長引くコロナ禍で、クルマの価値が見直され、特にファミリー層には大人数が乗れる車種が注目されるようになった。そんな中、改良によって人気を集めているカテゴリーがある。今回はその最新モデルを紹介する。
「SUVほど車高が高くなく、セダンやハッチバックより室内空間が広いコンパクトカーが欲しい」そんなファミリーのためのクルマが今回紹介するコンパクトMPV(マルチパーパスビークル)だ。
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トヨタ『シエンタ』は2003年に初代が誕生。コンパクトなボディーに7人乗車のミニバンの利便性をプラスしたクルマとして人気を集め、2022年8月に3代目が発売された。後席用のスライドドアや5ナンバーサイズのボディーはそのまま。全高を高くすることで居住空間を拡大した。
パワーユニットは1.5LガソリンエンジンのFF車と、1.5Lガソリンエンジン+モーターのハイブリッドを用意。ハイブリッドはFFと2モーターの4WDが設定されている。
一方、BMW『2シリーズ アクティブツアラー』は2014年、BMW初のFF車としてデビュー。当時3列シートの『グランドツアラー』もあったが、2022年6月にフルモデルチェンジした2代目は2列シートだけのラインアップとなった。
パワーユニットは3気筒1.5Lのガソリンターボと4気筒2.0Lのディーゼルターボ、どちらも7速ダブルクラッチミッションが組み合わされている。
それぞれ試乗してみると、大きく進化していることがよくわかる。『シエンタ』は多彩なシートアレンジはもちろんだが、走りのよさに驚かされる。サスペンションの設定がファミリーカーのレベルをはるかに超えているのだ。
カーブの続くワインディングでもキビキビとしたハンドリングで走りこなす。下り坂での回頭性も軽快感があり、高速道路などでの大きなカーブでは、高速コーナリングが安定している。この走行性能は、BMWのお株を奪いかねないほどレベルが高い。
一方の『アクティブツアラー』は、最新のBMWテクノロジーが投入されている。運転席まわりではメーターやATシフトを刷新。先進機能リバースアシストも便利だ。クルマが時速35km以下で直前に前進したルートを最大50mまで記憶し、同じルートをバックで正確に戻ることができる。狭い道ですれ違う時などに便利な機能だ。
また、Amazon Alexaも自宅にいる時と同じように使える。車内と部屋との違いが少ない、新しいファミリーカーを目指しているのもこのクルマの特徴だ。
トヨタの7人乗り最小ミニバン トヨタ『シエンタ』
トヨタ『シエンタ』
Specification
■全長×全幅×全高:4260×1695×1695mm
■ホイールベース:2750mm
■車両重量:1370kg
■排気量:1490cc
■エンジン/モーター形式:直列3気筒DOHCガソリンターボ+交流同期モーター
■最高出力:91PS/5500rpm+80PS
■最大トルク:120Nm/3800~4800rpm+141Nm
■変速機:電気式無段
■燃費:28.2km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:291万円
※「Zハイブリッド 7人乗り」
フロントのバンパーは黒くて大きな樹脂製を採用。こすってもぶつけてもあまり目立たないようになっている。前輪の前部も黒いプロテクターが備わっているのも同じ理由。
ドアウインドウの下縁を水平にし、ウインドウの面積を大きくしたことで見切りがよくなった。ボディーの全幅は1695mmだが、全高を高くしており、室内の狭さは全く感じない。
リアゲートのウインドウも大きく、視界はしっかり確保されている。ゲート自体もボディー幅ギリギリまで開口部が広がっている。開口部は地面から510mmと低く荷物を出し入れしやすい。
スポーティーでダイナミックに進化 BMW『2シリーズ アクティブ ツアラー』
BMW『2シリーズ アクティブ ツアラー』
Specification
■全長×全幅×全高:4385×1825×1580mm
■ホイールベース:2670mm
■車両重量:1600kg
■排気量:1955cc
■エンジン/モーター形式:直列3気筒DOHCガソリンターボ+交流同期モーター
■最高出力:150PS/4000rpm
■最大トルク:360Nm/1500~2500rpm
■変速機:7速AT
■燃費:19.5km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:476万円
※「218d エクスクルーシブ」
最新のBMW車のフロントデザインは、キドニーグリルを大きくし、左右のヘッドライトを薄くすることで全体的に迫力を感じさせるように演出している。
ドアウインドウは上下の高さを抑え、リアからCピラーにかけてクーペ的なイメージを演出。先代は全高が1550mm以下で一般的な立体駐車場に対応していたが、新型は1580mmとわずかに拡大。
リアゲートのウインドウは上下を狭くし、テールランプも高めに設定。全体にテールアップしたデザイン。ゲート開口部の下縁も地面から650mmと高めとなっている。
実用性と先進性を追求した使い勝手のいいMPV
トヨタ『シエンタ』
エンジンルーム
ハイブリッド、FF車のエンジンルーム。1.5Lガソリンエンジンとモーター1基を搭載。静粛性は高く、スムーズで俊敏に動く。
運転席と各種装備
シフトはインパネに組み込まれており、前席のサイドスルー、2列目へのウォークスルーが可能。前席周辺の小物入れは10か所以上。
シートスペース
運転者の体をしっかりホールドする前席。2列目は左右別々にスライド、リクライニング、フラットにできる。3列目の足元は狭い。
ラゲージスペース
開口部の低い荷室。3列目シートはスライドダウンして床下に折りたたまれ、フラットになる。天井までの高さは1.1mあるので広い。
【 ココがポイント!】後席でも快適に過ごせる空調管理機能
コンパクトカーだが後席の快適性にも気を配っている。天井に配されたサーキュレーターで後席にも空気を効率よく循環させることができる。風速や風向きも調整可能。
【 ココがポイント!】キャンプや車中泊に便利な機能が充実
停電などの非常時に電気製品が使えるAC100V、1500Wのコンセントを荷室とインパネに設置。電力供給時間はガソリン満タンのハイブリッド車、消費電力400Wで約5.5日間。
BMW『2シリーズ アクティブ ツアラー』
エンジンルーム
プレミアムコンパクトと謳うだけあってボンネットは油圧、エンジンにもカバーを装着。2.0Lディーゼルは音と振動が少し気になる。
運転席と各種装備
新世代のインパネを装備。着座位置は高めでハンドルは太めのBMW流。大きな三角窓は見やすく、死角も少ない。
シートスペース
センターコンソールの形状も新しい。後席はスライド、リクライニングし、足元は狭くない。ガラスルーフは後席後方まで広がっている。
ラゲージスペース
奥行き、左右幅とも荷室は広々している。サブトランクも用意。背もたれは4:2:4で可倒するので、左右に人が座って長尺物も収納できる。
【 ココがポイント!】刷新された操作系のインターフェイス
シフトレバーを廃止した新デザイン。操作系スイッチはセンターアームレストに集中させている。センターコンソールでスマホのワイヤレス充電が可能。
【 ココがポイント!】メーターとコントロール系まで一体化した大型液晶
BMWの新しいインパネは1枚の大型液晶画面を湾曲させるデザインを採用。メーターとコントロール系が一体化しており視認性も高い。
実用性なら『シエンタ』、高級感や先進性なら『アクティブ ツアラー』
トヨタ『シエンタ』
[運転性能]パワフルではないがハンドリングの素直さとコーナリングの走りはコンパクトファミリーカーのレベルを超えている。19点
[居住性]室内高も高く、狭さを感じさせない空間。しかも5ナンバーサイズ。3列目シートもヘッドクリアランスは十分。18点
[装備の充実度]安全、快適装備は充実しているが、大半がオプション装備なので、充実させていくと当然ながら支払い額も増える。17点
[デザイン]ファミリーカーとしての使い勝手を優先したエクステリアデザイン。室内はもう少し明るめの色味があるとベター。18点
[爽快感]気持ちよく走ることができるファミリーカー。もう少しパワーが、と思うがこのクラスなら十分かもしれない。18点
[評価点数]90点
BMW『2シリーズ アクティブ ツアラー』
[運転性能]スポーティーなイメージより安全を重視したファミリーユースの設定。操作系やメーター系など先進性を楽しめる。18点
[居住性]前席はややタイト感のあるコックピット。後席はスライド量も多くリクライニングもする。包まれ感のある室内空間。18点
[装備の充実度]撮影車は「エクスクルーシブ」グレードで、オプション装備品で100万円近い金額だった。ベースモデルは418万円。17点
[デザイン]新世代のデザインはキドニーグリルを目立たせようとしている感が強い。室内は随所に新しさが感じられた。18点
[爽快感]MYモードを選択して、状況によりドライブフィールを変えて走る楽しみがある。1.5Lのガソリンターボも気になる。18点
[評価点数]89点
【OTHER CHOICE】なぜ3列シート、7人乗りのコンパクトカーは少ない?
コンパクトサイズのファミリーカーで、3列シート、7人乗車のクルマを探してみると、国産車では今回紹介したトヨタ『シエンタ』のほかに、唯一、ホンダ『フリード』が存在する。輸入車では、今回のフルモデルチェンジで消滅してしまったが、BMW『2シリーズ グランツアラー』があった。このほか、全長や全高は大きくなってしまうがVW『ゴルフトゥーラン』やメルセデス・ベンツ『GLB』が3列シートを備えている数少ない存在だ。いずれのクルマも3列目シートは折りたためるぐらいなので、実際には短時間の移動用と割り切ったほうがよい。
ただ、3列目シートは、急に子供をたくさん乗せなければならなくなったり、家族3世代で移動する必要が生じた時にはとても重宝する。いざという時のための3列シートではあるが、もう少し、このクラスに車種が増えてもいい気がする。輸入車、国産車とも新型車やバリエーションの進化に期待したい。
ホンダ『フリード』
227万5900円~
VW『ゴルフトゥーラン』
431万5000円~
取材・文/石川真禧照
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2022年11月30日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。
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金に余裕が無ければシエンタ
フツウに近所見ればその流れw