顔が違う! フェラーリ・デイトナの試作車とは?
2022年のモントレー・カーウィークの期間中には、おなじみ「RMサザビーズ」やペブルビーチ・コンクール・デレガンス公式の「グッディング&カンパニー」、クエイルロッジの「ボナムズ」、アメリカ車を得意とする「ミカム」など、おびただしい数のオークションが開催された。
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今回は、今年あらゆるオークションに出品されたクルマ、あるいはモントレー・カーウィークに登場したクルマの中でも最も話題を呼んだかもしれない1台、RMサザビーズ「Monterey」に出品されたフェラーリ・デイトナのプロトティーポ(試作車)と、注目のオークション結果についてお話ししたい。
275GTBをベースとしたデザインスタディ
フェラーリ「365GTB/4デイトナ」は、間違いなくマラネッロで最も有名なモデルのひとつであり、その誕生秘話はこれまでにもたびたび語られてきた。専門家や歴史家の間では、フェラーリの資金不足でミッドシップ12気筒モデルの開発が進まず、長らく続いた「コロンボ系スモールブロックV型12気筒エンジンをフロントに搭載するレイアウトでお茶を濁した」、あるいは「その場しのぎ」のモデルだったと語られることも多い。
しかしピニンファリーナのデザイン、スカリエッティのコーチワークによる、後にも先にもないユニークなデザインのボディの魅力が一因となり、フェラーリのロードカーの中で最も人気のあるモデルのひとつとなったことは、マラネッロ本社の控えめな自己評価を裏切る、まさに偶然の産物であったともいえよう。
「デイトナ」という名称は、決して市販モデルの正式な名称ではなく、マスコミにリークされたエンツォ・フェラーリが憤慨して、いったんは取り消したという説もある。しかし、シャシーナンバー#11001のデイトナ・プロトタイプは、「デイトナ」がオリジナルのファクトリーネームであるという説に信憑性を与えるだけでなく、レオナルド・フィオラヴァンティの名高いデザインの進化過程を知る上でも、きわめて魅力的な存在となっている。
1968年10月、パリ・サロンにて世界初公開されたデイトナは、シャシーナンバー「#11929」の市販モデルである。しかしその前に3台のプロトタイプが存在し、同時代の生産モデル「275GTB/4」をベースに製作されたことが判明している。
今回ご紹介するシャシーナンバー#11001は、そのうちの2台目のプロトタイプ。フェラーリ研究の世界的権威、マルセル・マッジーニ氏によれば、フェラーリ「330P4/412P」がデイトナ24時間レースで1-2-3フィニッシュを果たした1年後、1968年1月に製作されたとのこと。基本的な成り立ちは、275GTB/4のシャシーに、275GTB/4用の3.3L 4カム「ティーポ226」エンジンを搭載し、次期V12ベルリネッタのコーチワークを模索するデザインスタディとして製作されたものである。
エクステリアは、275のデザインアイコンと量産型365の将来的なデザインキューを巧みに組み合わせたもので、標準のデイトナよりも低いルーフラインと長いノーズを持つ。リヤエンドはデイトナの最終デザインとほぼ同じで、スクエアな形状のファストバックに4灯テールランプを備えているが、他方フロントエンドは275にしっかりと根ざしており、クラシックな楕円形の格子グリルやカバー付きの丸型2灯ヘッドランプを備えている。
インテリアも、インストルメントパネルは次期デイトナを意識したものながら、センターコンソールはフラットな面にトグルスイッチが並ぶだけという、275GTB/4と365GTB/4の中間的な構成になっている。さらに、ウッドステアリングは無孔の3本スポークだが、シートにはヘッドレストが与えられていないなど、ここでも両モデルの中間的なデザインが見受けられる。
このデイトナ・プロトタイプは、「アルジェント・メタリッツァート(シルバーメタリック)」塗装と「ネロ(黒)」の本革インテリアで仕上げられ、そのカラーコーディネートは現在も受け継がれている。
3億3000万円の落札価格は、むしろリーズナブル?
このフェラーリ・プロトティーポは、社内では「275GTB/4」として分類されていたが、デイトナの試作モデルであることはボディデザインを見れば明らかであるだけでなく、完成後すぐに購入したルイジ・キネッティ・モーターズの資料でも明らかにされている。
マッジーニによると、ルイジ・キネッティはこの個体を「275GTB/4」ないしは「デイトナ」の2つの名前で呼んでいたとのこと。つまり、パリ・サロンに登場する少なくとも半年前から、このペットネームで呼ばれていたことがわかる。
365GTB/4の市販がスタートし、試作車としての役目を終えた「#11929」は、世界最大規模のフェラーリ・ディーラーだったキネッティを介して、1969年にコネチカット州在住のファーストオーナーに売却された。しかし最初のオーナーは、短期間このクルマを所有しただけでキネッティに返却。そこでキネッティは1970年4月に「ニューヨーク・オートショー」に出展し、その後ニューヨーク州在住の2代目オーナーに譲渡した。
その際この個体には、のちに有名となる「GTB 4」のニューヨーク・ナンバーが付けられ、以降17年間にわたってニューヨーク州で過ごすが、1992年にスイスのフェラーリ愛好家に譲渡。ヨーロッパ各地のイベントに姿を見せている。
1996年には再びアメリカに戻り、同年8月の「モントレー・ヒストリック・レース」に展示。さらに翌年には「メドウブルック・コンクール・デレガンス」にも出品された。
そして1997年末、このデイトナ・プロトティーポは、歴史的に重要なスポーツカーの素晴らしいコレクションを所有する現オーナーが入手する。
アメリカの専門誌「Forza」2006年6月号にこのデイトナ・ポルトティーポの試乗記を寄稿した著名なモータースポーツ作家、ウィンストン・グッドフェロー氏は、軽量化された3.3Lエンジンが標準のデイトナよりも軽快であると述べるとともに、特にこの個体のギアボックスを絶賛している。
「アクセルを踏み込むと、V型12気筒エンジンが、デイトナでは考えられないような激しい吸気音を立てて空気を吸い込む。250、275、330に見られるカムとタペット、バルブ、チェーンが織りなす美しくも複雑な高音のシンフォニーは365にはないもので、そのおかげでドライビング体験はより素晴らしいものとなっている」
275GTB/4と365GTB/4のデザイン要素をブレンドしたこのベルリネッタは、コンクール・デレガンスやフェラーリ・クラブのミーティングで大きな賞賛を浴びるような、希少な特徴を帯びている。
今回の販売に先立って「フェラーリ・クラシケ」の認定を取得しており、レッドブックはフェラーリ本社から次のオーナーに提供される予定となっている。フェラーリの歴史に残るこのワンオフ車両は、フェラーリファンだけでなく、すべての自動車愛好家にとっても、デイトナという偉大なモデルの開発過程を視覚的に説明する貴重な資料なのだ。
市販型デイトナのおよそ3倍のプライス
欧米のみならず、日本においても「スーパーCG」誌の定期刊行最終号となった35号で特集が組まれて表紙まで飾るなど、全世界で認知されている有名なプロトティーポについて、RMサザビーズ北米本社は225万ドル~300万ドルという、市販型デイトナの市場相場の3倍近くにおよぶエスティメート(予想落札価格)を設定。
そして、実際に行われた競売では231万5000ドル、日本円に換算すると約3億3040万円という価格で無事落札となった。
3億3000万円超えという価格自体は驚異的なものではあるものの、こののち「ペブルビーチ」や「ヴィラ・デステ」、あるいは英国ハンプトンコート宮殿の「コンクール・オブ・エレガンス」に代表される一流コンクール・デレガンスで「スター」となり得る資質を思えば、むしろリーズナブルにも感じられてしまったのである。
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