記憶が正しければ……というのを前提に10~15年ほど前の旧車の価格を思い出してみる。
トヨタ2000GTが2000万円、ハコスカGT-Rが800万円、ポルシェ964型911カレラRSが800万円、ポルシェ993型カレラRSが1000万円、R32GT-Rが150万円、R34GT-Rが500万円……。
新型登場で格安に!? 初代86は若者でも手が届くスポーツカーになるか
それが今では3~5倍、いやそれ以上に高騰するという、まさに呆れるどころか、あ~あの時買っておけばよかった……という自責の念にかられるばかりだ。
いまさらこんなことをいっても元も戻らないのはわかっている。だがしかし、もしかしたら、昔の値段に戻るかもしれないという、一縷の望みにかける人も少なくないはずだ。
ということで、どれほど旧車が高騰してしまったのか、昔を思い出しながら現在の価格はいくらなのか、中古車事情に詳しい伊達軍曹が解説する。
文/伊達軍曹、写真/ベストカー編集部 ランチア フェラーリ ポルシェ 日産 スバル
【画像ギャラリー】価格高騰中の名作旧車を画像でチェック!
■なぜこんなに暴騰したのか? 前もってわかれば手放さなかったのに!
10年ほど前までは300万円も出せば買えたはずのランチアデルタHFインテグラーレだが、現在の中古車価格はその2~3倍まで膨れ上がっている
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ランチアデルタHFインテグラーレの中古車情報はこちら!
10年ほど前までは、「ちょっと昔の名作スポーツカー」の中古車価格というのは300万円前後である場合が多かったように思う。
もちろん実際は車種や品質によりけりだったわけだが、「300万円か400万円も出せば、けっこういい感じの名作旧車が買える」という時代ではあったことだけは間違いない。
しかしその後、世界的な「ちょっと古いクルマブーム」が巻き起こったことで、名作旧車の相場は超絶大高騰。
たとえば筆者が10年ほど前に乗っていたランチアデルタHFインテグラーレエボIIは購入価格250万円で、数年後にたしか200万円弱で売却したと記憶している。
だが筆者が売却した直後ぐらいからデルタエボIIの相場は爆上がりし、250万円だったものが500万円、600万円に。そして2021年現在、筆者が乗っていた「走行7万kmぐらいのデルタエボII」の相場は、だいたい800万円ぐらいになっている。
もしもあのとき手放さないでいたら、今頃は莫大な「含み益」を手にしていたはずなのに……と、ほぼ空っぽのサイフと預金通帳を眺めながら、夜な夜な涙酒を飲んでいる筆者なのだ。
だが「あのとき手放さなきゃよかった!」と後悔している人間は、おそらく筆者だけではあるまい。
なぜならば、ランチアデルタHFインテグラーレエボIIに限らず、近年は本当に多くの名作旧車の相場が軒並み大高騰しているからだ。
そして大高騰の裏側には、高騰により莫大な含み益を得ている人間の数と同じぐらいの、「もしもあのとき手放していなければ……」と、涙に暮れている人間がいるのだ。
■フェラーリF40は4650万円→約2.5億円→約5600万円→約1億4700万円
フェラーリ社の創業40周年記念モデルという希少性からプレミアム価格が付いた、フェラーリF40
フェラーリF40の中古車情報はこちら!
ということで……いや、何が「ということで」なのかよくわからないが、まぁとにかく「ここ10年間で中古車相場が大高騰した主なモデル」について、いろいろと考えてみよう。
まずは高騰率ではなく「絶対的な金額が高いモデル」から。高額なクルマといえば、なんといってもフェラーリF40である。
ご存じのとおりF40は、フェラーリ社の創業40周年を記念して1987年に製造されたミドシップスポーツ。
搭載エンジンは最高出力478psの3L、V8ツインターボで、公称最高速度は、当時の市販車としては世界最速の324km/hであった。
フェラーリF40のリアフォルム。サーキット走行も考慮され、リアウイングは強力なダウンフォースを生み出す本格的なもの
新車ディーラー価格は4650万円に設定されたが、バブル全盛期ゆえ、実勢価格はあっという間に1億円を突破し、2.5億円まで跳ね上がった。
しかしその後のバブル崩壊とともにF40の相場にも紆余曲折が生じ、今から9年前、2012年のペブルビーチ・オークションでの落札価格は約5600万円まで落ちていた。
だがF40の人気は不死鳥のごとし。世界的に景気が回復するとともにF40の相場は再び上昇に転じ、2020年にオンラインで行われたオークションでは138万6000ドル(約1億4700万円)にて落札されたのだ。
1996年に販売された993型のポルシェ911GT2
993型ポルシェ911の中古車情報はこちら!(流通状況によってGT2は掲載されていない場合があります)
フェラーリF40同様に、RMサザビーズなどの海外オークションでバカ高い値段が付くのが、993型のポルシェ911GT2だ。
993型911GT2は、そもそもはル・マン24時間レースやFIA GT選手権のGT2クラス参戦のホモロゲーション取得のために製造されたモデル。
993型911ターボ(4WD)をベースに徹底した軽量化とRR化が行われ、3.6Lツインターボエンジンは最高出力430ps/55.1kgmを発生。ストリート仕様とレース専用仕様とその911EVOモデルが存在し、総生産台数197台のうち、ストリート仕様は57台、EVOが11台とされる。
993型ポルシェ911GT2のリアフォルム。リベット留めのフェンダーが大迫力だ
で、そんな993型GT2も2500万円ぐらいで手に入る時代があったのだが、2016年には一時1億6000万円まで高騰、昨今の相場は「おおむね1億円」だ。具体的には、2020年のRMサザビーズオークションで89万1000ドル(約9800万円)にて落札されている。
以上2モデルが「バカ高いクルマ」の代表例だが、まぁこのあたりの海外オークションでしか買えない超希少モデルは、筆者のようなド庶民の人生にはまったく関係のない存在である。高嶺の花という言葉さえおこがましい、遥か彼方の蜃気楼だ。
■500万円が3300万円! 爆上がり率NO.1は22B-STiバージョン!
多少なりとも関係がありそうなのは、グーネットやカーセンサーnetなどに普通に掲載されている名作旧車だろう。それらの相場と高騰率は今、どんな感じになっているのか?
筆者調べによれば、ここ10年間の爆上がり率NO.1はスバル インプレッサ22B-STiバージョンだ。1998年に400台のみ発売されたインプレッサの限定車で、世界ラリー選手権のWRカーカテゴリー3連覇を達成した「Impreza World Rally Car 97」のイメージを再現したロードモデルである。
1997年、WRCマニュファクチャラーズ部門で3連覇を達成したのを記念して1998年に400台限定で販売されたインプレッサ22B-STiバージョン
インプレッサ22B-STiバージョンの中古車情報はこちら!(流通状況によって22B-STiバージョンは掲載されていない場合があります)
こちらも10年前は500万円ほどでなんとか探すことができたが、その後相場は1000万円級となり、近ごろでは1500万~1800万円あたりが中心に。
そして直近では、低走行物件がなんと3300万円で売りに出される始末。仮にこの3300万円を基準値とするならば、インプレッサ22B STiバージョンの相場はここ10年で6.6倍になったことになる。いやはや……。
■R34GT-R Mスペックニュルは約5000万円!?
R34型GT-R Mスペックニュル。乗り心地と上質感を重視した仕様で足回りは専用セッティング
いや、ここ10年での爆上がり率NO.1は、もしかしたらインプレッサ22B STiバージョンではなく、R34型の日産スカイランGT-R Mスペックニュルかもしれない。
2002年1月にR34型GT-Rの生産終了を記念して発表された1000台限定モデルで、エンジンやウォーターポンプ、エキゾーストマニホールドなどはすべて「N1仕様」になっている。約10年前は600万円ほどで探せたモデルだ。
インテリアはハンドメイド縫製の本革ヒーター付きシート、専用ステアリングを装着、シリカブレスの専用色を設定。新車価格はMスペックが595万円、Mスペックニュルが630万円
今回、遺憾ながらMスペックニュルの正確な価格を調べることができなかったのだが(教えてもらえなかった……)、一説によれば、現在のR34型GT-R Mスペックニュルの相場は約5000万円であるという。
この情報が正しいとすれば、10年前の相場のなんと8倍以上! もしも手放さずに鬼ホールドしていれば、今ごろは莫大な含み益をオーナーにもたらしていたはず。まぁ後の祭りだが。
ちなみにMスペックではなく「VスペックIIニュル」のほうは3500万円ぐらいというのがおおむねの相場。VスペックIIニュルは、R34型GT-Rの生産終了を記念して限定1000台が販売された。新車価格は610万円。
エンジン、ウォーターポンプ、エキゾーストマニホールドなどすべてがN1仕様となっており、ヘッドを従来の赤から金色としたN1エンジンにはバランス取りを行っているほか、タービンもN1仕様のメタル製タービンを採用。こちらも現在の相場は、10年前の約5.8倍になっている。うむう……。
GT-R VスペックII Nur(ニュル)。ニュルとは、GT-Rがテストコースとして使用していたニュルブルクリンクサーキットからとったもの
R34型スカイラインGT-Rの中古車情報はこちら!
■ポルシェ964型カレラRSも今や幻のクルマに
10数年前は800万円以内で購入できた964カレラRS。エンジンはカレラ2比10㎰アップの260ps/32.0kgm。専用のアルミボンネットフードなどによりカレラ2比120kgもの軽量化を果たした(1230kg)
964型ポルシェ911の中古車情報はこちら!(流通状況によって911RSは掲載されていない場合があります)
R34型スカイラインGT-R VスペックIIニュルに迫る勢いで爆上がりしたのが、964型のポルシェ911RSだ。
964型ポルシェ911RSとは、空冷フラットシックスを搭載していた964型カレラの軽量強化版。同時期のカレラ2のボディを補強したうえで、後席とエアコン、セントラルロッキングシステム、パワーステアリング、オーディオを省略。
そしてドアトリムやシート、エンジンフッド、マグネシウム合金製ホイール、フライホイールなどを軽量品に交換することで、合計120kgに及ぶ軽量化を果たした空冷911である。
スポット溶接追加、17インチマグネシウムホイール、ピロアッパーマウントのサスペンション/40mmダウンのほか、アンダーコート&エアコン&リアシートが廃止されている
10年ほど前の相場はおおむね800万円で、約20年前の相場は600万円ほどだったはず。当時、筆者の知人であった工場勤務の青年がそれを購入し、大切に維持していたことをよく覚えている。
しかし現在、964型カレラRSの相場はおおむね4600万円。10年前の約5.7倍だ。
……今は付き合いがなくなってしまったあの青年は、今も964型RSを所有しているのだろうか? それとも、高騰する前に売却してしまったか? 完全に余計なお世話ではあるが、気になるところである。
■5000万円オーバーで夢のまた夢となった993型911カレラRS
300ps/35.5kgmを発生する3.8Lフラット6に1320kgの軽量ボディが特徴の993カレラRS。新車当時の価格は1230万円だった。写真は手前が欧州仕様、上が日本仕様の993カレラRS
993型ポルシェ911の中古車情報はこちら!(流通状況によってカレラRSは掲載されていない場合があります)
また964型カレラRSの後継モデルにあたる993型のポルシェ911カレラRSの相場も、当然ながら爆上がりしている。
993型のカレラRSは、最高出力300psのRS専用3.8L M64/20型エンジンを搭載し、964型RS同様のボディ補強と後席の省略、トリムの簡略化、遮音材や防錆のためのアンダーコートを最小限にするなどの軽量化が行われたモデル。
約10年前の相場は1200万円ほどだったが、現在は、低走行物件の場合は約5000万円の値が付くケースもある。
約10年前まで筆者が住んでいた家のお隣さんがシルバーの993型カレラRSに乗っており、しばしば車談義を行ったものだ(993RSの助手席試乗もさせていただいた)。
お隣さんは「ここ最近、『1200万円で売ってください!』みたいな電話が業者からよくかかってくるんだよね。まぁ僕は売らないけど」と約10年前、筆者に語っていた。
その後筆者は転居してしまったため、お隣さんが今も993型カレラRSに乗っているかどうかはわからない。
そして彼のことだから、相場が約5000万円になっても、たぶん手放していないだろうなとは思っている。だが「もしかしたら……」とも、実はほんの少しだけ思っている。
スカイラインGT-Rはシリーズを通して中古車人気が高い。写真のR32GT-Rも中古車相場が高騰中だ
R32型スカイラインGT-Rの中古車情報はこちら!
このほかではR32型日産 スカイラインGT-R Vスペックの(良質物件の)相場が、10年前に比べておおむね5倍となる約3000万円になっているというのが、ここ最近の名作旧車相場の大まかなトピックだろうか。
これらのモデルについて「あのとき躊躇せずに買っておけばよかった……」とか、「あのとき手放さなきゃ今ごろ……」とつい思ってしまうのは、生身の人間としての当然の感情である。
筆者もランチア デルタに関しては、いまだ忸怩たる思いがどこかにあることを否定できない。
だがそれはそれとして、「終わったこと」にいつまでもこだわっていても仕方ない。忘れるべきものは忘れ、過去の経験あるいは失敗を「次」に生かしていくほかないのだ。
それが、人生というものである。
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みんなのコメント
好きで買って 弄って乗ってんだから、そんな事しないでほしい。
日本って 犯罪者には優しいよね。
被害者は メンタルやられて苦しんでんのにね。