろうか。
そう、現行モデルの際立つボックスシェイプは、間違いなく初代と2代目を彷彿とさせるデザインであり、それは縦基調のリアコンビネーションランプにも見てとれる。
このシンプルで誰にでも似合うようなデザインをはじめ、日常シーンのほとんどをモーターで走行し、低燃費で滑らかな走りを実現する2モーターハイブリッドシステムe:HEVの採用、車両間隔をつかみやすい視界、乗り物酔いをしづらくする水平基調の室内空間、多様なシートアレンジなどが好評を博して発売約1カ月時点での受注台数は2万7000台を超え、月間販売計画の5倍以上となる好調な立ち上がりとなった。
また、ミニバンで求められる快適性もきわめて高く、ゆとりある車内空間でドライバーも同乗者も快適なドライブができるよう、ロングホイールベースに加えてトレッドを前後ともに拡大したことで大柄な車体でありながらも直進・旋回時の高い安定性を実現。
加えて、リアを中心に遮音材や吸音材を追加し、かつフロアの剛性を高めることで1列目から3列目までの全席において静粛性や乗り心地の良さを高次元で兼ね備えた走行性能も獲得している。
このように初代が掲げた“家族みんなの使い勝手=優れたユーティリティを徹底追求”は、現行のステップワゴンにもしっかりと継承されているのだ。
「スズキ・アルト」は初代モデルのコンセプトを忠実に受け継ぐお買い得な一台
現行アルトは親しみやすさを演出するために丸みを帯びた柔らかなフォルムのなかに楕円形のモチーフを取り入れ、小さな車体でも安心感のある立体的な断面にこだわった造形が特徴だ
1979年5月に自動車業界初の全国統一車両本体価格と47万円の低価格で登場したアルト。
その上級小型車の縮小版とは一線を画した“暮らしに役立ち、優れた経済性をもつクルマ”、“物品税のかからない商用車規格でありながら乗用車スタイルのクルマ”という斬新なコンセプトが支持を集めて大ヒットを記録した。
その後、42年間8代に渡って多くのユーザーに支えられ、“スズキの軽自動車を代表するモデル”として、今もなお現役として販売が続けられている。
そんなアルトは2021年12月のフルモデルチェンジによって9代目が登場したが、そこには先代モデルで華麗なる復活を遂げたホットモデル“ワークス”の姿はなかった。
9代目では世代を超えて親しみやすく愛着のわくデザインを採用して内外装を一新するとともに、従来のR06A型エンジンとエネチャージの組み合わせに加えてR06D型エンジンとマイルドハイブリッドの搭載によってWLTCモード燃費で軽自動車トップの27.7km/Lを達成するなど、初代アルトが目指した“暮らしに役立ち、優れた経済性を持つクルマ”を色濃く打ち出したのだ。
車両本体価格も94万3800円から137万9400円とリーズナブルでありながら、スズキの予防安全技術であるスズキ セーフティ サポートを全車に標準装備。
加えて、広い室内空間の実現、豊富な収納と使い勝手の良い装備の搭載、さらには優れたボディ剛性と防音・防振対策による快適な乗り心地と静粛性を実現するなど、日常の足としては必要にして十分なスペックが与えられた。
それだけに、いまや贅沢品になりつつある軽自動車のなかにあって、アルトの現行モデルは原点回帰ともいえる軽自動車といえるだろう。
“マルチに楽しみ尽くせる軽RV”を打ち出したイメージ戦略が奏功した「ダイハツ・アトレー」
商用車ならではの広い荷室に加え、乗用車感覚の装備や質感にこだわった内外装デザインや独自の工夫を多数採用したアトレー
ハイゼット カーゴとともに行われた2021年12月のフルモデルチェンジで、通算6代目へと進化を果たしたアトレー。
商用車のアドバンテージである積載量と積載スペースを活かした4ナンバー化はもとより、全車速追従機能付アダプティブクルーズコントロールやレーンキープコントロールの装備、FR車のキャブオーバーバン初のFR用CVTや路面状態や目的に合った3つの走行モードを選択できるクラス初となる電子制御式4WDの採用などが話題を呼び、発売1カ月で月販目標の8倍となる約8000台の受注を記録する好調なスタートを切った。
では、軽乗用車にカテゴライズされていた先代モデルはどうだったのかといえば、実は6代目に負けず劣らず、発売約1カ月の受注台数は月販目標の1500台に対して約6000台に到達。こちらも順調な初速を示していた。
また、5代目は空間効率を徹底追求するとともに快適性&質感の向上、さらには装備の充実を図ったうえでお買い得な価格に設定されていたこともあり、2011年までは毎年1万台以上の新車販売台数を誇っていたこともまた事実。
しかし、2012年以降は徐々に右肩下がりとなり、晩年の2021年には2905台にまで落ち込むことに……。
2005年のデビューから16年の歳月が経過していたこともあり頭打ちの状況にあったことは否めなかったが、そんな状況のなかで登場した6代目は充実の機能と装備に加え、“マルチに楽しめる新感覚の軽RV”と銘打ったことでアウトドアユーザーの取り込みにも見事に成功!
巧みなイメージ戦略もアトレー復活に大きく貢献したといえるだろう。
軽いは正義! デビューから8年経った今なお売れ続ける4代目「マツダ・ロードスター」
誰もが一瞬で心ときめくデザイン、誰もが夢中になるドライビング体験、誰もが開放的でリフレッシュできる気持ちよさがキーワードとなった4代目ロードスター
人馬一体をキーワードに開発され、国内外で高く評価された初代ロードスターが国内でデビューしたのは1989年9月。必要のないものは極力そぎ落とし、クルマの本質を磨き上げた初代NA型は国内で約12万台の販売台数を記録する大ヒットモデルとなった。
しかし、1998年1月にデビューした2代目NB型と2005年8月にデビューした3代目NC型は予想に反してセールスは低迷。国内販売台数も2代目は約3万台、3代目に至っては約2万台にまで落ち込んだ。
いずれも従来モデルから進化を果たしたものの、車両重量の増加や拡大されたボディサイズによってライトウェイトスポーツカーというロードスター本来の良さをスポイルしてしまったことが要因となった。
しかし、2015年5月に登場した4代目のND型で原点回帰を高らかに宣言して汚名を挽回する。
ND型ではアルミ・高張力鋼板・超高張力鋼板の使用比率を高めてボディ剛性を確保しながら、先代モデル比100kg以上もの軽量化を実現。
直噴1.5リッターガソリンエンジンのSKYACTIV-G 1.5をフロントミドシップに搭載した他、50:50の前後重量配分、徹底した低重心化によって軽快な走りを取り戻してみせた。
その進化は止まることなく、2023年10月の大幅商品改良では現代に求められる新たな安全法規に適合させるべくマツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)、スマート・ブレーキ・サポート、進化したマツダコネクトの採用など、最新の先進安全技術やコネクティッド技術も搭載された。
そんなND型は国内販売台数もNB型、NC型を上回る5万台超えを記録するなど、デビューから8年以上が経過したいまもなお好調なセールスを続けている。
5ナンバーサイズへのダウンサイジングで名声を取り戻したS15型「日産・シルビア」
S15型シルビアのグレード構成はターボエンジンのスペックRと自然吸気エンジンのスペックSのふたつが設定され、それぞれにエアロパーツを標準装備した派生グレードも設定された
バルブ絶頂期に登場して大ブレイクしたS13型の後を受け、1993年10月に登場したS14型シルビア。スタイリングイメージやグレード構成は先代を継承したものの、3ナンバーボディへの移行などが災いして人気を落とすことに……。
1996年6月にはマイナーチェンジでシャープなエクステリアに刷新したが、人気回復の起爆剤とはならず販売台数もS13型に比べると約1/3にまで落ち込んだとも言われている。
しかし! 1999年1月にデビューした7代目のS15型が、S14型で失った人気を取り戻した救世主になったことは周知のとおりだ。
S15の見どころとなったのはボディを5ナンバーサイズに戻してスリム化を図ったこと、さらには足回りやボディ剛性の強化が行われたこと。
また、グレード構成も従来のK's、Q's、J'sの3つから、ターボエンジン搭載のスペックRと自然吸気エンジン搭載のスペックSのふたつに変更。なかでも抜群の人気を誇ったのが上位グレードのスペックRだった。
MT車で250PS、AT車で225psを発生した2.0リッター直4 DOHCターボエンジンのSR20DETを皮切りに、クロスレシオ化と1~3速にトリプルコーンシンクロを適用した6MT、後輪を操舵させることでレーンチェンジや旋回時の車両安定性を高める電動スーパーハイキャスパッケージ、直進安定性と旋回性のバランスに優れるヘリカルLSDなど当時の日産の技術の粋を集めた、走りに振った機能が充実。
このように華麗なる変身を遂げたS15型は販売期間が3年11カ月(S14型は5年3カ月)と短期間だったこともあって販売台数はS14型に及ばなかったものの、原点回帰で成功を収めた一台であることは誰もが認めるところだろう。
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ステップワゴンは売れてないし、原点回帰したシンプル安価なアルトは先代でしょう。