トヨタの高級車ブランド、レクサスにはミニバンのLMが用意されている。3列シートで6人乗りのバージョンLと、2列で4人乗りのエグゼクティブを選べる。価格は6人乗りのバージョンLが1500万円、4人乗りのエグゼクティブは前後席を区分するパーティションや48インチ大型ワイドディスプレイなど特別な装備が多く2000万円に達する。しかし、その半額近いアルファード/ヴェルファイアよりもレクサスLMがお買い得に感じてしまうという。その理由とは?
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、トヨタ
ありえない!? 超ド級ミニバン[レクサスLM]は2000万円もするのに半額以下の[アルファード]よりお買い得に思ってしまうのはなぜ!?
【画像ギャラリー】レクサスLMの豪華内装と一部改良後のアルヴェルの写真をチェック!!!(6枚)
■超高級ミニバン、レクサスLMは2000万円もする!!
アルファード/ヴェルファイアのレクサス版となるレクサスLMエグゼクティブ4人乗り仕様。受注開始は2023年10月19日で発売は2023年12月、価格はちょうど2000万円
レクサスLMは、トヨタアルファードをベースに開発された。アルファードのパワーユニットは、直列4気筒2.5Lと2.5Lハイブリッドだが、LMは2.4Lターボハイブリッドを搭載する。駆動方式は、後輪に前輪とは別のモーターを備えた4WDのみだ。レクサス車とあって、アルファードに比べて内外装や乗り心地も上質になる。
LMバージョンLの内装は、アルファードの最上級グレードとされるハイブリッドエグゼクティブラウンジE-Four(4WD)をベースにしながら、シート生地が2列目はLアニリン、3列目はセミアニリンの本革に上級化される。
こちらは6人乗り仕様のレクサスLMバージョンL
さらにLMバージョンLでは、2列目に腰の張り出し方を調節する電動ランバーサポートが加わり、ステアリングホイールは本杢+本革巻きに変わる。アルファードの3列目は3人掛けだが、LMは2人掛けだから、中央に収納設備が装着されて座り心地も少し快適になる。
このような違いはあるが、LMバージョンLの価格は1500万円だから、アルファードハイブリッドエグゼクティブラウンジE-Fourの872万円に比べて628万円高い。比率に置き換えると、LMの価格はアルファードの2倍近い設定だ。
LMの価格は一般的には割高と受け取られる。アルファードハイブリッドエグゼクティブラウンジE-Fourと比べた場合、パワーユニットの価格差は、同様の組み合わせを用意するクラウンクロスオーバーのRSとZに当てはめると75万円に相当する。
ショックアブソーバーの減衰力を変化させるAVSなどメカニズムやボディ関連の差額が25万円、遮音性能など造りの違いが20万円、レクサスに付帯される3年間のメンテナンスプログラムやGリンクが30万円として、以上を合計すると150万円だ。
4人乗り仕様は48インチの大型ワイドディスプレイを備えたパーティションのほか冷蔵庫やグローブボックスを装備。シート表皮は最高級本革のL-ANILINE。シートヒーター&ベンチレーションも完備
さらに内装の質感などの違いを少し多く見積って250万円としても、合計400万円になる。価格差が628万円では、LMバージョンLは、アルファードハイブリッドエグゼクティブラウンジE-Fourに比べて228万円割高だ。LMバージョンLの価格は、本来なら1270万円くらいが妥当になる。
このようにレクサスLMは割高だが、現時点では、まったく違う損得勘定も成り立つ。アルファードと姉妹車のヴェルファイアが中古車価格を高騰させているからだ。
※アルファード/ヴェルファイアの価格は一部改良前の価格で展開しています
高級ミニバンとしては新たに加わったこの3列シート6人乗り。「エグゼクティブ」の豪華さも捨てがたいが、「バージョンL」のミニバンらしい使い勝手も魅力
アルファードとヴェルファイアは2024年12月20日に発表される一部改良およびXグレード、PHEV、プレーシャスラウンジを発表予定(ディーラー調べ)だが、販売店ではすでに11月23日から予約受注を開始しているところもある。2025年8月までの生産分まで、前回抽選に外れた人を優先に案内され、一部の店舗を除き、ほぼ買えない状態に陥っているという。
販売店では以下のように説明した。「アルファードとヴェルファイアの受注は長らく停止していました。今は(定額制カーリースの)KINTOでも、アルファードとヴェルファイアは契約できない状態です。また現時点で購入を希望するお客様が多いため、一部改良モデルや追加モデルの各販売会社の割り当て台数がほぼ数日で埋まってしまうと思います」。つまり、一部改良と追加モデルが発表されても、受注停止が今後も続くことが予想される。
■レクサスLMの価格
LM500hエグゼクティブ(4人乗り)=2000万円
LM500hバージョンⅬ(6人乗り)=1500万円
■一部改良後アルファードの価格(2024年12月20日発表予定)
アルファードPHEVスペーシャスラウンジ4人乗り=1480万円
アルファードHEVスペーシャスラウンジ4人乗り=1272万円
アルファードエグゼクティブラウンジHEV6人乗り=1065万円
アルファードZ HEV7人乗り=635万円
アルファードZガソリン7人乗り=555万円
アルファードG HEVガソリンサイドリフトアップチルトシート装着車=565万3000円
アルファードG ガソリンサイドリフトアップチルトシート装着車=492万5000円
アルファードX HEV8人乗り=510万円
アルファードXガソリンサイドリフトアップチルトシート装着車=436万2000円
■一部改良後ヴェルファイアの価格(2024年12月20日発表予定)
ヴェルファイアエグゼクティブラウンジPHEV6人乗り=1085万円
ヴェルファイアエグゼクティブラウンジHEV7人乗り=880万円
ヴェルファイアZプレミアHEV7人乗り=705万円
ヴェルファイアZプレミアターボ7人乗り=670万円
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■アルファード/ヴェルファイアの中古車価格が高騰中
2024年12月20日発表予定のアルファードの最上級グレードとなるのが、スペーシャスラウンジのPHEV4人乗り。車両本体価格は1480万円。アルファードの歴代モデルの中でも最高額。レクサスLM500hのversionL(1500万円)に迫る強気の価格設定
その結果、アルファードとヴェルファイアの中古車価格が高騰した。レクサスLMバージョンLのベースになったアルファードハイブリッドエグゼクティブラウンジE-Fourの中古車価格は1100万~1300万円が中心だ。新車価格は前述の872万円だから、新車時の1.3~1.5倍の価格で中古車が売られている。ほかのグレードも、中古車価格は新車時の1.3~1.5倍だ。
特に登録1年を経過したガソリンのアルファードZと、ガソリンターボのヴェルファイアZプレミアの高値が顕著だ。1年経過すると相場が高くなるのは、輸出先のマレーシアやパキスタンの関税が1年経過すると安くなるから即出しのクルマよりも高くなるというわけだ。
ヴェルファイアのエグゼクティブラウンジPHEVの6人乗りの価格は1085万円となった(2024年12月20日発表予定)
また例年ならば2024年10月から12月、年初にかけて輸出需要が少なくなり、相場がかなり下がるのだが、今年は極端に下がったというほどでもないという。
ここまでアルファードとヴェルファイアの中古車価格が高まると、新車価格の割高なレクサスLMがむしろ買い得に感じられる。レクサスの販売店では「LMは通常通り受注され、納期は6人乗りのバージョンLが約6か月」と説明しているからだ。納期が少し長いものの、レクサスLMであれば普通に購入できる。
そうなるとアルファードハイブリッドエグゼクティブラウンジE-Fourの中古車を1200万円で購入するなら、300万円を加えて、レクサスLMバージョンLを買う方がお得ではないだろうか。
前述の通りレクサスLMバージョンLには、2.4Lターボハイブリッドや豪華な内装など、400万円相当の価値が加わっている。それが新車で購入して300万円の上乗せで手に入るなら、100万円以上は割安になる。
さらに数年後に売却する時の金額も異なる。トヨタのホームページの見積りシミュレーションによると、アルファードハイブリッドエグゼクティブラウンジE-Fourの3年後の残価(残存価値)は約584万円だ。この金額は一般的な3年後の売却額と考えてよい。アルファードの中古車をプレミアム価格の1200万円で買うと、3年後でも半額以下に値落ちする可能性がある。
しかし、レクサスLMバージョンLなら、3年後の残価は780万円だ。これは最低限度額で、実際には3年後なら900万円くらいで売却できる。アルファードハイブリッドエグゼクティブラウンジE-Fourの中古車購入と比べれば、レクサスLMバージョンLは購入時には100万円割安で、売却時にも約300万円は上乗せされるわけだ。合計400万円はトクになる。
以上のようにアルファードハイブリッドエグゼクティブラウンジE-Fourの中古車を購入するなら、レクサスLMバージョンLを新車で買う方が圧倒的に割安だ。言い換えればアルファードやヴェルファイアの中古車は、売却時の値落ちまで含めて考えると、かなり割高な買い物になってしまう。
アルファードとヴェルファイアのようなプレミアム価格の中古車が販売される直接の原因は、転売を行う業者にあるが、納期の遅延や販売停止も大きな影響を与えている。
新車として通常通り購入できれば、新車価格を大幅に上まわる中古車も流通しないからだ。アルファードとヴェルファイアに限らず、トヨタランドクルーザー300&250&70、ホンダシビックタイプR、日産GT-R、スズキジムニーなども、販売停止や納期の大幅な遅延が中古車価格を高騰させている。
購入を希望する人達に、最長でも4か月程度の納期で車両を提供できることは、新車の商品力や顧客満足度を決める大切な条件になる。
長納期や受注停止により新車が購入できないので中古車価格が高騰するなど、市場を混乱させたのでは、優れた商品とはいえないのでは……。新車を発売する前に、需要を正確に把握して、納期の遅延や販売停止を招かないように配慮すべきではないだろうか。
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