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【ヒットの法則454】アウディA3はフェイスリフトでパワーユニットを刷新、商品力を大幅にアップさせた

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【ヒットの法則454】アウディA3はフェイスリフトでパワーユニットを刷新、商品力を大幅にアップさせた

2008年、新型ゴルフVI登場の噂が聞こえ始める中、欧州でアウディA3/A3スポーツバックがフェイスリフトを受けた。エンジンラインアップの一新、トランスミッションの多様化など、アウディの自信が見え隠れする大幅な変更だった。Motor Magazine誌はドイツ・ミュンヘン郊外で開催された国際試乗会に参加、ここではその模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年8月号より)

4年連続で販売記録更新、世界的に販売好調のA3
アウディのニューモデル攻勢がとどまるところを知らない。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

ここ直近でもR8やA5、さらにはQ5といったブランニューモデルがリリースされ、A4やTTシリーズのフルモデルチェンジといった大きなニュースも続々伝えられている。さらに、追加モデルや細かなリファインといったニュースも加えれば、もはや「アウディの新車ネタ」だけでも毎月相当の数になりそう。そしてそれらすべてが、このブランドが世界に冠たるプレミアムメーカーへと現在でも継続的な成長を目指していることを、端的に象徴するものと言っていいだろう。

一方で、このメーカーのそうした華やかなニュースを基盤として支えるのが、ラインアップの中で最もベーシックなモデルであるA3をはじめとした「量販車種」であるのもまた事実。というわけで、2003年の発表後すでに5年という時間が経過した現行A3に強力なカンフル剤が打たれることになったというのも、また見逃せないニュースであるわけだ。

デビュー後、相当の時間が経ちながらも、この期に及んでフルモデルチェンジではなく「ビッグマイナーチェンジ」が施された理由は、端的に言えば「現行A3というモデルが、今になっても好調なセールスを継続しているため」ということであるようだ。

昨2007年のA3の生産台数は23万台余り。これは、実は「4年連続での新記録」という。すなわち、A3の世界の市場でのセールスのテンポは、新車効果が薄れて落ちるどころか、むしろ昨今になってもまだ上向いているのだ。そんな今のタイミングで、新鮮さをアピールするためのモデルチェンジを行う必要というのは、確かに考えにくいだろう。

そんな「最新のA3シリーズ」は、まず顔付きが新しい。ヘッドライトユニットの淵に沿ってレイアウトされたLEDライトが個性的な輪郭を描くのは、最近のアウディ各車のお家芸。もちろん、新しいA3にもそうしたテクニックが採用されるものの、それはA4やA5、あるいはR8のようなアイシャドータイプではなく、ライトユニットの内側から上部にかけて光のラインが流れるウイングタイプであるのが特徴だ。

遠目にもアウディ車であることが一目瞭然という、そんなブランドアイデンティティを強くアピールするのに一役買った「シングルフレームグリル」を採用するのももちろんのこと。さらに、グリル両脇から立ち上がってフードへと続くV字型のラインは従来型以上に強調。すなわち、フェンダーの造形変更も含め、フロントまわりの外装パーツは一新されているわけだ。

リアビューではまず、マイナーチェンジでの常套手段であるコンビネーションランプのデザイン変更が行われ、とくに発光時に新鮮さをアピール。一方、サイドビューには大きな変化が感じられないのは、基本骨格をキャリーオーバーとするマイナーチェンジでは致し方のない事柄だろう。

インテリアの雰囲気は、基本的に従来型と同様だ。エアベントベゼルやセンターコンソールなどが加飾されるなど、変更が小規模に留まっているのも、やはりマイナーチェンジであればこそ。ちなみに、日本導入モデルがスポーツバックを名乗る5ドアモデルに限定されるのは従来同様で、全導入モデルが2ペダル仕様となるのも、やはり従来型から受け継いだ日本でのA3の特徴的な販売方針だ。

しかし、そんな日本仕様のA3から、「ついにトルコンATが姿を消す」というのは大きなニュースだろう。日本で売られる新しいA3は、その全モデルがアウディではSトロニックと呼称するDCT(デュアルクラッチトランスミッション)を搭載することになったのだ。

そんな最新鋭のトランスミッションと組み合わされるエンジンがすべて直噴4気筒のターボ付きユニットで統一されたのも注目すべき点となる。最高出力125psを発する1.4TFSI、同じく160psの1.8TFSI、そして同200psの2.0TFSIというのが、予定される日本市場でのA3の展開だ。

1.4TFSIと1.8TFSIエンジンに組み合わされるSトロニックは、新たに登場した乾式クラッチを用いる7速仕様。2.0TFSIと組み合わされるSトロニックは、従来からアウディが用いてきた湿式クラッチを用いる6速仕様となる。やはり直噴の過給器付きエンジンとDCT(フォルクスワーゲンではDSGと呼ぶ)を組み合わせる最新のゴルフが、もはや排気量の違いには依存しないバリエーション展開をアピールするのに対して、A3ではいまだ排気量別のヒエラルキーが存在している。こうして、記号(数字)上での識別性も重視するのは、やはりプレミアム性を意識するブランドであるがゆえか。

ちなみに、アウディがかねてから訴求のクワトロは、新しい日本仕様のA3では2Lモデルのみへの採用。従来は6気筒エンジンとの組み合わせで「A3のイメージリーダー」という立場を主張したものの、今度は6気筒モデルそのものがカタログからドロップ。高い動力性能と4WDという「特別な組み合わせ」を望む人に対しては、今度は「S3」に乗ってもらいたいということだろう。現行型では導入されていなかったS3は、今回ようやく5ドアモデルが設定されたために、めでたく日本市場への上陸が実現するというわけだ。

パワーパックの刷新で商品力を大幅にアップ
ドイツはミュンヘン郊外で開催された国際試乗会では、1.4TFSIと2.0TFSIクワトロの2タイプのモデルを、それぞれ7速と6速仕様のSトロニックとの組み合わせでチェックすることができたので、その報告をしていこう。

すでに同種のパワーパックをゴルフでも体験済みだが、1.4TFSIエンジン+7速Sトロニックの組み合わせがもたらす大きな美点はまず、微低速時のドライバビリティが極めて優れている点にある。走り出しのクラッチワークの滑らかさ、変速のスムーズさはこれまでの6速Sトロニックのそれを凌ぐレベルで、トルコンAT車と直接比較しても何ら遜色なし。それと同時に、まさに走り出しの瞬間からシームレスに立ち上がるターボブーストの威力で、低速域での加速感が何とも力強い。

一方、5500rpm付近から上でのエンジン回転の伸びには明確な頭打ちが感じられはするものの、それでもトップスピードはオーバー200km/hに達するから、特に急ぐ旅でなければアウトバーン上でも何らの不満なしだ。

そんな1.4Lモデルから乗り換えれば、150kg以上の重量ハンディを軽々跳ね除けて、強力そのものの動力性能を味わわせてくれたのが2Lモデル。排気量の違いから低回転域での力強さももちろん上乗せされる一方、3000rpm付近からのトルクの盛り上がり方にはターボエンジンらしいメリハリ感がより明確に存在する。

その他、日本には導入とならないMT仕様車など数台も含めて感じたA3の印象は、「全般にそのフットワークのテイストが引き締まっていること」だろうか。

ガソリンエンジン搭載車では「最高出力が160ps以上」という基準で、ダンパーの作動フルード内に磁性体を混ぜて磁力によりコントロールすることで減衰力を可変とするマグネティックライドが設定され、実際に2Lのクワトロモデルにはそれが装着されていた。

一方、前述の基準に外れる1.4Lモデルにはそもそもマグネティックライドの設定はなし。その影響もあってか特に低速時などでは、路面凹凸に対して2Lモデル以上に脚が突っ張るような感触があった。

おそらくは、このあたりが次期型の開発にあたっての大きな課題となる部分であるはず。今回のテスト車が、標準サイズ+1インチの17インチタイヤを履いていたことなどの影響もあろうが、これまでのコンパクトハッチバックの概念を覆すほどの静粛性を備えた1.4Lモデルでは、それがとても残念に思えた部分だった。

いずれにしても、パワーパックの刷新を中心とした今回のリファインによって、その商品力を再度大幅にアップさせた最新のA3。その仕上がり具合は、再びライバル各車たちを悩ますことになりそうだ。(文:河村康彦/Motor Magazine 2008年8月号より)



アウディA3スポーツバック 2.0TFSIクワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4292×1765×1423mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1455kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1700-5000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速DCT(Sトロニック)
●最高速:236km/h
●0→100km/h加速:6.7
※欧州仕様

アウディA3スポーツバック 1.8TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4292×1765×1423mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1335kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1798cc
●最高出力:160ps/5000-6200rpm
●最大トルク:250Nm/1500-4200rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●最高速:222km/h
●0→100km/h加速:7.7※欧州仕様

アウディA3スポーツバック 1.4TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4292×1765×1423mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1310kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1390cc
●最高出力:125ps/5000rpm
●最大トルク:250Nm/1500-4000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●最高速:203km/h
●0→100km/h加速:9.5
※欧州仕様

[ アルバム : アウディA3/A3スポーツバック はオリジナルサイトでご覧ください ]

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