中国以外では難しいブランドの急成長
中国の技術企業、ヒューマンホライゾン社が擁するハイファイは、注目すべき新興メーカーの1社に加えられる。高級車ブランドを新たに生み出すという目標を掲げ2017年に創業し、既に3番目の量産モデルが完成間近にある。
【画像】デジタル技術好きなら共感できる? ハイファイ Z 同クラスのBEVサルーンと比較 全140枚
現在のハイファイはバッテリーEVの上級モデルを2車種提供しているが、中国市場での該当カテゴリーでは、25%という高いシェアを獲得しているそうだ。実際のところ、自国でのニーズは高く、輸出する必要性はあまり高くないらしい。
自動車業界の従来的な概念では、驚くほどの急成長だといっていい。恐らく、中国以外では達成が難しいスピード感だろう。
「中国でわたしたちを支持する主な層は、アップルではなくファーウェイのスマートフォンを好むような、若い人たちです。彼らは、西洋のモノが1番という考えが必要ないと気付きはじめています」
「それでも、われわれが目指すところは、世界的なブランドとして認められる立場になることです」。と、同社の最高技術責任者を務めるマーク・スタントン氏が話す。ちなみに彼は、JLR(ジャガー・ランドローバー)の上級幹部に在籍していた経験を持つ。
ツインモーターで672ps 航続距離は555km
ハイファイは2023年9月から、欧州市場で量産車の販売をスタートさせる。真っ先に選ばれた国は、ノルウェーとドイツ。2025年までに右ハンドル仕様を準備し、英国でも提供が始まるという。
当面は中国市場と同様に、今回試乗した「Z」と、大型クロスオーバーの「X」の、2車種での展開となる。数年以内に安価な「Y」が発売予定だというが、それまでは欧州でのシェアは限定的なものだろう。
とはいえ、現地では2022年から販売されているZは、注目に値する。ちなみにゼットではなく、ズィーと発音して欲しいらしい。駆動用モーターを前後に1基づつ搭載し、最高出力は672ps。航続距離は、WLTP値で555kmがうたわれている。
Zの全長は5036mmあり、全幅が2018mm、全高は1439mmと大柄。4ドアのシューティングブレークで、日本の漫画に登場するメカのような大胆さと、BMWのiシリーズから影響を受けたような処理が、スタイリングに展開されている。
ハイファイは、未来の自動車にとってデジタル技術が重要な役目を担うと考えている。それが、視覚的に表現されたともいえるだろう。ただし、デザインのまとまりは今ひとつで、LEDがボディサイドなど随所に散りばめられ、おもちゃっぽく見えなくもない。
新興メーカーとして、突出した個性や特徴を備える必要性があることも理解はできる。新しいブランドだと、周囲に主張する必要がある。それでも、ポルシェ・タイカンは美しく感じられても、Zがそうだとはいえないと思う。
デジタル技術が前面に押し出された車内
ドアは電動で開閉し、ドライバーが接近すると自動的に開くよう設定が可能。通常はピラーに配されたボタンを押すのだが、隣のクルマなどとの接触を防ぐセンサーが身体を検知し動きが止まるため、押した後はすぐに一歩下がる必要がある。
車内は、ヒューマンホライゾン社の強みを活かし、デジタル技術が前面に押し出されている。ボディのフォルムから想像するよりドライビングポジションは高めで、頭上の空間は限定的。高級車という基準では、狭いといっても差し支えないだろう。
リアシート側は、フロアが高めながら、大人がゆったり座れる広さがある。内装素材の質感は低くなく、テスラより高級感がある。雰囲気は悪くない。
インテリアで存在感を示すのは、15.0インチの大きなタッチモニター。ハイファイ・ボットと呼ばれる、インフォテインメント・システムが稼働する。
このモニターは可動式のアームで支持されており、ドライバーがモニターへ目線を送ると、センサーが感知して斜めに向きを変えてくれる。システム自体は応答性に優れ、グラフィックも高精細で、操作性は良いと感じた。
正直なところ、モニターの向きが変わらなくても、使いにくいことはないと思う。最新のデジタル家電を好むような人からは、共感を得られるはず。
息を呑むほど速く洗練されている
確認が長くなったが、実際に路上へ出てみよう。かくして、Zは息を呑むほど速く、洗練されている。まだ創業から10年も経っていないことを、まったく感じさせない。
航続距離も、ハイファイの主張どおりに長い。満充電状態だった試乗車は、スタート時点でメーター用モニターに560km走れると表示されていた。
アダプティブダンパーと後輪操舵システムを備え、市街地でも高速道路でも乗り心地に優れ、扱いやすかった。同時に、今回の試乗ルートではシャシーの能力を探ることはできなかったものの、機敏に身をこなすような印象までは得られなかった。
ハイファイ側も、このクラスの上位に位置するモデルへ並ぶような、操縦性を備えていないことを認めている。そもそも目標にはしなかった、と。だが、もう少しダイナミックさを与えても良かったのではないだろうか。
車載技術や個性的な見た目以外にも、クルマとして際立たせる特長があっていいだろう。確かに上質なドライビング体験は得られているが、薄味ともいえる。新興ブランドとして、動的な差別化が充分ではないように感じた。
Zの完成度は低くない。現代のバッテリーEVとして、評価すべき到達度にはある。デジタル技術を好むなら、筆者以上に強い共感を得られるのかもしれない。
ハイファイ Z(欧州仕様)のスペック
英国価格:10万ポンド(約1750万円/予想)
全長:5036mm
全幅:2018mm
全高:1439mm
最高速度:199km/h(リミッター)
0-100km/h加速:3.9秒
航続距離:555km
電費:−km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:2539kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:120kWh(実容量)
急速充電能力:−kW
最高出力:672ps
最大トルク:83.4kg-m
ギアボックス:シングルスピード/四輪駆動
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小学生にGT-Rのお絵描きさせたらこんな感じ