ドライバー2020年3月号からスタートした新連載「(じつは)動物カメラマン 三好秀昌の『ニッポン探訪』」。日本全国をSUVで駆けまわり、かわいい動物や最高の絶景を撮影してしまおう!という企画です。第22回は群馬県・足尾や東京都・青梅で撮影にチャレンジした『カモシカ』。撮影テクニックやクルマのインプレッション、その地域のグルメやお土産情報など、取材ウラ話をいろいろと紹介します。
ラリーも野生動物撮影もスバルに縁あり
最初にニホンカモシカ(以下カモシカ)を見たのは群馬県の宝台樹だった。
スバル インプレッサをドライブしてサファリラリーのグループNで初優勝したときだから1995年。もう26年も前のことだ。
動物王国ケニアのラリーを走ったドライバーが日本の野生動物を探しに行く、というスバルの広報誌の取材だった。
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そのときのクルマがインプレッサワゴンだったかレガシィだったかは忘れたが、縁起をかついでクルマはスバル車をチョイスした。
ということで、今回のカモシカ探しの相棒はスバル フォレスターである。
言わずと知れたハンドリングに定評のあるSUVだ。重心が低いボクサーターボエンジンと縦置きトランスミッション、4WDの組み合わせは重量バランスに優れている。それこそ、基本ポリシーは26年前のサファリラリーのラリー用インプレッサと大きくは変わらない。
しかし、そのころのスポーティ4WD推しだったスバルが今や安全をウリにする自動車メーカーに大変身するとは、夢にも思ってなかったのでビックリだ。
それにしても最新のアイサイトの完成度はすばらしい。まさに至れり尽くせりだ。ドライバーへの注意喚起から運転サポートまで万全で、安心・安全に楽な移動ができる。ただ、個人的にはドライバーズシートのランバーサポート形状が体に合わなかったのが残念だった。
かつての撮影場所へと行ってみたが……
以前、カモシカを何度か見かけた足尾銅山跡地に向かった。ここはかつて鉄道が乗り入れていた足尾本山駅の遺構や歴史的な廃坑跡がたくさん残されている。見える景色の色合いに趣があり好きな場所だ。
そのメイン道路わきに「カモシカが見える道」の看板がある。確かにここからカモシカを見た覚えがある。しかも親子のカモシカで、遠かったが写真も撮れた。
しかし、今回は残念ながらカモシカはいなかった。散歩をしていたおじいさんに聞くと、鹿は出るけれど、カモシカは最近見かけないそう。看板はできたが、カモシカは引っ込んでしまったようだ。残念。
最近は登山やハイキングの途中でもカモシカが見かけられるようになったようだ。かつては幻の動物とか呼ばれていた国の特別天然記念物なのだが、ずいぶん里山にまで降りてきている。
彼らとはほぼ出会いがしらの遭遇なので、びっくりしてバタバタとカメラを用意しているうちにだいたい逃げられる。しばらくはじーっとこっちを見つめていることが多いのだが、こちらがちょっと大きく動くと、そのタイミングで走り出してしまう。まるで逃げるタイミングを見計らっていたかのようだ。
動物の撮影はなんかだまし合いのような感じもある。効率は悪いが、獣道のようなところや見晴らしのいいところで動物たちが通りかかるのを待つとじっくり撮影できるようだ。
考えてみれば、こちらが居眠りをしたり、ふと気を抜いたときに動物たちは出てくるような気もする。そんなリラックスした状態で出会うというのが大事なのだ。嗅覚に優れる動物はすでに人間の存在に気づいているのだろうが、こちらに興味がないのか、距離があるためにまったく警戒しない。こういうときは長い間観察できるのだ。
林道に分け入りグラベルロードを走る。砂利道にフォレスターを置いてみると、シチュエーションに溶け込んでとてもよく似合う。WRCチャンピオンだったころのスバルの面影さえ感じさせる。
そのときシャッターチャンスが訪れた
夜明け前に青梅(東京都)のハイキングコースに別の動物目当てで入った。
しばらく歩くと林の中を何かがものすごい勢いで走り回っている。ちょっと怖くなるほどの勢いだ。木にぶち当たりながらあらゆるものを蹴散らして突っ走っているイメージだ。見えないだけに想像が膨らんでいく。
普通、動物は自分の存在を主張せず静かに移動する。そのほうが安全だからである。
イノシシか熊の可能性だってゼロではない。
近づかずにジーと見守っていた。
すると、その騒がしい物体がこっちへ移動してきて木々の隙間から見えた。
カモシカだった。なんであんなにパニックだったのかはわからないが、まだこちらの存在に気付かないまま立ち止まっている。
ちょうどそのとき、カモシカのバックに朝日が差し込んできた。
そーっと位置をズラしてフレーミングをしながらファインダーをのぞくとまだ真っ暗でISO感度が猛烈に上がっている。
相手はまだ動きそうにないので、シャッタースピードを下げてできるだけ感度を下げた。
レンズの手振れ防止のスイッチもオンした。さすがに1/30秒というシャッタースピードでは連写した多くのカットがややブレ気味だったが、数打ちゃ当たるの格言どおり当たりはあった(笑)。
「今回の機材」
カメラボディ:SONY α9
レンズ:FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
「オススメのSUV……スバル フォレスター」
■スポーツ 主要諸元
(8速CVT/4WD)
全長×全幅×全高:4640mm×1815mm×1715mm
ホイールベース:2670mm
最低地上高:220mm
車両重量:1570kg
パワーユニット:水平対向4DOHCターボ
総排気量:1795cc
エンジン最高出力:130kW(177ps)/5200~5600rpm
エンジン最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1600~3600rpm
燃料/タンク容量:レギュラー/63L
WLTCモード燃費:13.6km/L
価格:330万円
〈文と写真〉
三好秀昌 Hideaki Miyoshi
●東京都生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。八重洲出版のカメラマンだったが、ラリーで頭角を現し、そのうち試乗記なども執筆することに。1995年、96年にはサファリラリー グループNで2年連続優勝。そのほか、国内外で数多くのラリーに参戦。写真家としては、ケニアでの豹の撮影など、動物をおもな題材としている
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