この記事をまとめると
■新型フリードのコンセプトは「Smile Just Right Mover」だ
いま一番ホットなライバル対決! ホンダ・フリード対トヨタ・シエンタを「シート・荷室・走り・燃費・装備」とあらゆる点で比較した
■誰でも使いやすくどんなシーンでも似合う「懐の深いデザイン」を目指している
■クロスターはアウトドアシーンと都会のどちらでも馴染むデザインとした
新型フリードのデザインに迫る
6月28日に発売されたホンダの新型フリードは、先代の「ちょうどいい」の先にある「こころの余裕」を目指し、「Smile Just Right Mover」をコンセプトに掲げました。
では、その余裕を表現したスタイリングの特徴はどこにあるのか? 今回はエクステリアデザインを担当した佐川氏にお話を聞きました。
●先代がもっていた価値をより素直に伝えるデザイン
──では最初に、新型の開発に当たってヒット作となった先代のスタイリングをどのように評価しましたか?
「先代は走りのよさを感じる流麗なデザインだったと思います。ミニバンでありながら勢いを感じる一方、同時に落ち着きや精悍さも持ち合わせていましたね」
──そこがユーザーに受け入れられてヒットしたワケですが、ではなぜ新型はスタイリングの方向性を大きく変えたのでしょう?
「じつは骨格の基本は先代に準じていて、新型はそこからの機能的な進化はもちろん、気もちの面でもより一層使いやすく感じてもらえるようにデザインを行いました。”扱いやすく、快適で十分な空間”というフリードのパッケージのよさをあらためて見つめなおし、それを外観から素直に魅力的に伝えることで、先代の価値をさらに高めると。それを突き詰めることで、誰でも使いやすく、どんなシーンでも似合う『懐の深いデザイン』になったと考えています」
──そのパッケージですが、ボディのシルエットなどに変化はありますか?
「Aピラーの角度はほとんど同じですが、ルーフラインはリヤに向けて少し持ち上げています。サイドウインドウは広くなったイメージですが、じつはBピラー部でのボディとの比率は先代とほぼ一緒なんですよ」
●独自のキャラクターラインは偶然の産物?
──では各パートについてうかがいます。エアーのフロントグリルは、四角いプレスラインの中に薄い開口部を設けたのが特徴です。
「新型はボディ全体を大きなカタマリとして捉えていますが、フロントもできるだけボディパネルを残して『閉じた』カタチにしたかった。四角いプレスラインの表情はありそうでなかった、単純だけどどこか引っかかる印象をもち、同時にバンパーの力強さも表現しています」
──ボディサイドの特徴的な二重のラインは偶然の産物と聞いていますが、実車を見るとキャラクターラインとしてはかなり幅広いですね。
「はい。もともとの案は細い1本のラインでしたが、キャビンのデータとボディのクレイモデルを組み合わせて切削加工した際、境目としてこの2本ラインができたんですね。たしかに『線』と考えれば幅広いのですが、エンボス加工のように奥にも『面』があることで独自の表情になったと思います」
──新型は張りのある大きな面が特徴と資料にありますが、サイド面のピークはキャラクターラインに沿ったかたちでしょうか?
「基本的には沿っているのですが、じつはよく見るとハイライトは後ろ上がりになっているんです。完全に平行だとリヤが重くなってしまうので、前に向けてカタマリを流すイメージですね。ほんのわずかな傾きですが、それによって先代や初代のキビキビした走りや動感を継承しているんです」
アクティブなシーンでも都会でも馴染む万能っぷり
●クロスターはアウトドアだけでなく都会も似合うデザイン
──次にリヤビューについて。新型は安定感やスタンスのよさを狙ったとしていますが、先代からどのように進化させたのでしょう?
「新型はe:HEVのしっとりとして落ち着いた走りが特徴ですから、そのイメージに合わせています。たとえば先代はリヤフェンダーを大きく持ち上げた造形でしたが、新型は少し低重心で座りのよいカタマリにしています。また、新型はリヤのガーニッシュ部にキャラクターラインと同じ高さのラインを引いていますが、これより下の造形はなるべく絞り込んでいくことで、ボクシーなボディでありながら、しっかり足まわりが強調されたスタンスのよい印象になっています」
──横長だったテールランプを縦型にしたのもその一環でしょうか?
「そうですね。縦長にしたと同時に位置を下げて低重心感を出しています。また、より外側に配置することで先代のようなワイド感にも配慮しています」
──次にクロスターについて。アウトドアのイメージとしてフロントやリヤのガーニッシュはよく見かけますが、ドアミラーやドアハンドルもシルバーとした狙いは?
「たしかにあまりない表現かもしれませんね(笑)。新型はどこでも使えることをコンセプトにしていますが、レジャーだけでなく、都会が似合うようなモダンさも大切にしているんですね。シルバーの加飾はそういった狙いで配色しています」
──ボディカラーでは、イエローやグリーンなど明るい色は見当たりませんが
「はい。ここもまたどこでも似合うクルマとして、アウトドアだけでなく、たとえば住宅街でも違和感のない色としています。安心かつ飽きのこないカラーです。今回はクロスターの『デザートベージュ・パール』が新色ですが、『シーベッドブルー・パール』のように他社にはあまりみられないような 深みのある青色も用意しているのでぜひ見ていただきたいですね」
──では最後に。最近のホンダデザインはシンプルでクリーンですが、一部には素っ気ないという意見も見かけます。新型も単なる「箱」にみられてしまう心配はありませんでしたか?
「勢いや押し出しの強いデザインが売れるという話は理解しています。ただ、シンプルというのは単に何もかもなくすのではなく、本当に必要なものを研ぎ澄ますことなんです。そのためには特徴的でアイコニックなモチーフが必要で、出発点が明快であることが重要。今回は、新型のコンセプトを反映したイメージが最初から提示できていたため、シンプルで上質なデザインに着地できたと思います」
──狙いが明快であればシンプルで魅力的なスタイリングが可能ということですね。本日はありがとうございました。
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