■センチュリーとミライース、2000万円の差はどこにある?
2021年現在、日本で発売されている国産車のなかで、もっとも高いクルマと安いクルマの間にはおよそ2000万円の価格差があります。
公道を走るうえではどちらも問題ないですが、その価格差によって何が変わってくるのでしょうか。
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日本は、世界でももっとも多くの新車が購入できる国のひとつです。
輸入車はもちろんですが、世界有数の自動車産業を持つ国として、多くの国産メーカーがしのぎを削っていることも大きな理由のひとつです。
国産メーカーのほとんどはコストパフォーマンスに優れた大衆車ということもあり、新車価格が1000万円を超えるクルマはそれほど多くありませんが、代表的な例でいえば、レクサス「LS」や「LC」、日産「GT-R」、ホンダ「NSX」などが1000万円を大きく超える国産車として知られています。
一方、低価格帯のクルマには多くの選択肢があります。
近年は装備の充実化などを理由に高価格しつつある軽自動車ですが、それでも200万円以下で購入できるものがほとんどです。
装備や使用用途は限定されるものの、一部には100万円以下で購入できる新車もあります。
抽選販売がおこなわれる限定車をのぞき、現在もっとも高い国産車のひとつがトヨタ「センチュリー」で、2021年11月現在の新車価格は2080万円です。
反対に、もっと安い国産車はダイハツ「ミライース」で新車価格は86万200円からとなっています。
常識的に考えればカテゴリーのまったく異なる両車ですが、一方で日本の公道を自由に走れるだけの性能を持ち、国土交通省が定めた安全基準や環境性能基準を満たしているという点では、どちらも同じ「クルマ」であることには変わりません。
にもかかわらず、センチュリー1台を購入する予算で、ミライースが24台買えてしまうほど価格差が発生しています。
2000万円にもおよぶこの価格差はどこから生まれているのでしょうか。
この両車の差として明らかなのは、そのボディサイズです。
センチュリーが全長5335mm×全幅1930mm×全高1505mmという国産車としてはトップクラスの体躯を持つ一方、ミライースは全長3395mm×全幅1475mm×全高1500mmとひと回り以上小柄です。
当然、車両重量も異なり、センチュリーは2370kg、ミライースは650kgと、3倍以上の差があります。
ただ、乱暴であることを承知のうえで、クルマを「鉄のカタマリ」として考えたとき、その質量に24倍の差は見られません。つまり、価格差の大部分は大きさ以外の部分にあることがわかります。
クルマのコストの大きな部分を占めるのは、パワートレイン、とくにエンジンです。
センチュリーが搭載するのは最大381馬力を発揮する5リッターV型8気筒エンジンとモーターのハイブリッドシステムです。
ミライースは660ccの直列3気筒エンジンであるため、排気量を基準にして考えるとおよそ8倍近い差があることがわかります。当然、この差も価格差につながることでしょう。
また、車両重量や最高出力が大きいセンチュリーのほうが、サスペンションやブレーキもより強力なものが備わっていることから、その分コストは高くなります。
とはいえ、どちらも問題なく公道を走れるという点では、価格ほどの差はありません。
つまり、加速性能や静粛性などは別として、日本の公道を問題なく走るというクルマの基本的機能においては、センチュリーにできてミライースにできないことはないということができます。
■センチュリーにできることは多いけれど…
では、機能面において差が現れる部分、つまりセンチュリーにできてミライースにできないことはどこにあるのでしょうか。
両車のカタログを見ると、センチュリーには現在ほかのクルマに装備されている機能のほとんどが備わっていることがわかります。
メーカーオプションとして装着可能なのは、本革シートやスペアタイヤ、後部座席の電動カーテンなどごくわずかで、安全装備や快適装備、ナビ&オーディオシステムなどあらゆるものが標準装備となっています。
一方のミライースでは、今回例に挙げたもっとも安価な「B」グレードの場合、多くの装備が標準で装備されていないか、あるいは簡素なものとなっています。
例えば、センチュリーでは「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」や「プリクラッシュ・セーフティ・システム」が含まれる「トヨタ・セーフティ・センス」が標準装備となっていますが、ミライース(「B」)の場合は、標準装備となっていません。
また、ミライースはオーディオレスとなっており、ナビやオーディオが必要な場合は後付することになります。
つまり、センチュリーではACCを使ったり、車内でエンターテイメントを楽しんだりできますが、もっとも安価なミライースではそれができません。
このような例を挙げていけばキリがありません。
また、外装や内装の素材も、比べればセンチュリーのほうが上質なものを使用していることは間違いありません。
ただ、ここで改めて述べたいのは、それでもクルマとしての本質的な機能はセンチュリーもミライースも変わらないということです。
数十年前ならいざ知らず、現代では高いクルマも安いクルマも故障の可能性は大きく変わらないといわれています。
さらにいえば、高いクルマほど早く目的地に到着するというものでもありません。
そのため、高級車の価値の多くは、移動の快適性や所有による満足度の高さなど、ハードウェアそのもの以外の部分に依存しているともいえます。
ここで強調したいのは、センチュリーに価格相応の価値がないということではなく、むしろ100万円以下という価格ながらクルマの基本機能を担保しているミライースのもの凄さです。
この背景には、両車の市場規模の違いがあります。
センチュリーの月間販売台数は50台とされており、目標通りの販売が達成された際の売上高は単純計算で10億円ほどとなります。
一方のミライースは9000台を月間販売目標に設定しており、1台100万円として計算した場合、月間の売上高は90億円にも上ります。
つまり、単価設定はセンチュリーのほうが20倍以上であるものの、市場規模としてはミライースのほうがおよそ9倍の大きさを持っていることになります。
両車を1台ずつ見比べたとき、センチュリーのほうがいわゆる「いいクルマ」であることは間違いありません。
実際には利益率などを考慮する必要はありますが、それでも自動車メーカーの業績への貢献度合いでいえば、むしろミライースの重要度が高いと考えることもできるのです。
※ ※ ※
海外のマニアには、日本的感覚の高級車であるセンチュリーにあこがれる人もいるようです。
一方で、日本独自の規格である軽自動車も、その機能性やコストパフォーマンスの良さを評価する声は少なくありません。
クルマとしてのポジションや性格、そして価格は大きく異なる両車ですが、どちらも日本を代表するクルマという点では変わらないといえそうです。
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