ボルボの新しい大型SUV「EX90」がデビューした。スウェーデンで実車を見た小川フミオがレポートする!
理想的なプロポーションを実現
俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記 第2部「少年探偵団編」のVol.34──いすゞ117クーペ
ボルボ カーズが、7人乗りのピュアEV(電気自動車)である「EX90」を、2022年10月9日、公開した。場所は、スウェーデンのストックホルム中心地の特設会場。高い安全性と長い航続距離をもち、「車輪のついたコンピューター」と、ボルボは謳う。
ボルボのラインナップ中、最大サイズのプレミアムSUVである「XC90」の後継として開発されたEX90。「C40」、「XC40」に次ぐ3台目のピュアEVとなるが、ピュアEVとして専用設計されたのは、このクルマが初めてとなる。
「専用設計を活かして、徹底的にピュアEVのメリットを追求しました」
ストックホルムの会場で会ったボルボの広報担当者は、そう語ってくれた。
私が訪れたストックホルムは、11月になっているのに、コートなしでも歩けるほどの暖かさ。
「いつもは20cmの積雪という日もあるのに……確実に地球は温暖化しているのでしょう」と、現地で話したストックホルム育ちの人はため息をついていた。
地球環境が変わっているとしたら、“あたらしい時代のはじまり”を謳うEX90は、ある意味グッドタイミングで登場したいえるかもしれない。環境適合性など、語るべき点が多いモデルなのだ。
クルマが公開された瞬間、会場からはどよめきが起こった。グリルレスのフロントマスクという斬新なデザインが採用されていたからだ。考えてみると、先行発売されているC40に通じる、ピュアEVモデル共通のテーマであるが、サイズがそれなりに大きいだけに、新しさが迫力につながっている。
全体の印象は、とくにサイドウインドウの輪郭などに、従来のXC90とのつながりを感じさせる。
「ただし、完全に新しいプラットフォームによって、より理想的なプロポーションが実現できました」と、デザイン統括のロビン ページ氏は語ってくれた。
高性能仕様も予定会場には、ボルボ カーズのジム ローワンCEOをはじめ、ヘッドオブグローバル&UXを務めるロビン ペイジ氏ら開発スタッフが、デザイン、車両設計、安全、電動技術など、主要部門のメンバーが参加した。
「ホールパワーからブレインパワーへ。テクノロジーの勝利です」
ローワンCEOは、数多くの先進技術を惜しみなくという感じで使い、長い航続距離、速い充電性能、大きく進化した運転支援技術、新しいコンセプトの乗員保護システム、快適性といった特徴を挙げた。馬力でなく“脳力”がセリングポイントなのだ。
驚くのは、111kWhという大容量の駆動用バッテリーだ。床下へフラットに敷きつめてある。操縦安定性にも大きく寄与しそうだ。
前後2基の電気モーターを駆動するツインモーター仕様も用意されるようだし、高性能仕様も予定されているという。高性能版では、最高出力は380kW(517ps)、最大トルクは910Nmに達するとボルボは発表している。
充電システムのアンペア数ははっきりしていないものの、急速充電によって0%から80%までの充電にかかる時間は30分以下といい、満充電での航続距離は(かなり重量級と思うが)600kmに達するそうだ。
もうひとつの大きな特徴が、「人間中心」(ローワンCEO)を謳うように、高い安全性をめざしたところ。LiDAR(ライダー=いくつかの光を使っての画像検出と測距技術)のセンサーをルーフ先端にそなえ、「250m先まで道路状況をつねにセンシングしていて、夜間でも高速でも、運転支援と安全支援に大きく寄与しています」と、ローワンCEOは誇らしげに語る。
斬新なインテリア走行安全性にくわえて、乗員の安全性をさらに高めるのも、(ボルボらしく)EX90の大きな目標だったという。ひとつはドライバーのセンシングで、眠気に襲われたり、意識混濁を起こしていたりすると、コンピューターが判断。運転支援システムが働く。
もうひとつ、これはぜひほしい、と思うひとが多いはずなのは、車内のセンシングシステム。7つのセンサーが天井各所に設置されていて、子どもやペットなどの置き去りを防ぐため、常に車内のかすかな動きをモニター。まずドアをロックするとき、車内をもういちど確認するようにアラートが出るそうだ。
いっぽう、意図的に車内に生命体を残した場合、車内温度センサーが働き、一定以上の温度になると、エアコンが作動。人間はエラーをする生き物、という前提にたっての「人間中心」(ボルボ)の安全システムなのだ。
内装は、斬新だ。小さな計器モニターがドライバーの眼の前にあり、そのとなり、ダッシュボード中央に14.5インチのTFT液晶の縦型モニターが据え付けられている。走行中の情報はおそらくヘッドアップディスプレイが使われるはずで、計器盤は、いまどんどん小さくなっているのが、自動車界のトレンドなのだ。
インテリア全体の印象は、ボルボが自社製品の特徴とするスカンディナビア デザインでまとめられている。とくにEX90は、動物由来の素材を使わないと謳っているため、手触りのいい合成皮革か、ファブリックかを選ぶことになる。
どの素材も出来がよく、じっさいに私がウールをブレンドしたシート地(オプション)で覆われたシートに腰かけてみたところ、じつにしっくりくる。
「レザーが高級という時代は完全に過去のもの」と、カラー&マテリアルを担当したセシリア スターク氏は、胸を張っていた。
後席空間は足元も頭上も広く、乗り降りが楽。さらに3列目のシートも予想以上によく出来ていて、身長175cmの私も座っていられる。
北米と中国の工場で生産される予定とのことで、実際のサイズは、これらのマーケットの要求を考えると、全長で5.0mを超えるんじゃないだろうか。
生産が始まるのは2023年といい、「それまでに北米の工場も中国の工場もクライメートニュートラルをめざします」と、ボルボではしている。2030年までに販売するクルマはすべて電動になることをめざす、とするボルボだけに、意欲的な動きで、それこそEX90が代表する“新しい時代”なのだろう。
欧州での販売が2023年遅くになりそうとのことで、日本にはその翌年(以降)の導入になるだろう。
文・小川フミオ
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みんなのコメント
その頃、世界と日本の情勢はどうなっているんだろう。
EV化は進むだろうけど、選択肢は多くあって欲しいな。
グリルレスの日野コンテッサは斬新なデザインだったなあ。今、日野はコテンパンだけど。