この記事をまとめると
■ハチ公バスにBEVの車両が導入された
「10WD」「8WS」ゆる~い見た目もハイテクの塊だった! 東京・池袋で見かける「IKEBUS」ってなにもの?
■この車両は中国メーカーからのOEM車だ
■日本の電動化の遅れが目立つ
ハチ公バスにBEVの車両が導入!
2023年2月13日、東京都渋谷区役所内にて、ハチ公バス EVバス導入セレモニーが行われた。ハチ公バス(正式名称は渋谷区コミュニティバス)とは、渋谷区が運行するコミュニティバス。渋谷駅前にあるハチ公像は全国的に有名だが、その忠犬ハチ公にちなんだハチ公バスという愛称は一般公募により命名されている。区民だけでなく、渋谷を訪れる観光客などの移動の足として重宝されている。
ハチ公バスはいままで日本メーカー製の小型ノンステップバスが使用されていたのだが、今回BEV(バッテリー電気自動車)となる小型ノンステップバスを初めて導入し、3月1日の運行開始に先立ち、渋谷区長ほか、ハチ公バスの運行を委託されている東急バス、そして車両提供するEVモーターズジャパン(以下EVモーターズ)両社長の出席のもと(東急バスキャラクターのノッテちゃん、ハチペイ[渋谷区キャッシュレス決済アプリ/ハチ公バスでも使用可能]キャラクターSHIBUYA♡HACHIも出席)セレモニーが行われた。
今回導入されたBEVバスはいくつかあるハチ公バスの運行ルートのうち、神宮の杜(渋谷駅西口~表参道・千駄ヶ谷駅・代々木駅~渋谷駅ハチ公口)で運行予定となっている。BEVバス導入の背景にあるのは、CO2を排出しないBEVの導入による環境負荷低減やBEVならでは静粛性の高さなどがあるとしている。
すでに試乗で実際に運転したことがあるという関係者に聞くと、「慣れるとBEV独特の加速フィーリングや、回生ブレーキフィーリングなどに好感が持てました」とのこと。さらに「いままでのハチ公バスで使っていた車両はディーゼルエンジン車でした。小型バスではとくにその振動や騒音が気になっていたのですが、BEVなので非常に静かなことと安定感があり揺れが少ないですね」とのこと(全長及び全高はいままでの車両と変わらないのだが、全幅が拡大していることも安定感向上にきいているのかもしれない)。ただ「いままでの車両よりガラス面積が大きいように見えるので、その点では年々厳しさを増す夏の酷暑の時期のエアコンのきき具合は気になるところ」とも語ってくれたが、当該車両は高効率の冷暖房を搭載しているので酷暑対応も十分のようである。
さて今回ハチ公バスで採用されたBEV路線バスだが、この車両は中国メーカーからのOEM(相手先ブランド供給)車となっている。つまり、荒っぽい言い方をすれば“中国製バス”となる。しかし、OEMとしているところがミソ。単純に中国メーカーで製造している車両をそのまま右ハンドルにして日本市場に投入しているというわけではない。BEVのコア部分となるパワートレインに至るまで、日本市場向け車両にはEVモーターズジャパンの技術が採用されており、また内装や細かい装備に関してもバス事業者ごとにまさにオーダーメイド感覚で対応しているので、EVモーターズが中国メーカーへ生産を委託しているという表現のほうがふさわしいものと考える。
「今回ハチ公バスにEVモーターズの車両が導入されたのも、より国産に近いバスと言う部分も大きかったようです」とは事情通。従来からハチ公バスで使っているディーゼルエンジン搭載車は、今後、順次代替えの時期を迎えてくるわけだが、「当然BEVだけでなく、なんらかのZEV(ゼロエミッション車)への代替えになっていくだろう」という話も聞かれた。
EVモーターズは日本で工場を稼働させる予定
乗用車では韓国ヒョンデ自動車のBEV、アイオニック5が日本国内でオンライン販売のみですでに500台以上販売しているとのこと。さらに中国・比亜迪(BYD)汽車はつい最近日本でクロスオーバーSUVタイプのBEV、ATTO3(アット3)を発売したばかり。ほかドイツ系を中心にすでに多数のBEV輸入車が日本国内で販売されている。世界的に日本メーカーのBEVにおける出遅れムードがクローズアップされているが、それでも乗用車では日産サクラや三菱eKクロスEV、日産アリア、日産リーフ、トヨタbZ4X、スバル・ソルテラなど日系ブランドのBEVも国内で複数ラインアップ。商用、とくにバス車両では日系バスメーカーでは、ラインアップのない状況となっている。つまり、バス事業者がBEVバスの導入を検討しても純国産BEVバスを選択することができなくなっているのである。
現状ではEVモーターズをはじめ、BYDなど複数の中華系バスが、大型路線タイプも含め販売され、実際に導入されている。しかし前述したEVモーターズのように、程度こそ違うかもしれないが中国でラインアップされている同型車でも、中国でのスペックをそのままに右ハンドルにしてそのまま導入しているというケースはまずない。もちろん非常口の場所などの法規対応はあるが、電池をはじめ日本向け車両には日本製パーツを積極的に採用しているのである。
この背景には、日本国内でパーツ供給できるという利便性もある。昨今では経済安全保障という言葉が飛び交っている。今後日本と中国で政治レベルでの対立が激化すれば、中国政府が日本への中国製BEVバスの補修部品の出荷停止や制限を行う可能性も否定できない。このあたりも、日系メーカー製BEVバスが存在せず、地理的に近く、しかもBEVバスの分野では日本より明らかに中国メーカーのほうが開発ノウハウや販売実績があるので、現状では中華系バスの導入が現実的ではあるものの、政府レベルではなかなか声を大にして“中華系バスで”ともいえないようだ。だが、マーケティングリサーチに長けている中国側が日本のバスのあり方を十分理解し、今回のEVモーターズのように、受け入れる日本側の努力などで先手を打っているようにも見える。
ちなみに、EVモーターズでは近い将来日本国内において組み立て工場を稼働させる予定とのこと。日本国内での需要動向を見て生産車種をどうするかは決めていくとのことだが、こうなると従来の日系バスメーカー以外に新たな国産BEVバスメーカーが名実ともに誕生することになるだろう。
単に車両だけを販売しているわけではなく、EVモーターズだけでなく、BYDも導入事業者には充電施設をどうするかなど、“エネルギーマネージメント”も行っているとのこと。バスを問わず、日系メーカーもBEV開発を進めているが、とにかく諸外国のメーカーに比べてスピード感を感じられないのも致命的に見える。“2026年には……”というような報道も目立つが、少し前のパソコン並みに日進月歩し、群雄割拠しているいまのBEVなどZEVの世界ではこれから3年後なんて、その時のトレンドに対応できるものがここまで出遅れているなかで出せるのか甚だ疑問である。
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みんなのコメント
そこを説明しないで電気自動車サイコーウヒョーと騒ぐ輩は多いね。
そうこの手法パヨクの典型的な手法ですよね