新型アリアの公道試乗会がようやく開催されました。待ちに待ちました!今回の試乗レポートは、アリアの良かったところと気になったところを中心にお伝えします。
だいぶ待ったぜ、アリア。受注好調のようです。
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日産の新型クロスオーバーSUV・EVの『アリア』が発表されたのは、2020年7月15日でした。この発表はワールドプレミアで、グレード構成や主要スペックのアナウンスがありましたが、日本市場での発売日や価格については明らかにされていませんでした。
ワールドプレミアの約11ヵ月後の2021年6月4日に、日本市場のみで販売される予約注文限定車「アリア limited(リミテッド)」が発表され、同日予約注文が開始されました。価格は、2WD・66kWhバッテリーの『B6 limited』660万円から、4WD・91kWバッテリーの『B9 e-4ORCE limited』の790万200円となっていました。
アリアのグレード構成は、2WDと新開発の電子制御四輪駆動『e-4ORCE(イーフォース)』の4WDの2つの駆動方式に、それぞれ、66kWhと91kWhのバッテリー容量を組み合わせた、全4グレードとなっています。グレード間の違いは、駆動方式とバッテリー容量のみとなり、装備には違いがない実質的にはモノグレード構成となります。ちなみに、グレード名の数字は、バッテリー容量を示しています。
2021年11月12日には、カタログモデルで最安価グレードとなる、B6・2WDの価格が発表され、2022年3月下旬に発売すると伝えられました。その価格は、539万円。B6リミテッドとの価格差は、121万円。この価格差が全グレードで同じと仮定すると、最高価格グレード『B9 e-4ORCE』は約669万円となるでしょう。なお、この発表の際、予約注文はすでに約6,800台となったことも伝えられました。受注好調のようです。
今回の試乗会のプレゼンテーションの中で、『B6 e-4ORCE』と『B9』『B9 e-4ORCE』は、2022年夏以降に発売されると伝えられました。
アリアの良かったところ
試乗会のプレゼンテーション資料の最後には「走り出しから300mでわかるアリアの魅力」と書かれていました。試乗を開始して、300mも走らずに体感したアリアの魅力は、静粛性の高さです。サイドウィンドウはすべて合わせガラスを採用、遮音性の高さもしっかりとしています。
アリアの開発コンセプトのひとつが、「リビング」とのこと。まるで自宅のリビングにいるような快適さを実現したといいます。確かに、左右にウォークスルーできてしまう足元空間の広さ、前後15cmスライドするアームレストなど快適な室内空間にしつらえています。後席の広さもしっかりとあります。
デザインもアリアの良いところです。内外装ともにクリーンなデザインでまとめられています。インテリアでは、木の導管を再現した木目調パネルをインパネに採用、未点灯状態ではインジケーターの存在感を消したり、文様をあしらったあんどんタイプのアンビエントライトをドアパネルと足元にあしらうという小技も効かせています。
走行中では、モーターの制御の良さが光っていました。長年、リーフで磨いてきたEV技術の賜物です。走りの特性は、全体的にマイルド。最高出力160kW(213PS)と、突出したハイパワーではないということもありますが、モーター音をしっかりと抑えた自然な乗り味を出しています。EV独特の加速時の「キュイーン」という未来的な音はありません。モーター音はセッティングでなんとでもなるのがEV。過度な演出をせず、ICE(内燃機関)からアリアに乗り換えても、違和感ができるだけ少なくなるように設計されていました。
本物の木といわれても疑わないレベルの質感の高さ。画像左側のドアトリムには、あんどんタイプのアンビエントライトを配している。
気になったところ
今回の試乗では、生活道路も走ってみました。そこで気になったのは、足まわりの固さ。道幅が広く複数車線あるような道路で、路面状態が良いところを60km/hで流しているときの乗り心地は快適です。しかし、速度域の低いところを走行中で、路面の凹凸があるところや段差が連続するようなところでは、突き上げが強く、ヒョコヒョコした感じが出てしまいます。
この乗り心地は、欧州車によくある感じでした。ただ、日本の道路事情ではちょっときびしい場面が出てくることは否めません。リビングをテーマにした高級EV・SUVですから、足まわりはやわらかくしてもいいかと思います。
この気になったところを、試乗後の開発担当との懇談で伝えたところ、次のような回答が返ってきました。
「アリアの車両重量は、最も軽量な『B6 2WD』の約1,900kgから、最も重たい『B9 e-4ORCE』の2,200kgと約300kgの差がある。アリアのサスペンションのセッティングは、その中間に合わせた」
車重が重たいグレードなら、もっと落ち着いた良好な乗り心地になるとのことで、『B6 2WD』は軽快さを感じてもらえれば、とも語ってくれました。
車重に合わせたサスペンションのセッティングを変えてくれれば、と思ったのですが、それはそれで開発コストがかかり、車両価格に反映されてしまうため、痛しかゆしですね。
吸音材をタイヤ内部に備えたアリア専用のタイヤ。ブリヂストンとダンロップの2タイプがある。ホイールはアルミ+樹脂の組み合わせ。空力を重視。
アリアで気になった乗り心地は、日産の開発が悪いわけではなさそう
まったくの新型車でよくあるのが、初期型の足まわりのセッティングがイマイチで、後に改良されるケース。これは国産メーカーがよく陥るところです。この背景には、開発車両の公道テストがしにくいという、日本の法規制があります。だいぶ改善されてきたといわれているものの、欧州や北米に比べるとまだまだ及ばず。国産メーカーは、自社でさまざまな路面状況を再現したクローズドコースを持っています。しかし、リアルワールドのようにはいきません。筆者も新型発表前の試乗会で、いくつかのクローズドコースで走っていますが、そのときのフィーリングは良くても、公道で乗ったら違った、ということはよくありました。
輸入車はこの点で有利です。日本市場で発売するのは、欧州や北米で発売してからとなるのが普通です(国産車でも同じことがよくあります)。日本市場でデリバリーする前に、日本に新型車を持ち込んで、仮ナンバーではない普通のナンバーをつけて公道テストを十分に行うことも可能です。
こういった背景が、アリアの公道試乗会で感じた乗り心地の悪さに影響していた、と筆者は考えました。規制緩和が進んで、もっと仕上げてからデリバリーすることを期待したい……とは思いますが、国産メーカーの売上高構成比の大部分が海外市場であることを考慮すると、一筋縄ではいかないのかな、とも思います。難しい問題ですね。
試乗車は、オプションのブルーグレー色のナッパレザーシートを装着。とてもシックで良い色。
リアシートは左右独立リクライニングとスライドが欲しい
インテリアで気になったのは、後席にも左右独立のシートスライドと、十分に倒れるシートバックが欲しいところでした。これは、アリアのライバルとなる、ヒョンデ『IONIQ 5』にはあった機能で、広い空間の使い勝手を格段に向上させていました。アリアのシートバックは、2段階のリクライニングで前後スライドを備えていません。この点は、日産の開発担当に要望として伝えました。
なくてもいいと思ったリアワイパーは必要だった
エクステリアで気になったのは、せっかくのクリーンなデザインでかっこよくまとめられているのに、リアエンドのリアワイパーの存在。ジャガーのEV『i-PACE』やヒョンデ『IONIQ 5』などは、リアウィンドウ上部のスポイラーが空気に流れを作り、リアウィンドウに付着した水滴を飛ばす構造になっています。
この点について開発担当に伝えたところ、リアワイパーは、運転支援システムのカメラがリアウィンドウ内側に設置されており、雪道を走ったときなどは、汚れをワイパーで取らないと、カメラが機能しなくなるとの回答でした。
リアワイパーをリアウィンドウ上部に設置する方法もありますが、これではワイパーが整流の邪魔となり、空気抵抗が悪くなりそうです。EVの特性上、高速域の空気抵抗をいかに減らすかが重要な課題です。空気抵抗は速度の2乗に比例して大きくなり、モーターが苦手な高速域では、電費を大きく左右させます(モーターは理論上、0回転が最もトルクが太く、回転が上がるに従ってトルクが落ちるという特性がある)。
かといって、リアカメラをリアルーフ後端などに設置すると、前述のカメラのレンズ汚れ対策が講じられません。リアワイパーは必要な存在だったんですね。
『e-4ORCE』に期待したい
アリア B6 2WDの試乗で感じたことと、開発担当の説明から、ますます『e-4ORCE』への期待が高まります。大トロモデルは『B6 e-4ORCE』なのでしょうか?このモデルの試乗が今からとても楽しみになりました。
動画:【日産 アリア B6 2WD 公道試乗会】生活道路を主に走行!ご先祖の「たま電気自動車」もいたよ!ファーストインプレッションはたして?!
※記事の内容は2022年4月時点の情報で制作しています。
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